[PN-9-1] ポスター:地域 9運動特化型デイサービス利用者の転倒の要因について
【はじめに】
従事している運動特化型デイサービス(以下デイ)で,利用者の転倒が増加している傾向を感じた.転倒は,地域生活継続を障害する悪影響が考えられ,転倒リスク軽減の為に身体機能改善やADL支援を行っている.しかしながら,転倒が多い利用者は,行動面の不注意や自己認識の低さが関連していると思われた.自己と他者の転倒リスクの認識の違いを調査し注意障害との関連性の検討を行った.
【方法】
対象を,デイ利用中の,認知機能低下の無い独歩可能な27名(男性2名,女性25名),平均年齢83.4歳,要支援(週1~2回利用)とし以下を調査した.
まず,転倒リスクの自己及び他者評価の調査は,鳥羽の問診票と高次脳機能障害調査の注意障害の項目を参考に生活アンケート(以下アンケート)を作成.内容は,過去1年間の転倒数(以下転倒数),転倒リスク7項目(以下転倒),つまずき,手摺使用,歩行速度,1㎞歩行,片足立ち,杖使用,ふらつきを,2件法0~1点,注意障害6項目(以下注意)複数課題遂行,集中持続,同じミスの有無,落ち着き感,状況判断,疲労感を3件法0~3点で作成,下位項目の得点,転倒と注意の各合計点を算出した.実施は,自己評価は対象者へ口頭調査し,他者評価はスタッフ5名(Ns1名,OT1名,PT3名)に回答を求め平均値を算出した.次に,注意障害の評価は,TMT-J partA(以下TMT)を用い,所要時間判定表を基に正常群,境界群,延長群の3群に分けた.分析は,転倒と注意の各合計点での自己と他者評価の差と,TMT3群間の転倒数,転倒と注意の自己と他者評価の各合計点,下位項目得点の相関関係をSpearman順位相関係数を用い,J-STAR統計ソフトで分析した.倫理的配慮は,対象者とスタッフに,調査について十分説明を行い,ヘルシンキ宣言に基づき署名にて同意を得た.また当施設での倫理審査委員会の承認を得ている.
【結果】
アンケートの自他評価の差は,転倒の合計点で有意差を認めた(p<.01).平均値は対象者4.59±1.39,スタッフ3.39±1.42で自己評価の認識が高い結果であった.TMT3群間の相関関係では,対象27名中,正常群9名,境界群9名,延長群9名であり,延長群の自己評価の「疲労」(r=-0.713).他者評価の「ふらつき」(r=-0.669)に負の相関を認めた.転倒数との相関関係は認めなかった.
【考察】
転倒が増加傾向にある利用者は,転倒リスクの自己認識の低さが要因にあると仮説したが,今回の結果では,スタッフ以上に転倒に対する認識が高い結果となった.そこで,村田らが在宅障害高齢者の注意と転倒との関連において,TMT-Aの低下が転倒を引き起こす重大な要因であるとの報告を参考に,TMTとの関連性を検証したが,転倒回数との関連は認めなかった.しかしながら,延長群の自己評価で「疲労感」に負の相関を認めた.このことは持続選択の注意障害が適切な疲労感の認識を低下させ,この要因が行動面で不注意となり転倒リスクを高めている考えられる.
疲労と転倒発生との関連について,紙谷らは,主観的疲労感の重症度が高いほど転倒発生が高くなると述べており,それとは相反する結果であった.しかしながら,今回の結果は,適切な疲労感の自己認識が,転倒予防の1つの指標になると考える.次に他者評価で「ふらつき」に負の相関を認めたが,利用者の感じる「ふらつき」はあくまでも主観的なもので,このふらつきにスタッフが気づきにくい状態があると思われる.ふらつき感を,丁寧なヒヤリングで把握することも重要と考える.今回仮説に反し,利用者の転倒リスクの認識はスタッフより高い結果となったがその中で,注意障害を有する方は,適切な疲労感の自己認識の低下が疑われ,転倒の要因になっていると考えられた.ディにおいても注意機能の評価と介入を構築していく必要性を感じた.
