[PN-9-5] ポスター:地域 9機能訓練型デイサービスにおける農作業活動の介入実践と課題の報告
【はじめに】近年,通所介護事業所(以下,デイサービス)においても,利用者の自立支援等に資する個別機能訓練の提供を促進する観点から,利用者の心身の機能に応じて身体機能及び生活機能の向上を目的とする機能訓練が求められてきている.そこで提供されるサービスは関節活動域訓練や筋力増強訓練,歩行訓練などが多いのが現状である.一方で昨今,農業に関する活動(以下,農作業)を障害者等が実施する農福連携が促進されてきている.このような中,筆者らは機能訓練型デイサービスでサービス内容の充実を考えていた管理者(作業療法士)と企業(農業と農作物の販売)との連携事業のコーディネートを行った.本報告の目的は事業を通しての気づきと課題を報告することである.利益相反はない.
【協力施設等の紹介】
デイサービス:理学療法士が開設した通所介護を中心とした事業所で,本事業で主に関わった作業療法士は滋賀5事業所のエリアマネージャー(以下,AM)であった.介入の主となるデイサービスは1日の平均利用者が約40名,要支援者が1/3を占めていた.多くの機能訓練器具があり,体操を中心にしたメニューを提供していた.AMは,利用者の生活機能向上に資するサービス提供を行いたいことに加え,他施設との差別化を行いたく,今後のサービス提供について模索していた.
企業:社長は自社で養護学校の卒業生を雇用し,農業に従事させるなどの経験があった.また,直営販売所があり,地元住民に親しまれた企業であった.
調整役:筆者らは,デイサービスでの介入時の参与観察,企業に対しては提供作業の選定や調整,趣旨の説明を行った.尚,本事業は滋賀県からの委託事業(医療・介護分野における農作業活用による地域実践普及)の一部分で実施した.
【介入方法と経過】デイサービスの要支援者(男性5名,女性2名の7名)を対象者とし,企業の販売所で販売する漬物の下準備(カブの銀杏切り,千切り)の作業を1回30分,週1回,2021年11〜12月の2ヶ月実施した.期間内にSF-12,CAOD,老健式活動能力指標,農作業の経験に関するアンケートを実施した.対象者(家族含む)にはデイサービス職員(以下,職員)が介入趣旨の説明と同意を口頭文面で行った.介入経過は紙幅の都合で概要を示す.事前に介入趣旨を職員に実施した際,職員は対象者の怪我(包丁利用等),業務の多忙さ,対象者は機能訓練を求めてきているのに合致しないのではないか,という意見を持っているようであった.職員からの明確な表出は少なかったが,AMの配慮で職員が本事業を手伝うことはなかった.対象者は全8回包丁を使用し,怪我はなかった.農作業実施中は,自宅での漬物のつけ方,カブを提供した企業が行っていた地元の祭り ,本当は細かい作業をしたいといった発言など積極的な交流が見られた(特に男性).また,男性1名は本介入の話を聞いた家族の計らいで一緒に自宅で食事作りを行った.SF-12では6名が役割/社会的側面スコアが標準値より下回り,人との繋がりが生じる作業を取り入れる必要性が高いことが推察された.
【まとめ】①筋力増強訓練等での介入は対象者のディマンドにあった活動であることが推察される一方,”社会的な孤立感”を解消する手段とはなり得ない.農作業を通じた活発なやり取りは社会的孤立感の軽減に繋がる可能性がある.②農作業を導入する意義や効果について事業所職員の共通理解が必要であること.③デイサービスにおける農作業導入においては,利用者の作業遂行が評価でき,農作業提供側の問題や課題を構造化して捉えられる技能が必要であり,その職種の一つとして作業療法士が適任と考えた.
【協力施設等の紹介】
デイサービス:理学療法士が開設した通所介護を中心とした事業所で,本事業で主に関わった作業療法士は滋賀5事業所のエリアマネージャー(以下,AM)であった.介入の主となるデイサービスは1日の平均利用者が約40名,要支援者が1/3を占めていた.多くの機能訓練器具があり,体操を中心にしたメニューを提供していた.AMは,利用者の生活機能向上に資するサービス提供を行いたいことに加え,他施設との差別化を行いたく,今後のサービス提供について模索していた.
企業:社長は自社で養護学校の卒業生を雇用し,農業に従事させるなどの経験があった.また,直営販売所があり,地元住民に親しまれた企業であった.
調整役:筆者らは,デイサービスでの介入時の参与観察,企業に対しては提供作業の選定や調整,趣旨の説明を行った.尚,本事業は滋賀県からの委託事業(医療・介護分野における農作業活用による地域実践普及)の一部分で実施した.
【介入方法と経過】デイサービスの要支援者(男性5名,女性2名の7名)を対象者とし,企業の販売所で販売する漬物の下準備(カブの銀杏切り,千切り)の作業を1回30分,週1回,2021年11〜12月の2ヶ月実施した.期間内にSF-12,CAOD,老健式活動能力指標,農作業の経験に関するアンケートを実施した.対象者(家族含む)にはデイサービス職員(以下,職員)が介入趣旨の説明と同意を口頭文面で行った.介入経過は紙幅の都合で概要を示す.事前に介入趣旨を職員に実施した際,職員は対象者の怪我(包丁利用等),業務の多忙さ,対象者は機能訓練を求めてきているのに合致しないのではないか,という意見を持っているようであった.職員からの明確な表出は少なかったが,AMの配慮で職員が本事業を手伝うことはなかった.対象者は全8回包丁を使用し,怪我はなかった.農作業実施中は,自宅での漬物のつけ方,カブを提供した企業が行っていた地元の祭り ,本当は細かい作業をしたいといった発言など積極的な交流が見られた(特に男性).また,男性1名は本介入の話を聞いた家族の計らいで一緒に自宅で食事作りを行った.SF-12では6名が役割/社会的側面スコアが標準値より下回り,人との繋がりが生じる作業を取り入れる必要性が高いことが推察された.
【まとめ】①筋力増強訓練等での介入は対象者のディマンドにあった活動であることが推察される一方,”社会的な孤立感”を解消する手段とはなり得ない.農作業を通じた活発なやり取りは社会的孤立感の軽減に繋がる可能性がある.②農作業を導入する意義や効果について事業所職員の共通理解が必要であること.③デイサービスにおける農作業導入においては,利用者の作業遂行が評価でき,農作業提供側の問題や課題を構造化して捉えられる技能が必要であり,その職種の一つとして作業療法士が適任と考えた.