第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

理論

[PO-1] ポスター:理論 1

2022年9月17日(土) 10:30 〜 11:30 ポスター会場 (イベントホール)

[PO-1-2] ポスター:理論 1作業療法におけるEvidence-based practiceの概念分析

廣瀬 卓哉12丸山 祥1寺岡 睦3京極 真3 (1湘南慶育病院リハビリテーション部,2吉備国際大学大学院保健科学研究科博士後期課程,3吉備国際大学大学院保健科学研究科)

【緒言】
 Evidence-based practice(以下EBP)は,最新の研究成果に基づき,対象者に最適な医療を提供するための行動様式である.作業療法のEBPは,作業の多様な問題点に焦点を当てることから,一般的なEBPの臨床推論や意思決定のプロセスとは異なる特性を持つと考えられている.さらに,作業療法のEBPでは,その専門性に基づいた様々な理論を参照した実践が求められている.つまり,作業療法におけるEBP概念の独自性が考えられる.そのため,作業療法の専門性を反映したEBP概念を明確化することは,作業療法実践や教育の発展のための重要な課題といえる.本研究の目的は,作業療法におけるEBPの概念的基盤を明らかにすることである.
【方法】
 Rodgersの概念分析法を用いた.データ収集は,検索語を用いたデータベース検索を行なった.使用したデータベースはPubMed, MEDLINE,OT seeker,SCOPUSであった. 検索語は"occupational therapy"と"evidence based occupational therapy", "evidence based practice","evidence based medicine", "knowledge translation" を用いた.検索によって得られた文献は合計2082編であった.スクリーニングの結果,43編の文献を分析の対象とした.データ分析は,概念に先立って生じる「先行因子」,概念の特徴を表す「属性」,概念の結果として生じる「帰結因子」の記述を文献から抽出した.その後,抽出したデータをコード化し,カテゴリーに分類した.それらのカテゴリーについて,類似性と差異性を考慮してさらに大きな括りであるテーマに分類した.これらの分析の質を担保するために,分析は第1著者と概念分析の研究経験を有する第2著者で行った.さらに,研究機関に所属する第3著者,第4著者に分析結果についてのスーパーバイズを受けた.
【結果】
 概念分析の結果を<テーマ:カテゴリー>で示す.「先行因子」は<社会的なニーズ:良質な実践への期待/医療へのクライエントの参画>,<医学モデルとの緊張状態:パラダイムの相違/個別性の理解の重要性>,「属性」は<作業療法実践の本質:作業中心/クライエント中心>,<専門職としての技能:最良の実践のための意思決定/多様なエビデンスの統合>,「帰結因子」は<専門能力の発展:最良の実践の実現と追求/エビデンスの集積による学術的な発展>に分類された.概念が用いられていた文脈は,主に臨床実践,教育,政策活動であった.
【考察】
 作業療法におけるEBPは,作業中心,クライエント中心などの作業療法の本質に基づき,多様なエビデンスを統合した実践であることが明らかとなった.これは,作業療法の専門性を中心として,医学モデルを含む様々な領域のエビデンスを柔軟に使用することの有用性を示唆する.また,作業療法におけるEBPは,医療に対する社会的なニーズや,医学モデルとのパラダイムの相違などを経て発展したことが明らかとなった.さらに,最良の実践の実現やエビデンスの集積に帰結することが示された.これらの概念の変易は,作業療法におけるEBPが作業療法の専門性に基づくことの重要性を示している.