第56回日本作業療法学会

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[PN-6] ポスター:地域 6

2022年9月17日(土) 10:30 〜 11:30 ポスター会場 (イベントホール)

[PN-6-3] ポスター:地域 6臨床現場における作業療法士による自動車運転支援の実態についての調査

宗田 紗耶1上町 彩夏2田中 寛之3鍵野 将平4 (1社会医療法人ささき会 藍の都脳神経外科病院,2医療法人社団六心会 伊丹恒生脳神経外科病院,3大阪府立大学大学院 総合リハビリテーション学研究科,4社会福祉法人 琴の浦リハビリテーションセンター)

【背景と目的】
 近年,自動車運転支援(以下,支援)における作業療法マニュアルの出版などにより,支援の進め方について一定の知識を得やすくなっているが,各病院・施設,そして,作業療法士(以下,OT)個々人において運転適性評価に使用している資源には違いがある.今後,OTが支援を進めるにあたっては,いずれの病院・施設においても運転適性を判断するにあたって適切な評価法を選択し実施することが求められている(日本作業療法士協会,2017).
 本研究の目的は,各病院・施設のOT個人らによる支援の実態を調査し,対象となった患者・利用者の支援を望んだ理由,用いた評価方法,現状の課題を明らかにすることである.
【方法】
 対象者は,大阪府立大学作業療法学専攻の臨床実習施設のうち,大阪府内の身体障害領域の病院・施設に勤務するOTとした.調査方法は郵送法を採用し,2019年12月~2020年3月にかけて実施した.調査用紙の作成は,2018年に日本作業療法士会が全国の施設に向けて行った自動車運転支援調査用紙を基に,発表者らと支援の経験があるOT2名の協力の下で作成した.調査用紙は次の3つで構成され,まず,OTが支援した患者・利用者の性別,年齢,疾患,障害などの属性,支援を希望した理由などの6つの基本的項目を質問した.次に,支援で使用した評価尺度や設備など,評価の内容について3つの項目を質問した.最後に,教習所等との連携内容などについて,3つの項目を質問した.分析方法については,上記調査項目ごとに基本属性や選択式の回答項目の記述統計を求めた.本調査は,大阪府立大学大学院の倫理委員会の承認を得て実施(2019-OT207)した.
【結果】
 対象となった40施設に依頼書を郵送し,32施設から268名の回答を得た.回答項目の10%以上が欠損項目と認められた17名は除外した.よって,有効回答数は251/268名(93.7%)であった.基本的項目の回答について,251名の回答者のうち,男性が108名,女性142名(性別不明1名)で,平均経験年数は7.1±5.9年,年齢は30.8±7.6歳であった.急性期は99名,回復期は152名,維持期・その他の領域は28名であった(複数回答あり).支援の経験がある者は118名(47%)であった.
 支援対象となった患者・利用者の性別は,複数回答にて男性112名(95%),女性30名(25%),年齢は60代が70名(59%)と最も多かった.疾患は脳卒中が104名(88%)と最も多く,次いで骨折が33名(28%)であった.高次脳機能障害では注意障害が88名(75%),次いで記憶障害が38名(32%)であった.支援を希望した理由について,「通勤で必要だから」が72名(61%),次いで「買い物など荷物の運搬に必要だから」が65名(55%)であった.
 次に,支援で使用した評価尺度では,TMT99名(90%)が最も多く, 次いでMMSE81名(74%)であった.教習所等との連携の調査では,連携したことのある者は29名(26%,15施設)であった.連携の内容では,「教習所や免許センターに連絡・相談をした」と選択した者が28名中18名(64%),次いで「教習所には同行せず,のちに患者・利用者から報告を受けた」が10名(36%)であった.
【考察とまとめ】
 本調査から,自動車の運転は患者・利用者にとって仕事や買い物などの手段として生活上おこなう必要がある作業であることが分かり,OTとして支援に取り組む重要性を伺い知ることとなった.一方,支援においてどこまで運転適性評価や多職種の連携を実施するかについては,病院・施設やOT個人によってばらつきがみられることから,その判断がOTに委ねられている可能性も考えられた.