第56回日本作業療法学会

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ポスター

地域

[PN-7] ポスター:地域 7

Sat. Sep 17, 2022 11:30 AM - 12:30 PM ポスター会場 (イベントホール)

[PN-7-1] ポスター:地域 7新病院の就労支援体制強化に向けて

地域の職業特性を踏まえて

酒谷 景介1野田 正貴1千田 芳明1高橋 肇1 (1社会医療法人 高橋病院リハビリテーション科)

【序論】現行の回復期リハビリテーション(以下,リハ)病棟では,在宅復帰率が重要視されており,自宅退院を目標にリハ医療が提供されている.しかし,社会復帰に向けた関わりで重要な就労支援は,退院後も継続的に行う必要がある.新築移転を控えて当院の回復期リハ病棟の就労支援体制を一つの柱とする為に,これまでの支援状況を振り返り,傾向と今後の展望について報告する.
【目的】当院における就労支援状況を精査して,その傾向と強み,弱みを分析し支援体制強化を図ること.そして,地域の職業特性を考慮に入れた支援を提供できることを目的とした.
【方法】平成27年4月から令和3年11月までに当院回復期リハ病棟を退棟された患者を対象(N=1602,平均年齢79.7±11.6歳)に,就労年齢者(15歳から65歳)を抽出し,就労支援した者の平均年齢,男女構成,疾患別割合,業種,復職率,入院から復職・就労までの期間,退院後のフォロー数,就労支援機関との連携の有無から当院の傾向と地域特性について後ろ向きに調査した.なお本発表は,当院の倫理委員会の承認を得て個人情報を匿名化し患者が特定されないよう配慮した.
【結果】就労年齢者は,156名(平均年齢54.0±10.3歳)で,その内就労支援した者は74名(平均年齢49.7±10.7歳)だった.男女構成は,男性59名(79.7%)女性15名(20.3%),疾患別割合は,運動器疾患28名(37.8%),脳血管疾患46名(62.2%),業種は,建設業16名,製造業10名,運送業9名,飲食・サービス業8名,小売業6名,医療保健・社会福祉業5名,廃棄物処理業3名,漁業,理容・美容業,学習支援業,地方公務が2名ずつ,農業・林業・建築設計業・郵便業・金融業・警備業が1名ずつ,その他が3名だった.産業別では1次産業5名,2次産業26名,3次産業43名だった.復職率は,59.5%,入院から復職・就労までの期間は,100.6±128.4日.退院後のフォロー数は35名だった(継続中4名).就労支援機関との連携は,障がい者就業・生活支援センターが3名,就労移行支援事業所が2名,就労継続支援B型が1名だった.就労支援者で多かった建設業,製造業の受傷機転は高所からの転落,機器との接触等で多発外傷が多かった.次に多発外傷の原因で多かったのは交通事故で脳挫傷による高次脳機能障害で復職できない例がみられた.さらに,継続支援中の3名はいずれも脳卒中で失語症が残存していた.
【考察】当院の就労支援者は三次産業の業種が多いこと,就労支援機関との連携数が少ないこと,失語症患者は日常生活が自立に至っても復職が大きな問題となることが指摘されているように1),当院でも特に失語症患者の支援に難渋していることがわかった.地域の職業特性は2),港湾付近の建設・造船業や製造業が挙げられ,その業務内容をおさえた職業前訓練を行う必要があると考えられた.当院の強みは,退院後のフォロー体制は整備されていることだが,弱みとして就労支援の為の一貫した体制が不十分で特に高次脳機能障害を呈するケースへの支援のノウハウが不足していることが挙げられた.今後の展望としては,院内では多職種連携の為の就労支援チームの設立と高次脳機能障害への特異的な職業前訓練の提供体制の整備,院外では就労支援機関との連携構築を図りたいと考えている.
【参考文献】
1) 渡邉修他:失語症者の復職について.リハビリテーション医学vol.37 No8:517-522,2000
2)函館市:労働状態,産業,常在地,従業地通学他,移動人口,平成27年国勢調査結果.https://www.city.hakodate.hokkaido.jp/docs/2015020600060/files/27kokucho3.pdf(参照
2021-11-23).