[PN-6-4] ポスター:地域 6精神障害者の定着率を高める非視覚的な職場環境要因
企業インタビューを通じて
【はじめに】
近年,精神障害者の雇用者数は増加傾向であり2018年に精神障害者雇用義務化されてから一層の高まりを見せている.企業側の採用意欲が高まる一方,適切な雇用環境が整備されずに離職するケースも一定数存在する.厚労省障害者雇用実態調査(2013)では,精神障害者の離職理由として職場の雰囲気・人間関係という回答が最上位であるが,精神障害者の定着要因として,職場の雰囲気や人間関係など非視覚的な要因を取り上げた先行研究は存在していない.
従業員同士の繋がりや信頼関係,互酬性を表す概念として職場のソーシャルキャピタル(以下WSC)というものがある.これは,企業が経済活動を行う要素として物的資本・人的資本などに並ぶ概念として近年注目されている.今回,精神障害者の定着率を高める職場要因としてWSCの存在に着目して,3社の中小企業に対してインタビュー調査を実施した.本研究の目的は,WSCの構築から定着までの一連のプロセスを明らかにし,精神障害者従業員への影響までを考察し,精神障害者就労支援における職場環境アプローチの一助にする事である.以下に報告する.
【方法】
勤務する精神障害者従業員の定着年数が平均3年以上の中小企業3社(A社,B社,C社)の精神障害者従業員1名,同僚従業員1名,経営者または現場管理者1名に対し,アンケート調査と半構造化インタビュー調査を実施した.対象者には,口頭と書面で研究内容を説明し同意を得た.アンケート調査は,H.Eguchi(2017)らによって開発された『日本版職場内ソーシャルキャピタル尺度』をインタビュー調査実施前に記入してもらった.WSCの存在を確認した状態で,半構造化インタビューを実施.質問項目は,WSCに関連する5つのキーワード(信頼,思いやり,相互理解,互酬性,繋がり・連帯感)を基にした質問などそれぞれの立場に併せた見解を聞き取れるような内容にした.
【結果】
アンケートの結果,各社先行研究の平均値より高い値を示した.インタビューの結果,以下のような特徴が見られた.A社:障害プレゼンや経営者自ら個別の声かけを率先して行うなどコミュニケーションを図りながら,個々の従業員の軋轢が起こりそうな部分を緩和し,相互理解を促進することで,集団の和を維持したまま個別性を取り入れている.B社:経営者の理念を基礎とした,組織的取り組みと現場リーダー層へ個別の働きかけにより理念浸透をはかっている.経営者が従業員と体験を共にしたり,直接働きかけることで思考や言動の基本となる理念を浸透させていている.「人のつながりや連帯感」を重視しており,強いメッセージを経営者は発信している.C社:管理者が「チームワーク」や「信頼関係」を大事にしている発言もあり,それらを面談や声かけなど職員への思いやりの行動を実施することで,職員の心理的緩和が生まれ,他者へ助ける余裕を生み出している.
【考察】
精神障害者定着率の高い職場にはWSCが存在していることが示唆された.集団が精神障害に与える治療効果について,山根(2017)は,「安心感をもたらす体験」「受容される体験」「他者からの承認」という要素は好影響を及ぼすことを述べており,WSCの存在により安心して働ける環境が構築されることで定着へと繋がっていると考える.WSC構築は経営者・管理者の理念に基づき戦略的に構築されており,職場定着には経営者・管理者の具体的な行動と従業員への理念浸透が重要であり,定着支援を行う上で,そのような環境が整備されているか企業側に助言を行なっていくことが有益である.
近年,精神障害者の雇用者数は増加傾向であり2018年に精神障害者雇用義務化されてから一層の高まりを見せている.企業側の採用意欲が高まる一方,適切な雇用環境が整備されずに離職するケースも一定数存在する.厚労省障害者雇用実態調査(2013)では,精神障害者の離職理由として職場の雰囲気・人間関係という回答が最上位であるが,精神障害者の定着要因として,職場の雰囲気や人間関係など非視覚的な要因を取り上げた先行研究は存在していない.
従業員同士の繋がりや信頼関係,互酬性を表す概念として職場のソーシャルキャピタル(以下WSC)というものがある.これは,企業が経済活動を行う要素として物的資本・人的資本などに並ぶ概念として近年注目されている.今回,精神障害者の定着率を高める職場要因としてWSCの存在に着目して,3社の中小企業に対してインタビュー調査を実施した.本研究の目的は,WSCの構築から定着までの一連のプロセスを明らかにし,精神障害者従業員への影響までを考察し,精神障害者就労支援における職場環境アプローチの一助にする事である.以下に報告する.
【方法】
勤務する精神障害者従業員の定着年数が平均3年以上の中小企業3社(A社,B社,C社)の精神障害者従業員1名,同僚従業員1名,経営者または現場管理者1名に対し,アンケート調査と半構造化インタビュー調査を実施した.対象者には,口頭と書面で研究内容を説明し同意を得た.アンケート調査は,H.Eguchi(2017)らによって開発された『日本版職場内ソーシャルキャピタル尺度』をインタビュー調査実施前に記入してもらった.WSCの存在を確認した状態で,半構造化インタビューを実施.質問項目は,WSCに関連する5つのキーワード(信頼,思いやり,相互理解,互酬性,繋がり・連帯感)を基にした質問などそれぞれの立場に併せた見解を聞き取れるような内容にした.
【結果】
アンケートの結果,各社先行研究の平均値より高い値を示した.インタビューの結果,以下のような特徴が見られた.A社:障害プレゼンや経営者自ら個別の声かけを率先して行うなどコミュニケーションを図りながら,個々の従業員の軋轢が起こりそうな部分を緩和し,相互理解を促進することで,集団の和を維持したまま個別性を取り入れている.B社:経営者の理念を基礎とした,組織的取り組みと現場リーダー層へ個別の働きかけにより理念浸透をはかっている.経営者が従業員と体験を共にしたり,直接働きかけることで思考や言動の基本となる理念を浸透させていている.「人のつながりや連帯感」を重視しており,強いメッセージを経営者は発信している.C社:管理者が「チームワーク」や「信頼関係」を大事にしている発言もあり,それらを面談や声かけなど職員への思いやりの行動を実施することで,職員の心理的緩和が生まれ,他者へ助ける余裕を生み出している.
【考察】
精神障害者定着率の高い職場にはWSCが存在していることが示唆された.集団が精神障害に与える治療効果について,山根(2017)は,「安心感をもたらす体験」「受容される体験」「他者からの承認」という要素は好影響を及ぼすことを述べており,WSCの存在により安心して働ける環境が構築されることで定着へと繋がっていると考える.WSC構築は経営者・管理者の理念に基づき戦略的に構築されており,職場定着には経営者・管理者の具体的な行動と従業員への理念浸透が重要であり,定着支援を行う上で,そのような環境が整備されているか企業側に助言を行なっていくことが有益である.