[PN-4-7] ポスター:地域 4作業形態の特性と動脈硬化との関連:わかやまスタディ
【序論】作業は人の健康と安寧に寄与することから,作業の視点で人を捉えることは高齢者のみならず中年期の健康維持に不可欠である.心血管系疾患は,わが国の死亡原因の第2位であり,中年期から高齢期のどの年代においても死亡全体に占める割合が一定である.心血管イベントの強力なリスクとして動脈スティフネスが注目されており,これを改善することが,心血管イベントの一次予防として重要視されている.本研究では,地域在住者の作業形態の特性と動脈硬化指標のひとつである脈波伝播速度との関連性を横断的に明らかにすることとした.
【方法】和歌山県A町の住民のうち,和歌山ヘルスプロモーション研究に参加した381名を対象に,作業形態の特性を自記式アンケートにより実施し,上腕-足首脈波伝播速度(baPWV)を測定した.作業とは,「したい,する必要がある,することを期待されている活動とし,自分の時間を割いて,自分らしさを感じ,人生に意味をもたらす活動のこと」と定義した.作業形態の特性に関するアンケートは,①重要な作業名,②最重要となる作業名,③作業遂行度(主観的経験として「とても上手くできると思う」10点から「全くできないと思う」1点),④作業満足度(主観的経験として「とても満足している」10点から「全く満足していない」1点),⑤作業の頻度(毎日,週,月,年単位),⑥作業の領域(セルフケア,生産活動,余暇),⑦作業の継続期間(1年未満,1~5年未満,5年以上)であった.baPWVは,BP-203RPE II/III form PWV/ABI(Omron Colin Co. Ltd., Tokyo, Japan)を用い,医師もしくは看護師が測定した.baPWVは,動脈硬化を評価する簡便な方法として使用されており,大規模集団でのスクリーニングにも活用されている.調査期間は2017年7月から8月とし,所属大学研究倫理委員会の承認後,参加者から研究への同意を書面にて得て実施した.統計解析は,心血管イベントのリスクが高まるbaPWV1400cm/秒以上とそれ未満で2値化し従属変数とし,作業形態の特性を独立変数とした多変量ロジスティック回帰分析を用いた.解析モデルは,作業の特性を相互に調整したモデル1,モデル1に性と年齢を加えたモデル2,モデル2にBody Mass Index,血圧,アルコール摂取の有無,喫煙の有無,基礎疾患を加えたモデル3を用意した.
【結果】381名の参加者の内訳は男性157名,女性224名,平均年齢69.5±10.2歳であった.baPWV1400cm/秒未満は89名,1400cm/秒以上は292名であった.baPWV1400cm/秒以上となることは,重要な作業数と有意な関連があり,モデル1において重要な作業が3つ以上であることは,調整オッズ比が0.31(95%Cl: 0.12-0.85)であった.モデル2,3では有意な関連は認められなかった.作業の領域において,重要な作業が生産活動のみに偏っていることは,オッズ比が3.16(95%Cl: 0.94-10.64)であった.重要な作業に余暇と生産活動があることは,オッズ比が 0.64(95%Cl: 0.40-1.04)であり,女性に限ると0.49(95%Cl: 0.27-0.93)であった.他の作業の特性とは,有意な関連が認められなかった.
【考察】作業の視点による動脈硬化に係る要因の調査は,他に例をみない.動脈硬化予防には,運動や食事などの生活習慣の改善が効果的であるが,個人が重要する作業にも目を向ける必要がある.baPWV1400cm/秒以上であることと作業の数との関連性は,年齢による調整において打ち消されたものの,重要な作業を多く持つことは,動脈硬化に抑制的に作用する可能性がある.さらに女性では,余暇と生産活動の作業を持つことが動脈硬化予防に必要かもしれない.本研究は横断的調査であり,因果関係まで言及することができないため,コホート研究による調査が必要である.
【方法】和歌山県A町の住民のうち,和歌山ヘルスプロモーション研究に参加した381名を対象に,作業形態の特性を自記式アンケートにより実施し,上腕-足首脈波伝播速度(baPWV)を測定した.作業とは,「したい,する必要がある,することを期待されている活動とし,自分の時間を割いて,自分らしさを感じ,人生に意味をもたらす活動のこと」と定義した.作業形態の特性に関するアンケートは,①重要な作業名,②最重要となる作業名,③作業遂行度(主観的経験として「とても上手くできると思う」10点から「全くできないと思う」1点),④作業満足度(主観的経験として「とても満足している」10点から「全く満足していない」1点),⑤作業の頻度(毎日,週,月,年単位),⑥作業の領域(セルフケア,生産活動,余暇),⑦作業の継続期間(1年未満,1~5年未満,5年以上)であった.baPWVは,BP-203RPE II/III form PWV/ABI(Omron Colin Co. Ltd., Tokyo, Japan)を用い,医師もしくは看護師が測定した.baPWVは,動脈硬化を評価する簡便な方法として使用されており,大規模集団でのスクリーニングにも活用されている.調査期間は2017年7月から8月とし,所属大学研究倫理委員会の承認後,参加者から研究への同意を書面にて得て実施した.統計解析は,心血管イベントのリスクが高まるbaPWV1400cm/秒以上とそれ未満で2値化し従属変数とし,作業形態の特性を独立変数とした多変量ロジスティック回帰分析を用いた.解析モデルは,作業の特性を相互に調整したモデル1,モデル1に性と年齢を加えたモデル2,モデル2にBody Mass Index,血圧,アルコール摂取の有無,喫煙の有無,基礎疾患を加えたモデル3を用意した.
【結果】381名の参加者の内訳は男性157名,女性224名,平均年齢69.5±10.2歳であった.baPWV1400cm/秒未満は89名,1400cm/秒以上は292名であった.baPWV1400cm/秒以上となることは,重要な作業数と有意な関連があり,モデル1において重要な作業が3つ以上であることは,調整オッズ比が0.31(95%Cl: 0.12-0.85)であった.モデル2,3では有意な関連は認められなかった.作業の領域において,重要な作業が生産活動のみに偏っていることは,オッズ比が3.16(95%Cl: 0.94-10.64)であった.重要な作業に余暇と生産活動があることは,オッズ比が 0.64(95%Cl: 0.40-1.04)であり,女性に限ると0.49(95%Cl: 0.27-0.93)であった.他の作業の特性とは,有意な関連が認められなかった.
【考察】作業の視点による動脈硬化に係る要因の調査は,他に例をみない.動脈硬化予防には,運動や食事などの生活習慣の改善が効果的であるが,個人が重要する作業にも目を向ける必要がある.baPWV1400cm/秒以上であることと作業の数との関連性は,年齢による調整において打ち消されたものの,重要な作業を多く持つことは,動脈硬化に抑制的に作用する可能性がある.さらに女性では,余暇と生産活動の作業を持つことが動脈硬化予防に必要かもしれない.本研究は横断的調査であり,因果関係まで言及することができないため,コホート研究による調査が必要である.