[PN-8-5] ポスター:地域 8介護老人保健施設でボランティア活動に参加する後期高齢者が生活の価値を高め方略性をもって活動を継続するプロセス
【序論】高齢者のボランティア活動は,若い成人と比べ活動頻度が多く,生活満足度が向上し,健康に寄与する活動(Van,2000)である.筆者は,介護老人保健施設(以下,老健)でボランティア活動を行う地域高齢者と関わる中で,高齢者がその活動を行う意味づけの大きさを実感した.そして昨年のこの学会で発表した文献レビューから,高齢者のボランティア活動と健康に関する研究においては,活動継続に関連する要因等の検討,質的研究や特に後期高齢者を対象とした研究の必要性が明らかになった.今回,老健で入所者向けのレクリエーションや職員補助を行う施設ボランティアの後期高齢者に焦点を当て,活動継続プロセスに関する質的調査研究を行うこととした.【目的】老健で施設ボランティア活動を行う後期高齢者の活動継続プロセスを明らかにする.そして,活動の継続に関する支援方法に示唆を得る.このことは,高齢者が施設ボランティア活動を継続する要因分析や,活動継続に有効な支援方法を明らかにすることにつながる.【方法】2020年3月時点で,月1回以上の頻度で且つ1年以上施設ボランティア活動に従事する後期高齢者に,インタビューガイドを用いた半構造化面接でインタビューを行い,得られたデータから逐語録を作成した.対象者は,1か所のグループから男女比,年代層,活動期間を考慮した上で合目的的サンプリングを行った.分析方法は,実践的質的研究法である木下(2020)の修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)を用いた.分析テーマと分析焦点者を設定し,分析ワークシートを用いて分析テーマに関連する具体例から概念を生成した.2例目以降は,概念の生成と並行して具体例の類似例と対極例を分析した.次に類似する概念をまとめ抽象度を高めながらサブカテゴリー,カテゴリーを生成した.そして,2名続けて新たな概念が生成されなくなったところで分析を終了し,最後にこれらの関連性をストーリーラインと結果図で示した.分析の際は,データの信頼性や分析の妥当性を検討した.倫理的配慮として,在籍する大学の研究倫理審査委員会の承認を得た.【結果】対象者は男性5名,女性5名の計10名.平均年齢は81.8±3.4歳,活動期間は平均13±9.4年.分析の結果,39個の概念,14個のサブカテゴリー,4個のカテゴリーが生成された.介護老人保健施設でボランティア活動に参加する後期高齢者が生活の価値を高め方略性をもって活動を継続するプロセスは,様々な喪失感を経験する高齢者が,施設ボランティア活動に参加することで《ボランティア役割により高まる自尊感情》と《再社会化により高まる生活の価値》が生起され重要な活動へと変化する.そして,ボランティア個人と組織でその時々にみせる《経時的変化に対する活動継続の方略》を用いて対応し《長期的活動が可能になる環境》に支えられながら活動を継続するプロセスだった.【考察】高齢者ボランティアは,活動を有意義なものと認識し生活における重要な活動と位置づけていた.そして,活動継続が困難になった場合は方略を探り対応していた.徐々に活動終了へと近づいていく中,高齢者ボランティアはボランティアという役割を通して,自身の活動意義を確かめながら仲間とのつながりを保つために可能な限り活動を続けようとしていた.活動継続に対する支援として,活動動機付け,活動目標の調整,高年齢者向け活動種目の設置,メンバー同士の繋がりの強化,ボランティア活動終了後の社会参加を見据えた「健やかな活動終了」を考慮した支援の必要性が示唆された.今後は,概念から質問紙を作成し施設ボランティア活動の継続要因を分析していく.