第56回日本作業療法学会

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ポスター

地域

[PN-9] ポスター:地域 9

2022年9月17日(土) 13:30 〜 14:30 ポスター会場 (イベントホール)

[PN-9-7] ポスター:地域 9認知症カフェにおける作業療法士の役割と運営における課題の検討

仙波 梨沙1伊藤 恵美1冨永 美紀2佐々木 裕志3 (1西九州大学,2多久市役所地域包括課,3嬉野温泉病院)

【背景】2015年に厚生労働省は「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」を策定した.認知症の人やその家族が,地域の人や専門家と相互に情報を共有し,お互いを理解し合う場として「認知症カフェ」が位置付けられている.佐賀県作業療法士会(県士会)では2020年7月より佐賀県内の市町から委託を受け,現在,認知症カフェを4か所運営している.各認知症カフェに作業療法士を毎回2~7名派遣し,講義,創作活動,体操,座談,個別面談等を行っている.
【目的】県士会に委託された認知症カフェに協力した作業療法士が認知症カフェをどうとらえ,作業療法の専門性をどのように活かせると考えているか調査し,運営についての課題を抽出することで,今後の認知症カフェ運営の一助にすることを目的とした.
【方法】県士会が委託を受けた認知症カフェの協力スタッフ登録者25名のうち,2020年7月~2021年12月に認知症カフェに参加した作業療法士23名にアンケートを依頼した.そのうちアンケートに回答があった17名を対象とした(回収率73.9%).アンケートはインターネットにてGoogle Formを使用し無記名にて回収した.主なアンケート項目を以下に示す.「また参加したいか」「認知症カフェに参加して難しいと感じたこと」「作業療法士の専門性が活かせる場面」「認知症カフェの役割」についてはそれぞれ選択肢から1つ選び,その理由を自由形式で記載してもらった.「認知症カフェに作業療法士は必要か」については選択肢より1つ選んでもらった.「専門的視点について」は自由形式で記載してもらい,その後,株式会社ユーザーローカルのAIテキストマイニングを利用し,単語出現頻度および共起キーワードを調査した.
【倫理的配慮】本研究について書面で説明を行い,書面での同意を得たのちにアンケートの回答を行ってもらった.アンケートに回答しなくても,今後不利益が生じることはないことを併せて説明した.なお,発表者所属機関責任者の承認を得て研究を開始した.
【結果】対象者は女性10名,男性7名で,平均年齢は31.2±7.1歳であった.平均経験年数は9.3±7.3年で,1年目から26年目の幅があった.平均参加回数は,6.9±8.5回で複数回参加している対象者が多かった.すべての対象者が公休や有休を使用し参加しており「また参加したい」「認知症カフェに作業療法士は必要である」と回答していた.「認知症カフェに参加して難しいと感じたこと」については「勤務調整」が一番多く6名,次いで「行政との連携」が3名であった.「作業療法士の専門性が活かせる場面」については,回答の多かった順に「創作活動」が7名,「座談」が6名,「個別面談」が3名であった.「認知症カフェの役割」については「家族介護者同士のつながり」4名,「認知症の方が通える場」3名,「家族介護者の負担感軽減」2名,「認知症予防・進行防止」2名であった.「専門的視点について」は「参加」「参加者」「当事者」「家族」といった単語の出現頻度,「傾聴」のスコアが高く,特徴的であった.共起キーワードでは「疾患―見立て」「わかりやすい―難しい―専門用語」「よりそう―実情」などが抽出された.
【考察】今回の調査から,作業療法士は認知症カフェに参加したいと思う一方で,自分の休みを使って参加しており勤務調整が難しく,必要性を感じながらも参加に難渋していることが推測された.また,認知症カフェにおける専門的視点については,参加者の気持ちや思いに寄り添い傾聴するという視点を持っている作業療法士が多いのではないかと考える.得られた結果をもとに,今後の認知症カフェ運営の一助にしたい.