[PO-1-1] ポスター:理論 1興味の再生成に関わる要因の質的研究
障害のある当事者の視点からの「障害受容」理論の構築に向けて
【はじめに】
作業療法において「興味」は重視されており,人間作業モデルでは意志を規定する重要な要素の一つと位置づけられている.「興味チェックリスト」は人間作業モデルを活用した作業療法を展開するうえで欠かせないツールとして日本の作業療法士に幅広く活用されている.また多職種連携による対象者の生活行為向上を目的とした日本作業療法士協会が開発した生活行為向上マネジメントの評価ツールにもなっている.「興味」は,注意を喚起し,保持することに関与しており,時間を占める作業を決める重要な要素とされており,そのため作業療法における基本要素の一つとなっている.しかし生きるなかで興味を抱き習慣化や役割が生じた後に障害や病のために獲得した作業を喪失すると新たな興味を再生成する必要が生ずる.その必要性は障害当事者の視点から「障害受容」の過程として浮き彫ることになると考える.そこで本研究では,重要な作業を障害により喪失した人が,新たな作業に興味を持ち,作業の再獲得への志向性を持つまでの過程に着目し,興味の再生成に関わる要因を明らかにすることを目的とする.
【対象と方法】
対象:障害によって重要な作業を喪失し,新たな作業に興味を持ち,作業の再獲得への志向性を持つ過程について詳細な記述がなされている書籍2冊を対象とした.①小林純也著『脳卒中患者だった理学療法士が伝えたい本当のこと』(三輪書店),②田中順子著『患者と治療者の間で-“意味のある作業”の喪失を体験して-』.
方法:2冊の書籍を通読し,研究目的に適合する箇所を抽出し,1つの意味内容となるようにカード化をした.全部で30カードが生成された.30カードにはそれぞれ内容を簡潔に表すコーディング(<>で表現)をし,KJ法を参考にグループ化をし,グループを代表する概念(「」で表現)を付した.結果の厳密性を担保するために概念について研究者らで検討を繰り返した.
【結果】
興味の再生成と作業の再獲得への志向性に関わる4つの概念が明らかになった.「時間感覚」「感情経験」「障害価値と自己感」「新しい作業に対する信念や希望」の4つであった.「時間感覚」は,<未来に対する閉塞感><自分らしく過ごせていない思い>などが含まれた.「感情経験」は,<満足感><愉快な気持ち><身体に無理がない実感>などが含まれた.「障害価値と自己感」は,<障害は自分の誇り><私にしか表現できない>などが含まれた.「新しい作業に対する信念や希望」は,<閉塞感から解放される期待や賭け><目指す道が決まる>などが含まれた.
【考察】
明らかになった4つの概念は,グループ化されたコーディング内容から,それぞれの要因の達成状況について判断可能な内的経験があると考えられた.「時間感覚」は『自分らしく感じられる時間を持てているか』,「感情経験」は,『快感情や肯定的感覚の持てる経験があったか』,「障害価値と自己感」は,『肯定的障害観と自己の統合がなされているか』,「新しい作業に対する信念や希望」は,『新しい作業に信念や希望が持てるか』であった.また,それらに階層性や順序性があるかはわからなかった.今後は,本研究より得られた仮説を基に対象者を設定し調査を行い,理論化を目指したい.
作業療法において「興味」は重視されており,人間作業モデルでは意志を規定する重要な要素の一つと位置づけられている.「興味チェックリスト」は人間作業モデルを活用した作業療法を展開するうえで欠かせないツールとして日本の作業療法士に幅広く活用されている.また多職種連携による対象者の生活行為向上を目的とした日本作業療法士協会が開発した生活行為向上マネジメントの評価ツールにもなっている.「興味」は,注意を喚起し,保持することに関与しており,時間を占める作業を決める重要な要素とされており,そのため作業療法における基本要素の一つとなっている.しかし生きるなかで興味を抱き習慣化や役割が生じた後に障害や病のために獲得した作業を喪失すると新たな興味を再生成する必要が生ずる.その必要性は障害当事者の視点から「障害受容」の過程として浮き彫ることになると考える.そこで本研究では,重要な作業を障害により喪失した人が,新たな作業に興味を持ち,作業の再獲得への志向性を持つまでの過程に着目し,興味の再生成に関わる要因を明らかにすることを目的とする.
【対象と方法】
対象:障害によって重要な作業を喪失し,新たな作業に興味を持ち,作業の再獲得への志向性を持つ過程について詳細な記述がなされている書籍2冊を対象とした.①小林純也著『脳卒中患者だった理学療法士が伝えたい本当のこと』(三輪書店),②田中順子著『患者と治療者の間で-“意味のある作業”の喪失を体験して-』.
方法:2冊の書籍を通読し,研究目的に適合する箇所を抽出し,1つの意味内容となるようにカード化をした.全部で30カードが生成された.30カードにはそれぞれ内容を簡潔に表すコーディング(<>で表現)をし,KJ法を参考にグループ化をし,グループを代表する概念(「」で表現)を付した.結果の厳密性を担保するために概念について研究者らで検討を繰り返した.
【結果】
興味の再生成と作業の再獲得への志向性に関わる4つの概念が明らかになった.「時間感覚」「感情経験」「障害価値と自己感」「新しい作業に対する信念や希望」の4つであった.「時間感覚」は,<未来に対する閉塞感><自分らしく過ごせていない思い>などが含まれた.「感情経験」は,<満足感><愉快な気持ち><身体に無理がない実感>などが含まれた.「障害価値と自己感」は,<障害は自分の誇り><私にしか表現できない>などが含まれた.「新しい作業に対する信念や希望」は,<閉塞感から解放される期待や賭け><目指す道が決まる>などが含まれた.
【考察】
明らかになった4つの概念は,グループ化されたコーディング内容から,それぞれの要因の達成状況について判断可能な内的経験があると考えられた.「時間感覚」は『自分らしく感じられる時間を持てているか』,「感情経験」は,『快感情や肯定的感覚の持てる経験があったか』,「障害価値と自己感」は,『肯定的障害観と自己の統合がなされているか』,「新しい作業に対する信念や希望」は,『新しい作業に信念や希望が持てるか』であった.また,それらに階層性や順序性があるかはわからなかった.今後は,本研究より得られた仮説を基に対象者を設定し調査を行い,理論化を目指したい.