[PN-5-2] ポスター:地域 5地域在住フレイル高齢者における作業機能障害と主観的幸福感の関連性
無作為抽出による大規模郵送調査
【背景】フレイル高齢者は要介護発生リスクが高いため,作業療法士は地域で暮らすフレイル高齢者の健康支援に取り組む必要がある.フレイルは改善可能である一方,ヒトは加齢に伴う様々な喪失体験を避けられないため,すべてのフレイルを改善させることは現実的とは言い難い.したがって,フレイル自体を改善・予防する対策のみでなく,フレイルであってもWell-being(主観的幸福感)を保持する対策を講じることも極めて重要である.特に作業療法士は作業機能障害(生活行為が適切に行えずネガティブな経験をしている状態)を軽減させ,生活をサポートする専門職である.仮にフレイルであっても作業機能障害の有無によって主観的幸福感が異なる場合には作業機能障害の軽減を通して主観的幸福感に寄与できる可能性がある.
【目的】本研究は,地域在住フレイル高齢者における作業機能障害と主観的幸福感の関連性を明らかにする.
【対象・方法】2019年10月にA県B市で要介護認定を受けていない高齢者8000名を無作為抽出し,郵送調査をおこなった.回答が得られた3934名のうち,入院中や要介護認定申請中であった者,分析に用いる項目に欠損があった者を除外し2386名を分析対象者とした.主観的幸福感は日常生活圏域ニーズ調査の「あなたは,現在どの程度幸せですか」を用いた(とても不幸を0点,とても幸せを10点とした11件法)(厚生労働省, 2016).フレイルの評価は基本チェックリスト(0-25点)を用いて,0-3点を非フレイル,4-7点をプレフレイル,8点以上をフレイルとした(Satake et al., 2016).作業機能障害の評価は,作業機能障害の種類と評価(CAOD)(16-112点)を用いて,52点以上を作業機能障害ありとした(Teraoka et al., 2015).その他に基本属性として,年齢,性,既往歴,教育歴,主観的経済状況,IADL能力,社会交流量を収集した.筆者らが所属する組織の研究倫理委員会の承認およびB市の許可,対象者の同意を得て実施した.
【結果】従属変数に主観的幸福感,独立変数にフレイルと作業機能障害を組み合わせたカテゴリー(①非フレイル+作業機能障害なし群,②非フレイル+作業機能障害あり群,③プレフレイル+作業機能障害なし群,④プレフレイル+作業機能障害あり群,⑤フレイル+作業機能障害なし群,⑥フレイル+作業機能障害あり群),共変量に基本属性を投入した共分散分析をおこない調整済み平均値(平均値)および95%信頼区間(95%CI)を算出した結果,主観的幸福感は①非フレイル+作業機能障害なし群(平均値: 7.37, 95%CI: 7.28-7.47),③プレフレイル+作業機能障害なし群(平均値7.26, 95%CI: 7.13-7.40),⑤フレイル+作業機能障害なし群(平均値: 6.85, 95%CI: 6.59-7.11),②非フレイル+作業機能障害あり群(平均値6.49, 95%CI: 6.17-6.82),④プレフレイル+作業機能障害あり群(平均値: 6.27, 95%CI: 5.99-6.55),⑥フレイル+作業機能障害あり群(平均値5.99, 95%CI: 5.64-6.35)の順に高かった.多重比較検定(Bonferroni法)の結果,③プレフレイル+作業機能障害なし群は②非フレイル+作業機能障害あり群よりも,そして⑤フレイル+作業機能障害なし群は④プレフレイル+作業機能障害あり群よりも主観的幸福感が有意に高かった.
【結論】本結果より,作業機能障害がないプレフレイルは作業機能障害がある非フレイルよりも,作業機能障害のないフレイルは,作業機能障害があるプレフレイルよりも主観的幸福感が高かった.つまり,地域で健康支援に携わる作業療法士は,フレイル高齢者に対して,フレイル自体の改善に留まらず,作業機能障害の軽減に取り組んでいく必要がある.
【目的】本研究は,地域在住フレイル高齢者における作業機能障害と主観的幸福感の関連性を明らかにする.
【対象・方法】2019年10月にA県B市で要介護認定を受けていない高齢者8000名を無作為抽出し,郵送調査をおこなった.回答が得られた3934名のうち,入院中や要介護認定申請中であった者,分析に用いる項目に欠損があった者を除外し2386名を分析対象者とした.主観的幸福感は日常生活圏域ニーズ調査の「あなたは,現在どの程度幸せですか」を用いた(とても不幸を0点,とても幸せを10点とした11件法)(厚生労働省, 2016).フレイルの評価は基本チェックリスト(0-25点)を用いて,0-3点を非フレイル,4-7点をプレフレイル,8点以上をフレイルとした(Satake et al., 2016).作業機能障害の評価は,作業機能障害の種類と評価(CAOD)(16-112点)を用いて,52点以上を作業機能障害ありとした(Teraoka et al., 2015).その他に基本属性として,年齢,性,既往歴,教育歴,主観的経済状況,IADL能力,社会交流量を収集した.筆者らが所属する組織の研究倫理委員会の承認およびB市の許可,対象者の同意を得て実施した.
【結果】従属変数に主観的幸福感,独立変数にフレイルと作業機能障害を組み合わせたカテゴリー(①非フレイル+作業機能障害なし群,②非フレイル+作業機能障害あり群,③プレフレイル+作業機能障害なし群,④プレフレイル+作業機能障害あり群,⑤フレイル+作業機能障害なし群,⑥フレイル+作業機能障害あり群),共変量に基本属性を投入した共分散分析をおこない調整済み平均値(平均値)および95%信頼区間(95%CI)を算出した結果,主観的幸福感は①非フレイル+作業機能障害なし群(平均値: 7.37, 95%CI: 7.28-7.47),③プレフレイル+作業機能障害なし群(平均値7.26, 95%CI: 7.13-7.40),⑤フレイル+作業機能障害なし群(平均値: 6.85, 95%CI: 6.59-7.11),②非フレイル+作業機能障害あり群(平均値6.49, 95%CI: 6.17-6.82),④プレフレイル+作業機能障害あり群(平均値: 6.27, 95%CI: 5.99-6.55),⑥フレイル+作業機能障害あり群(平均値5.99, 95%CI: 5.64-6.35)の順に高かった.多重比較検定(Bonferroni法)の結果,③プレフレイル+作業機能障害なし群は②非フレイル+作業機能障害あり群よりも,そして⑤フレイル+作業機能障害なし群は④プレフレイル+作業機能障害あり群よりも主観的幸福感が有意に高かった.
【結論】本結果より,作業機能障害がないプレフレイルは作業機能障害がある非フレイルよりも,作業機能障害のないフレイルは,作業機能障害があるプレフレイルよりも主観的幸福感が高かった.つまり,地域で健康支援に携わる作業療法士は,フレイル高齢者に対して,フレイル自体の改善に留まらず,作業機能障害の軽減に取り組んでいく必要がある.