[PN-7-4] ポスター:地域 7横断性脊髄炎を発症し,排泄障害を合併しながら復職した一事例
<はじめに>横断性脊髄炎の予後は3分の1が完全回復し,3分の1が何らかの障害が残存し,3分の1で重度麻痺が残存する1).今回,急性骨髄性白血病の治療中に横断性脊髄炎を発症し,対麻痺と排泄障害に対する不安を抱きながらも訪問リハビリテーション開始後1年以上経て,職場復帰した事例の過程を報告する.なお,本報告に関して事例より同意を得ている.
<事例紹介>50代女性.夫と子供の4人暮らし.発症時はホームセンターに勤務していた.X年-7月に急性骨髄性白血病を発症し,抗がん剤治療中に突然両下肢の麻痺が出現し,横断性脊髄炎と診断されリハビリテーションを実施.急性骨髄性白血病は寛解後,地元の病院にて退院調整を行いX年-1月に退院後,当事業所に依頼があり,X年より週2回40分の介入を開始した.
<初期評価>心身機能面は上肢機能は日常生活上問題となるものはなかったが,下肢は両膝関節に軽度屈曲関節可動域制限,両下肢筋力はMMT2~3レベルで,感覚は異常知覚及び深部感覚は重度鈍麻であった.認知機能面は正常.生活機能面は基本動作は物的介助が必要であり,立位は不可.移動は車いすにて自走していた.日常生活動作は排泄動作は尿意や便意はなく,時間で自己導尿及び下剤を使用,入浴はシャワー浴であったが,可能であった.生活関連動作(以下,IADL)は家族が行っていた.事例は,現状から復職は先の事ととらえていた.
<経過>1.IADLの自立を目指した時期(X年~X+1年)
実際の調理場面などで筋力増強や感覚入力を行えるよう細かな動き伝え立位や横歩きなどを実施すると訪問時以外にも調理や洗濯を行い,杖等で短距離の歩行が可能となった.また,家族と車いすで外出するようになったが,安全に自己導尿できる場所が少ないと訴えられた.
2.排尿などへアプローチし,復職を目指した時期(X+1年~X+2年)
排泄動作への介入として,尿の量と自己導尿の時間を調べ,自己導尿時間にトイレに座って手圧をかける事から練習した.手圧から腹圧,腹圧なしと段階的に練習し自力排泄が可能となった.排便は下剤を利用し,朝排便する習慣がついた.時折,失禁は認めるため,パットは外せなかったが,外出の不安は軽減し,職場復帰に向け,職場への交渉や自動車の改造などを行った.職場は配置転換され,車いす中心で移動することで週4日の時短勤務から職場復帰した.
<結果>復職時の身体機能面は下肢の関節可動域制限は右膝関節のみ残存したが,筋力はMMT4レベルとなり異常知覚は残存するものの深部感覚は軽度鈍麻となった.生活機能面は基本動作および移動は近距離は杖もしくは独歩となり,日常生活動作も入浴も可能となった.IADLも自立した.
<考察>排尿障害は生活の質を大きく低下させ,尿路感染症などの誘因などにもなる2)と言われている.本事例はIADLの改善により基本動作や基礎疾患による体力低下も改善し,排泄障害が軽減し,復職が可能となった.
1)急性横断性脊髄炎(acute transverse myelitis) - 岡山大学病院 整形外科 脊椎・脊髄グループ (onitaiji.com)
2)榊原隆次 岸雅彦ら:排尿中枢制御と脳疾患 リハビリテーション医学48(2) P94-102 2001
<事例紹介>50代女性.夫と子供の4人暮らし.発症時はホームセンターに勤務していた.X年-7月に急性骨髄性白血病を発症し,抗がん剤治療中に突然両下肢の麻痺が出現し,横断性脊髄炎と診断されリハビリテーションを実施.急性骨髄性白血病は寛解後,地元の病院にて退院調整を行いX年-1月に退院後,当事業所に依頼があり,X年より週2回40分の介入を開始した.
<初期評価>心身機能面は上肢機能は日常生活上問題となるものはなかったが,下肢は両膝関節に軽度屈曲関節可動域制限,両下肢筋力はMMT2~3レベルで,感覚は異常知覚及び深部感覚は重度鈍麻であった.認知機能面は正常.生活機能面は基本動作は物的介助が必要であり,立位は不可.移動は車いすにて自走していた.日常生活動作は排泄動作は尿意や便意はなく,時間で自己導尿及び下剤を使用,入浴はシャワー浴であったが,可能であった.生活関連動作(以下,IADL)は家族が行っていた.事例は,現状から復職は先の事ととらえていた.
<経過>1.IADLの自立を目指した時期(X年~X+1年)
実際の調理場面などで筋力増強や感覚入力を行えるよう細かな動き伝え立位や横歩きなどを実施すると訪問時以外にも調理や洗濯を行い,杖等で短距離の歩行が可能となった.また,家族と車いすで外出するようになったが,安全に自己導尿できる場所が少ないと訴えられた.
2.排尿などへアプローチし,復職を目指した時期(X+1年~X+2年)
排泄動作への介入として,尿の量と自己導尿の時間を調べ,自己導尿時間にトイレに座って手圧をかける事から練習した.手圧から腹圧,腹圧なしと段階的に練習し自力排泄が可能となった.排便は下剤を利用し,朝排便する習慣がついた.時折,失禁は認めるため,パットは外せなかったが,外出の不安は軽減し,職場復帰に向け,職場への交渉や自動車の改造などを行った.職場は配置転換され,車いす中心で移動することで週4日の時短勤務から職場復帰した.
<結果>復職時の身体機能面は下肢の関節可動域制限は右膝関節のみ残存したが,筋力はMMT4レベルとなり異常知覚は残存するものの深部感覚は軽度鈍麻となった.生活機能面は基本動作および移動は近距離は杖もしくは独歩となり,日常生活動作も入浴も可能となった.IADLも自立した.
<考察>排尿障害は生活の質を大きく低下させ,尿路感染症などの誘因などにもなる2)と言われている.本事例はIADLの改善により基本動作や基礎疾患による体力低下も改善し,排泄障害が軽減し,復職が可能となった.
1)急性横断性脊髄炎(acute transverse myelitis) - 岡山大学病院 整形外科 脊椎・脊髄グループ (onitaiji.com)
2)榊原隆次 岸雅彦ら:排尿中枢制御と脳疾患 リハビリテーション医学48(2) P94-102 2001