第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

地域

[PN-7] ポスター:地域 7

2022年9月17日(土) 11:30 〜 12:30 ポスター会場 (イベントホール)

[PN-7-7] ポスター:地域 7作業療法の地域での介入の現状

文献レビュー

遠藤 陵晃1 (1横浜YMCA学院専門学校作業療法科)

【はじめに 】
 近年,高齢者が住み慣れた地域で最後までその人らしく暮らすと言われ,保健事業と介護予防の一体化として医療,介護の両面から国は予防ということが重視されてきている.また,高齢者のみならず作業療法士(以下,OT)は,地域で暮らす人々が,さまざまな生活上の障害をもった場合に,生活の再構築のため,本人および家族に対して助言・支援・指導を行い,彼らにとって住みやすい地域づくりをすることであるとも言われている.
 地域の作業療法の介入では,訪問や通所という在宅生活している患者に対して直接関わりを持っているものが多く,地域では直接関わりを持つのみでなく,集団対応や他職種へ支援,助言などのマネジメントをすることも可能である作業療法士として強みを活かしきれていない傾向にある.OTが介護予防の介入する内容を検討する研究はまだ少ない.そこで,本研究の目的は地域でのどのような作業療法が展開され,地域でどのように作業療法士が今まで介入してきたか,現状と課題の内容を把握することを目的とした.
【方法】
 文献検索は,我が国最大の国内医学論文情報のインターネット検索サービスである医中誌Webを用いて2022年2月5日に実施した.検索キーワードは「地域」「作業療法」とし,検索期間は設けなかった.原著論文および事例報告を対象とし,レビューする文献の選択条件は以下の通りとした.まず,キーワードを用いて得られた検索結果から,在宅生活を対象者に作業療法での関わりのある記載がある文献を抽出した.次に内容が不十分で説明不足と判断された作業療法の普及啓発を対象とした文献,会議録や解説,総説,特集は除外した.
【結果】
 医中誌を用いて上記のキーワードで検索した結果,233件が検出された.そのうち上記の選定条件を満たす文献は35件であった.筆頭著者の所属機関は,大学など教育機関と病院などの臨床機関の差はなく,掲載雑誌は作業療法,そのほか各都道府県の作業療法士会が発行している学術誌などであった.
 2015年以降より事例が散見されるようになり,2017年以降は増加傾向にあったOTの介入内容に関しては,高齢期領域の支援や精神疾患に対するアプローチが多く,各領域に特化するのではなく地域共生社会へ向けての領域を超えた介入は少しずつみられている一方,OTが専門職として,地域支援事業等の介護予防などに介入する報告は6件と少なかった.
【考察 】
 本研究の結果から地域の予防などにおける作業療法の報告はまだ少ないものの地域をキーワードに報告されるものは年々増加してきていることから今後も増えてくると予測される.現在の報告でも多角的な視点を基軸に地域介入を行った報告も増加してきており作業療法の専門性が示されるようになってきていた.
 病院から在宅,地域まで幅広く作業療法士が関わることで,より良く対象者の生活活動を見渡すことができる.そのためには作業療法の中心である個人から集団,集団から個人をマネジメントすること,他職種と連携,支援,助言をしていくことが地域共生社会,地域包括ケアシステムの構築ため,専門職としての作業療法士が地域介入の意義に繋がると考える.今後更にOTが医療から地域へ目を向け.介入,支援,助言する意義や有用性を示していくことが求められている.