第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

地域

[PN-8] ポスター:地域 8

2022年9月17日(土) 12:30 〜 13:30 ポスター会場 (イベントホール)

[PN-8-4] ポスター:地域 8地域在住虚弱高齢者におけるアクティブラーニング型健康教育の取り組みについて

久保田 智洋1犬田 和成1岩本 記一1六倉 悠貴1岩井 浩一2 (1アール医療福祉専門学校,2茨城県立医療大学)

【序論】我が国は,超高齢社会になり,要介護者の増加は著しい現状にある.また,近年,新型コロナウィルス感染症の感染拡大により,高齢者に様々な悪影響をもたらしている.高齢者において,外出機会の減少や日常生活活動の低下,認知機能の低下などが報告されている.このように,高齢者支援としては,ライフスタイルの改善や認知機能の改善が欠かせない.
 ライフスタイルの改善を目的として,近年,高齢者に対する教育介入の有効性が注目されている.具体的な手法として,一方向の学びから参加者が主体的な学びと他者との協働の機会を設ける手法である.上村らは,地域在住一般高齢者を対象にアクティブラーニング型健康教育介入を取り組み,フレイル予防に寄与することを報告している.
 このように,地域在住一般高齢者のフレイル予防にはアクティブラーニング型健康教育の効果性が報告されているが,地域在住虚弱高齢者に対してはライフスタイルや認知機能へどのような効果があるかは不明である.
【目的】本研究の目的は,地域在住虚弱高齢者に対してアクティブラーニング型健康教育を実施し,その効果を検討することである.この点を踏まえて,地域在住虚弱高齢者の支援方法を検討することとする.
【方法】対象者は,A県B市の通所型サービスC事業(以下,健康教室)に参加した地域在住虚弱高齢者22名(女性22名)とした.本健康教室は2021年5月~7月および10月~12月の時期において,週1回2時間開催の全10回コースであった.健康教育の内容は,2時間の内,前半がアクティブラーニング型健康教育を実施し,後半が体操などの運動を実施した.アクティブラーニング型健康教育の方法は,上村らの方法を参考にし,2時間開催の内1時間を「運営者がテーマを提示し,それに対するグループワークによる議論」⇀「グループワークで議論した内容を健康教室参加者全体でシェアおよび共有」⇀「学んだ事を次の健康教室までに自宅などで実践をする」⇀「次回の健康教室の開催時に,この1週間の取り組みを振り返る」を一連の基本的な流れとした.グループワークは,健康教室参加者2名と運営スタッフ2名とした.各テーマは,筋力低下予防や認知症予防など健康実践に関するものとした.調査項目は,年齢,性別,主要アウトカムとして作業に関する自己評価短縮版の有意性領域(以下,OSA-SF有意性領域),認知機能検査:MCIスクリーニング評価 (以下,MoCA-J) ,ヘルスリテラシースケール,副次的アウトカムとして10m歩行速度,TUGとした.これらの調査項目を開始時と10週後の終了時に測定をした.統計解析には,SPSS.ver25を用いた.なお,本研究は本人の同意および倫理委員会の承認を得て実施した.
【結果】対象者の平均年齢は,82.0±4.9歳であった.各測定項目の結果は,開始/終了時の順にOSA-SF有意性領域:32.5±11.6秒/35.1±4.5秒,MoCA-J:22.8±4.1点/24.0±7.6点,ヘルスリテラシースケール:36.8±8.9点/41.9±7.1点,10m歩行速度:8.8±2.2秒/8.3±2.4秒,TUG:11.3±2.8秒/10.4±2.8秒であった.Wilcoxonの符号付順位検定の結果,MoCA-Jと10m歩行速度に有意な改善が認められた.
【考察】本研究の健康教室の特色であるアクティブラーニング型健康教育を地域在住虚弱高齢者に実施したことで,身体機能の歩行速度と認知機能の改善が認められた.これは,フレイルの項目の1つであることから,アクティブラーニング型健康教育はフレイル予防に効果があると思われる.本研究の限界は,対照群がない点である.今後,ランダム化比較試験を用いて地域在住虚弱高齢者への効果を明確にする必要がある.