第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

地域

[PN-4] ポスター:地域 4

2022年9月16日(金) 15:00 〜 16:00 ポスター会場 (イベントホール)

[PN-4-3] ポスター:地域 4災害支援に従事する作業療法士が抱える困難さのスコーピングレビュー

宮寺 寛子1小林 法一2 (1群馬パース大学リハビリテーション学部作業療法学科,2東京都立大学大学院人間健康科学研究科)

はじめに
大規模災害が毎年のように発生し,生活支援を専門とする作業療法士(以下,OT)は誰もが災害支援に関わる可能性が高まっている.災害支援者が抱えるストレスは心身の健康を損なうほどに大きいことが報告され,ストレスマネジメント能力向上は支援者の平時の備えに不可欠である.しかし,OTが災害支援時にどのような困難さを抱えていたかは明らかでなく,ストレスマネジメント能力向上のための具体的対策は個人に委ねられているのが現状である.
目的
災害支援時にOTが抱えていた困難さについて概観することを目的に,灰色文献を含んだスコーピングレビューを行った.本研究の成果をもとに,ストレスマネジメント能力向上のために必要な平時の備えを検討したい.
方法
検索は2021年8月5日に実施した.検索語は,国内データベースは#災害対策,#専門職の役割,#リハビリテーションを各用語で検索した後にAND検索した.同様の手順で国外データベースは#disaster ,#professional role, #rehabilitationで検索した.データベースは,医学中央雑誌,CiNii,PubMed,CINAHL Plus,MEDLINEを用い,掲載されている原著論文,報告,特集および会議録を対象にした.その他,都道府県の各士会が実施した災害支援に関するアンケート結果を分析対象に含めた.適格基準は,①国内の災害を対象にしている,②OTが抱える困難さが記述されている,③全文入手可能とした.
結果
423文献が抽出され,適格基準に従い1次・2次スクリーニングを行い最終的に17件の文献が抽出された.結果の統合では,データの質的統合を行い,「自宅も家族も失った方の支援目標はどうすればいいのか」といった【支援者として何をすればいいか分からない不安】,「災害マニュアルにない事態への対応が求められて困惑」といった【変化への対応の難しさ】,「訪問先で水や食料の確保ばかり依頼された」「すでに保健師の支援が入っており特にOT支援は要らないと言われた」といった【専門職としての支援を求められない葛藤】,「家庭の都合を優先しにくい」,「疲れても休めない」といった【自己犠牲が求められる雰囲気】,「部下(会員)の安否確認が難しい」「忙しさから職場の雰囲気が悪くなっていった」といった【職場環境を維持する難しさ】の4カテゴリーが抽出された.
考察
抽出されたカテゴリーのうち,【支援者として何をすればいいか分からない不安】,【自己犠牲が求められる雰囲気】,【職場環境を維持する難しさ】から,災害支援者としての基本的な知識と技術の習得のための災害教育や災害時を想定した施設の体制整備が,災害時のストレスマネジメントに有効である可能性が示された.さらに,【変化への対応の難しさ】,【専門職としての支援を求められない葛藤】から,困難な状況に対する自身の反応を理解し省察しておくことも備えになると考えられた.