[PN-5-5] ポスター:地域 5東京2020パラリンピック競技大会活動報告
パラスポーツにおける作業療法士の取り組み
【序論】東京2020パラリンピック競技大会(以下,東京パラリンピック)日本代表選手団のボート競技にてトレーナー活動を行った.当競技は,2008年北京パラリンピック競技大会から正式競技となるが,自力出場権を獲得したことが無く出場種目も各大会1種目のみであった.2016年から携わり,作業療法士(以下,OT)の観点からトレーナーとして様々な取り組みを実施した結果,目標である自力出場権獲得,歴代最多出場種目数,歴代最高順位を成し遂げた.今回,東京パラリンピックを終えるまでに実践した内容と,その経験から得たパラスポーツにおけるOT参入の意義について報告する.なお,本人の同意及び当院の定める倫理委員会の承認を得ている.
【目的】パラスポーツは,競技特性と障害特性を理解し組み合わせることで成り立つ.当競技の主な競技特性として,水上競技,オールの使用,肢体不自由と視覚障害混合が挙げられる.これらの特性上,主に三つの問題が生じていた.一つ目は,障害の重いシングルスカル(以下,PR1)では除圧方法が限定されることにより褥瘡リスクが高まること.二つ目は,上肢障害では両手でオールを操作することが困難であること.三つ目は,障害の混合が適応される混合舵手付きフォア(以下,PR3)では,選手同士が障害特性を理解し合わずチーム内で衝突することであった.これらの解決が東京パラリンピックの目標達成には不可欠であるため,OTの観点から,褥瘡予防,障害に応じた道具の工夫,障害特性の周知を試みた.
【実践内容】褥瘡予防:PR1では転覆予防のために体幹,下肢をベルトで固定.更に,常時両手でオールを把持する必要があるため,水上でプッシュアップを用いた除圧が困難である.シートの上に様々なクッションを用いたが,重心の高さなど問題が生じ実用的ではなかった.そのため,シート本体の改良が必要であった.
道具の工夫:片麻痺等でオールが片手操作になり,出力不足や艇のバランス低下が生じていた.そのため,両手操作が可能となるように障害に応じてグリップの改良を試みた.
障害特性の周知:互いの障害を知る機会を設けた.視覚障害の選手は麻痺や切断部に直接触れ,肢体不自由の選手は視覚障害が競技や生活でどのような影響が出るのかを選手が直接レクチャーする形で実施した.スタッフへの伝達は,実動作を見ながらOTから伝達する形で行った.
【結果】褥瘡予防:圧迫による褥瘡は回避できたものの,仙骨部付近に擦過傷による皮膚剥離が生じた.本戦までの期間で治癒したが,更なるシートの改良が課題となった.
道具の工夫:両手操作により他選手と同様の動作が可能となり,艇のバランス,スピードの向上が認められた.
障害特性の周知:トレーニング等において互いの欠点を補完しあう様子がみられ,選手同士の衝突は無くなった.スタッフには介助,指導方法の変化が現れ,選手の技術早期獲得が認められた.
通常行うコンディショニングの他に,これらの取り組みを実施した結果,東京パラリンピックでは目標を成し遂げた.
【考察】競技スポーツにおいてフィジカルに対するアプローチは重要である.しかし,パラスポーツでは選手を取り巻く人や物の環境を整えることが競技力向上に大きく関与することが分かった.クラス分けにより競技特性が変わり,選手の数だけ障害特性があるパラスポーツでは,様々な視点を持つスタッフが必要とされる.その中でも心身機能のみならず,障害に応じた物や環境作りができるOTの参入は,今後パラスポーツにおいて大きな役割を果たすと考えられる.
【目的】パラスポーツは,競技特性と障害特性を理解し組み合わせることで成り立つ.当競技の主な競技特性として,水上競技,オールの使用,肢体不自由と視覚障害混合が挙げられる.これらの特性上,主に三つの問題が生じていた.一つ目は,障害の重いシングルスカル(以下,PR1)では除圧方法が限定されることにより褥瘡リスクが高まること.二つ目は,上肢障害では両手でオールを操作することが困難であること.三つ目は,障害の混合が適応される混合舵手付きフォア(以下,PR3)では,選手同士が障害特性を理解し合わずチーム内で衝突することであった.これらの解決が東京パラリンピックの目標達成には不可欠であるため,OTの観点から,褥瘡予防,障害に応じた道具の工夫,障害特性の周知を試みた.
【実践内容】褥瘡予防:PR1では転覆予防のために体幹,下肢をベルトで固定.更に,常時両手でオールを把持する必要があるため,水上でプッシュアップを用いた除圧が困難である.シートの上に様々なクッションを用いたが,重心の高さなど問題が生じ実用的ではなかった.そのため,シート本体の改良が必要であった.
道具の工夫:片麻痺等でオールが片手操作になり,出力不足や艇のバランス低下が生じていた.そのため,両手操作が可能となるように障害に応じてグリップの改良を試みた.
障害特性の周知:互いの障害を知る機会を設けた.視覚障害の選手は麻痺や切断部に直接触れ,肢体不自由の選手は視覚障害が競技や生活でどのような影響が出るのかを選手が直接レクチャーする形で実施した.スタッフへの伝達は,実動作を見ながらOTから伝達する形で行った.
【結果】褥瘡予防:圧迫による褥瘡は回避できたものの,仙骨部付近に擦過傷による皮膚剥離が生じた.本戦までの期間で治癒したが,更なるシートの改良が課題となった.
道具の工夫:両手操作により他選手と同様の動作が可能となり,艇のバランス,スピードの向上が認められた.
障害特性の周知:トレーニング等において互いの欠点を補完しあう様子がみられ,選手同士の衝突は無くなった.スタッフには介助,指導方法の変化が現れ,選手の技術早期獲得が認められた.
通常行うコンディショニングの他に,これらの取り組みを実施した結果,東京パラリンピックでは目標を成し遂げた.
【考察】競技スポーツにおいてフィジカルに対するアプローチは重要である.しかし,パラスポーツでは選手を取り巻く人や物の環境を整えることが競技力向上に大きく関与することが分かった.クラス分けにより競技特性が変わり,選手の数だけ障害特性があるパラスポーツでは,様々な視点を持つスタッフが必要とされる.その中でも心身機能のみならず,障害に応じた物や環境作りができるOTの参入は,今後パラスポーツにおいて大きな役割を果たすと考えられる.