第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

地域

[PN-7] ポスター:地域 7

2022年9月17日(土) 11:30 〜 12:30 ポスター会場 (イベントホール)

[PN-7-2] ポスター:地域 7デイサービスの作業療法士の役割

COVID-19を契機に

今 かおり1 (1社会福祉法人和悦会デイサービスセンター加美北)

【はじめに】当デイサービスでは,マシントレーニングを中心とした機能訓練「NICoトレ」を,作業療法士(以下OTとする)が,16年間継続して運営している.今回は2021年1月から12月までの新しい生活様式における集団作業療法を振り返り,デイサービスにおける作業療法士の役割を検討し実践した.また,発表に関しては利用者の同意を得ている.
【取り組みと経過】現在,デイサービスは,アクリル板とマスクで利用者同士の会話が難しいことが多く,消毒作業で業務負担も増えた為,介護職員(以下CWとする)とのコミュニケーションの機会も減っている.また,ボランティアやレクリエーションなどの活動が全て無くなっている.感染対策として導入した機能訓練のスクリーン体操は,以前のような和気あいあいとした雰囲気も無く,個々が淡々と身体を動かしている.マシントレーニング時も,ゆっくりと会話をする余裕はなく交流を図ることは難しい.2021年4月,COVID-19の影響をうけ,デイサービスは10日間の休業となった.更に施設内外の行動制限が強化され,職員間の交流も減り,他部署では職員の退職が続いた.リスク回避でCWの疲弊も続くなか,OTは感染対策の制約に対応しながら実践し続けた.
 2021年2月,レクリエーション要素をもつ集団作業療法として,「スクリーンOT」を開始した.OTのウクレレ演奏から始まり,音楽に合わせての準備体操,出席確認,OTが用意したスライドをフロアの大型スクリーンに映してすすめていく流れで,30分~40分程度,毎日実施している.スライドの内容は,転倒要因,認知症予防,健康の豆知識,手軽にできる運動,季節の話題など,様々な情報を提供している.6月からは,NICoトレサマー企画として,フラダンスセラピー「ハワイやん」を3ヶ月間実施した.内容は,OTが講師となり全員座位でダンスを行った.終了時には個別写真を渡し,各居宅にちらしを配布した.10月は,「ぽかトレ」をNICoトレの屋外運動として5回実施した.1.5m以上の間隔を空けた円形に椅子を配置し,久しぶりのお互いの顔を見ながらの運動が可能となり,活動性が向上した.また,参加したCWは,マスクの下の笑顔を感じ,楽しい時間となったと笑顔で話していた.5月と11月には,利用者にCWが直接聞き取る形で生活についてのアンケートを実施した.自粛を理由に家に閉じこもり,他者との交流が減少している高齢者は多かった.また,インタビューしたCWは,利用者とゆっくりと話ができ,その人を知ることができたと話していた.
 施設行事は全て中止,自粛ムードで暗いニュースが続く中,OTのリズム体操では,流行の音楽を選択して職員の気分転換も図ってきた.敬老週間とクリスマス週間には,職員の依頼で,OT一人で余興を数日間実施した.COVID-19状況下2年目,職員の協力も期待できず難しいことも多々あったが,できることは何か,どうすればできるのか,というOTの視点で考え,マンパワー不足の環境でやり続けた1年であった.
【考察】デイサービスの機能訓練は,運動機能の低下を防ぎ,できることを継続し,現在の生活を支援することである.OTの役割は,他職種と連携を図り,COVID-19状況下でできることを評価しながら,今できる作業を用いて活動意欲の低下を防ぐことである.そして,新しい生活様式での集団作業療法は,安全を最優先に,人と人,人と大切な作業を繋げていかねばならない.また,人との交流が減った利用者やコミュニケーションが難しい利用者の認知面を維持する為にも,個別での関わりが重要である.OTは従来の形にこだわらず柔軟に考えることを強みとして,変化への適応力を発揮していかねばならない.