第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

地域

[PN-4] ポスター:地域 4

2022年9月16日(金) 15:00 〜 16:00 ポスター会場 (イベントホール)

[PN-4-1] ポスター:地域 4興味関心は活動量によって変化するのか

西村 彬123 (1九州大学大学院 統合新領域学府ユーザー感性学専攻博士前期課程,2医療法人斎藤内科医院 通所リハビリテーションふれあい,3麓刑務所 処遇部処遇部門)

【序論】
 高齢者は身体機能の低下にともない保健医療の情報に関心を持つ(厚生労働白書.2014).これは視点を変えれば,活動量の変化と関連して興味関心のある事柄は流動的に変化する可能性があるという仮説がたつ.本研究の目的はこの仮説の検証であり,以下に考察を含めて報告したい.
【倫理的配慮】
 学会発表に際して,口頭および文書にて対象に説明したうえで同意を得た.
【対象】
 80代前半の脊柱管狭窄症を呈した女性,認知機能に問題はなく独居でADLは自立,日課はウォーキング,要支援2,通所リハビリテーションサービスは週2回で利用している.
【方法】
 調査期間はX年1月1日からX年12月31日までの1年,活動量の計測を目的に就寝時以外の歩数(歩数計Maipo)を毎日計測するとともに転倒や入院,天候の長期的変化などのLife eventを記録した.また,興味関心のある事柄を評価することを目的に興味関心チェックシート(以下,シート)を2~4か月置きに計4回評価した.歩数は月平均値を算出した.シートは46項目を①能力別のADL(n=7),IADL(n=7),Hobby(n=32),②場所別のIndoor action(n=24),Outdoor action(n=14),Others(n=8)に分類したうえで,している割合,してみたい・興味がある割合,興味がない割合の3つを算出した.なお,②に関しては,各項目に対して対象が抱く印象を聴取したうえで分類先を決定した.
 歩数とシートの経時的変化をグラフ化し,両者の傾向に何らかの関係性があるのか比較した.
【結果】
 歩数は月平均4636±453歩,通所サービス利用3か月以降は横ばいとなっていた.ただし,梅雨時期は約1000歩減少していたためU字型の折れ線グラフを示した.
 シートはHobby,Outdoor action,Othersにおいて興味がない割合が2回目の評価以外で低値を示したが,2回目の梅雨時期は一時的にその割合は高まっており,逆U字型の折れ線グラフとなった.その他の分類に関しては,歩数との関係性を認めなかった.
【考察】
 本研究における活動量の指標には歩数を採用しており,この歩数は天候に左右されていた.そのため,活動量そのものが必ずしも対象の身体機能の変化とは結びつかない.以上を踏まえたとしても,シートの逆U字型を示した時期と歩数のU字型を示した時期が同時期であったことに注目したい.これは,HobbyやOutdoor action,Othersが活動量の変化に影響する可能性を示唆すると考える.
 伊藤ら(2006)は初発興味が生起される4種類の型のうち,ある出来事の経験が徐々に興味に結びつく導火線型の存在を挙げている.対象の場合,梅雨時期の活動量の低下が屋内活動への興味に結びついたのかもしれない.そして,それは逆に屋外に関連した分類への興味関心を薄れさせてしまう結果になったと考える.
【展望】
 本研究は事例報告に留まったことで統計学的処理はできておらず,推測の域をでない.今後は症例数およびシートの評価回数を増やすことで,興味関心と活動量の相関関係を明らかにしたい.
【結論】
 HobbyやOutdoor actionに関する興味関心は活動量によって変化する可能性がある.