[PN-4-2] ポスター:地域 4高齢受刑者の健康運動指導に対する意識
テキストマイニングを用いた体操日誌の分析
【はじめに】熊本県作業療法士会では一般刑務所から依頼を受け,2018年より高齢受刑者に対する健康運動指導を実施している.約3年半の関わりを通して作業療法士が実施する健康運動指導の効果や,刑事司法領域における作業療法士の役割について模索・検討してきた.今回,健康運動指導を受講する高齢受刑者の体操日誌の記述をもとにテキストマイニングを用いた分析を行った.この体操日誌には日々の運動実施状況の他に「困ったことや感想」を記述するようになっており,高齢受刑者の健康運動指導に対する感想や,日々の心情等が綴られている.本研究の目的は,体操日誌の記述を通して高齢受刑者の健康運動指導に対する意識を明らかにすることである.
【方法】対象は健康運動指導を受講する高齢受刑者8名.健康運動指導はストレッチ,筋力トレーニング,コグニサイズを用いた約1時間の介入を週1回,2名の作業療法士により実施.対象者には,毎日体操日誌の記録を求め,介入時にはその日誌をもとに個別に1週間の振り返りを行った.今回,健康運動指導開始から1年間に記録された体操日誌の「困ったことや感想」から得られたテキストデータを分析対象とした.分析にあたっては4期間に分けて検討を行った(Ⅰ期:1~3か月,Ⅱ期:4~6か月,Ⅲ期:7~9か月,Ⅳ期:10~12か月).分析はテキストマイニングの分析ソフトであるKH Coderを用いて行い,まず全体像を把握するために頻出語リストを作成した.次に頻出語リストより健康運動指導に対する意識を表すと考えられた語を用いて7つのコーディングルール(「身体面」「精神面」「課題」「感謝」「努力」「指導者」「健康運動指導」)を作成し,対応分析を行った.また,用いられていた文脈についてはKWICコンコーダンスで確認した.なお対象者には,刑務所を通じて研究・発表について説明し同意を得ている.
【結果】KH Coderを用いて分析を行った結果,総抽出語数44,781語(使用語数17,405語),異なり語数3,050語(使用語数2,541語)であった.対応分析の結果,成分1の寄与率68.56%,成分2の寄与率20.95%,累積寄与率89.51%であった.原点(0.0)からみて左上方向にⅠ期が「身体面」「課題」と共に布置された.KWICコンコーダンスから「最初より身体が動くようになった」,「スクワットが上手く出来ない」等の文脈が確認できた.Ⅱ期,Ⅲ期は下方向に近接しており,近くに「努力」「精神面」「感謝」が布置された.「今日は足が痛みましたが運動は頑張ってしました」,「この頃身体が早く体操をしようよと言っているようで嬉しいことだと思います」等の文脈が確認できた.Ⅳ期は「指導者」と共に右上方向に布置されており,「先生の熱意溢れる指導で私たちも頑張れました」等の文脈が確認できた.「健康運動指導」は原点近くに布置された.
【考察】受講開始初期は,身体面の記述や課題の達成あるいは難易度における記述が特徴的であったことから,健康運動指導に対する効果や期待を身体的側面で意識していたと考える.次第に健康運動指導を肯定的に捉え前向きに努力しようとする姿や,そこに「嬉しい」や「楽しい」といった精神面での感情を伴って意識する様子が伺えた.更に,受講を重ねるにつれ自分以外の他者に関する記述を示す「感謝」や「指導者」のコーディングルールが特徴的になっており,作業療法士や教育に携わる刑務所職員,他受刑者とコグニサイズ等の課題に取り組む経験を通して対人関係における意識が向上したと考える.
【方法】対象は健康運動指導を受講する高齢受刑者8名.健康運動指導はストレッチ,筋力トレーニング,コグニサイズを用いた約1時間の介入を週1回,2名の作業療法士により実施.対象者には,毎日体操日誌の記録を求め,介入時にはその日誌をもとに個別に1週間の振り返りを行った.今回,健康運動指導開始から1年間に記録された体操日誌の「困ったことや感想」から得られたテキストデータを分析対象とした.分析にあたっては4期間に分けて検討を行った(Ⅰ期:1~3か月,Ⅱ期:4~6か月,Ⅲ期:7~9か月,Ⅳ期:10~12か月).分析はテキストマイニングの分析ソフトであるKH Coderを用いて行い,まず全体像を把握するために頻出語リストを作成した.次に頻出語リストより健康運動指導に対する意識を表すと考えられた語を用いて7つのコーディングルール(「身体面」「精神面」「課題」「感謝」「努力」「指導者」「健康運動指導」)を作成し,対応分析を行った.また,用いられていた文脈についてはKWICコンコーダンスで確認した.なお対象者には,刑務所を通じて研究・発表について説明し同意を得ている.
【結果】KH Coderを用いて分析を行った結果,総抽出語数44,781語(使用語数17,405語),異なり語数3,050語(使用語数2,541語)であった.対応分析の結果,成分1の寄与率68.56%,成分2の寄与率20.95%,累積寄与率89.51%であった.原点(0.0)からみて左上方向にⅠ期が「身体面」「課題」と共に布置された.KWICコンコーダンスから「最初より身体が動くようになった」,「スクワットが上手く出来ない」等の文脈が確認できた.Ⅱ期,Ⅲ期は下方向に近接しており,近くに「努力」「精神面」「感謝」が布置された.「今日は足が痛みましたが運動は頑張ってしました」,「この頃身体が早く体操をしようよと言っているようで嬉しいことだと思います」等の文脈が確認できた.Ⅳ期は「指導者」と共に右上方向に布置されており,「先生の熱意溢れる指導で私たちも頑張れました」等の文脈が確認できた.「健康運動指導」は原点近くに布置された.
【考察】受講開始初期は,身体面の記述や課題の達成あるいは難易度における記述が特徴的であったことから,健康運動指導に対する効果や期待を身体的側面で意識していたと考える.次第に健康運動指導を肯定的に捉え前向きに努力しようとする姿や,そこに「嬉しい」や「楽しい」といった精神面での感情を伴って意識する様子が伺えた.更に,受講を重ねるにつれ自分以外の他者に関する記述を示す「感謝」や「指導者」のコーディングルールが特徴的になっており,作業療法士や教育に携わる刑務所職員,他受刑者とコグニサイズ等の課題に取り組む経験を通して対人関係における意識が向上したと考える.