第56回日本作業療法学会

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[PN-7] ポスター:地域 7

2022年9月17日(土) 11:30 〜 12:30 ポスター会場 (イベントホール)

[PN-7-6] ポスター:地域 7通いの場の現状と作業療法士の役割に関する文献レビュー

金丸 皓慈1小林 隆司2 (1東京都立大学大学院人間健康科学研究科作業療法科学域,2東京都立大学人間健康科学研究科作業療法科学域)

【はじめに】
超高齢化社会ともいえる現代,介護予防の考えが普及してきている.一般介護予防事業では住民主体の通いの場が設けられており,厚生労働省老健局老人保健課の調査によると,全国に約13万件設けられている(2019).通いの場における介護予防の定義としては,介護予防に資すると判断できるような体操や趣味活動を行うこと等が挙げられている.専門職においては,地域リハ活動支援事業として介護予防を機能強化する観点から,通いの場への関与が求められている.しかし,厚生労働省(専門職の効果的・効率的な関与の具体的方策について,2017)によると通いの場への派遣回数は理学療法士が1370回である一方,OTは464回と実績が少なかった.一般社団法人日本リハ病院・施設協会によると,地域づくりの重要性は認識されているものの,具現化に向けた研修内容やノウハウが蓄積されていないと報告されている(2018).そこで本研究を通じて,通いの場の実態とOT参入の現状を把握することで,効果や課題,OTの役割について明らかにしていくことを目的とした.
【方法】
医学中央雑誌web(Ver.5.0),メディカルオンラインをデータベースとして検索し,キーワードは「通いの場」同義として「サロン」,「作業療法」とした.検索式は(通いの場/AL and (作業療法/TH or 作業療法/AL)) and ((FT=Y) ),(サロン/AL and (作業療法/TH or 作業療法/AL)) and ((FT=Y) )とした.対象文献の中から本研究の目的に沿った文脈として,通いの場の実態(効果や課題に関する内容),OT介入に関する内容を中心に抽出し, 同質と判断できる内容のものをカテゴリ化し,さらにそのカテゴリ化した中で同質の文脈を小カテゴリ化した.尚,本研究に関するCOIはない.
【結果】
検索日は2021年10月29,30,31日であり,検索結果は98件であった.目的に合わない文献を除外し,重複論文を除外した結果,文献数は27件となった.原著論文は8件であり,19件は抄録であった.文献より41のセグメントが抽出され,カテゴリとしては【OTの役割】【通いの場の効果】【通いの場の課題】が生成され,小カテゴリとして<集団に着目>,<健康支援>,<掛け橋的役割>, <参加/継続による効果>,<参加/継続因子>,<人的課題>,<環境関連課題>,<OTの課題>が生成された.
【考察】
【OTの役割】は通いの場を集団と捉え,健康支援として,生きがいや役割,意味のある作業に着目し主観的健康感を含め支援を行っていることがわかった.しかし今回のレビューでは標準的な介入の存在は認められず,今後は質保証のため,介入の枠組みを明確にしていく必要があると考えた.
【通いの場の効果】としては,主に認知機能,運動機能,社会参加,心理面への影響が挙げられた.特に交流による健康意識の向上や情報収集に関する内容が多く挙げられ,強い参加継続因子となると考えた.
【通いの場の課題】としては,参加者の増加・継続につながらないこと,移動手段を確保できないことが主であった.粟田(2020)は,高齢者は加齢に伴い身体機能・移動能力の低下や社会的孤立の傾向がみられると報告しており,背景に高齢者の閉じこもりも関係していると考えた.また通いの場におけるOTの課題としてはマンパワー不足が挙げられた.そこでまずは,通いの場への定着参加を支援するよう働きかけることによりOT参入の可能性が見出せるのではないかと考えた.具体的には通いの場に初回参加する者に同行し,交流面や心理面のサポートをすることや参加する目標を協働して考え,継続意欲を高めることが考えられた.