従事している運動特化型デイサービス(以下デイ)で,利用者の転倒が増加している傾向を感じた.転倒は,地域生活継続を障害する悪影響が考えられ,転倒リスク軽減の為に身体機能改善やADL支援を行っている.しかしながら,転倒が多い利用者は,行動面の不注意や自己認識の低さが関連していると思われた.自己と他者の転倒リスクの認識の違いを調査し注意障害との関連性の検討を行った.
【方法】
対象を,デイ利用中の,認知機能低下の無い独歩可能な27名(男性2名,女性25名),平均年齢83.4歳,要支援(週1~2回利用)とし以下を調査した.
まず,転倒リスクの自己及び他者評価の調査は,鳥羽の問診票と高次脳機能障害調査の注意障害の項目を参考に生活アンケート(以下アンケート)を作成.内容は,過去1年間の転倒数(以下転倒数),転倒リスク7項目(以下転倒),つまずき,手摺使用,歩行速度,1㎞歩行,片足立ち,杖使用,ふらつきを,2件法0~1点,注意障害6項目(以下注意)複数課題遂行,集中持続,同じミスの有無,落ち着き感,状況判断,疲労感を3件法0~3点で作成,下位項目の得点,転倒と注意の各合計点を算出した.実施は,自己評価は対象者へ口頭調査し,他者評価はスタッフ5名(Ns1名,OT1名,PT3名)に回答を求め平均値を算出した.次に,注意障害の評価は,TMT-J partA(以下TMT)を用い,所要時間判定表を基に正常群,境界群,延長群の3群に分けた.分析は,転倒と注意の各合計点での自己と他者評価の差と,TMT3群間の転倒数,転倒と注意の自己と他者評価の各合計点,下位項目得点の相関関係をSpearman順位相関係数を用い,J-STAR統計ソフトで分析した.倫理的配慮は,対象者とスタッフに,調査について十分説明を行い,ヘルシンキ宣言に基づき署名にて同意を得た.また当施設での倫理審査委員会の承認を得ている.
【結果】
アンケートの自他評価の差は,転倒の合計点で有意差を認めた(p<.01).平均値は対象者4.59±1.39,スタッフ3.39±1.42で自己評価の認識が高い結果であった.TMT3群間の相関関係では,対象27名中,正常群9名,境界群9名,延長群9名であり,延長群の自己評価の「疲労」(r=-0.713).他者評価の「ふらつき」(r=-0.669)に負の相関を認めた.転倒数との相関関係は認めなかった.
【考察】
転倒が増加傾向にある利用者は,転倒リスクの自己認識の低さが要因にあると仮説したが,今回の結果では,スタッフ以上に転倒に対する認識が高い結果となった.そこで,村田らが在宅障害高齢者の注意と転倒との関連において,TMT-Aの低下が転倒を引き起こす重大な要因であるとの報告を参考に,TMTとの関連性を検証したが,転倒回数との関連は認めなかった.しかしながら,延長群の自己評価で「疲労感」に負の相関を認めた.このことは持続選択の注意障害が適切な疲労感の認識を低下させ,この要因が行動面で不注意となり転倒リスクを高めている考えられる.
疲労と転倒発生との関連について,紙谷らは,主観的疲労感の重症度が高いほど転倒発生が高くなると述べており,それとは相反する結果であった.しかしながら,今回の結果は,適切な疲労感の自己認識が,転倒予防の1つの指標になると考える.次に他者評価で「ふらつき」に負の相関を認めたが,利用者の感じる「ふらつき」はあくまでも主観的なもので,このふらつきにスタッフが気づきにくい状態があると思われる.ふらつき感を,丁寧なヒヤリングで把握することも重要と考える.今回仮説に反し,利用者の転倒リスクの認識はスタッフより高い結果となったがその中で,注意障害を有する方は,適切な疲労感の自己認識の低下が疑われ,転倒の要因になっていると考えられた.ディにおいても注意機能の評価と介入を構築していく必要性を感じた.