[PP-1-1] ポスター:基礎研究 1箸での物体把持動作中の物体の大きさと重さが筋活動に及ぼす影響
【はじめに】作業療法士は,障害手の患者に対し食事に必要な箸操作訓練を行うことがあり,様々な大きさや重さの物体を箸で把持する練習を行う.箸での物体把持には手内在筋や外在筋が関与しており,把持物体の大きさや重さの影響により筋活動が変化すると考えられるが,把持物体の大きさや重さが手内在筋や外在筋に及ぼす影響は明らかではない.
【目的】箸で把持する物体の大きさや重さが手内在筋・外在筋に及ぼす影響を明らかにすること.
【方法】対象は右利き健常成人9名とし,利き手での箸を使用した物体把持課題を5条件(重さ30gで幅1cm,2cm,3cm,または幅2cmで重さ10g,50g),10試行ずつ行った.課題中の母指,示指,中指と箸の動きを三次元動作解析装置で計測し,母指の指節間(IP)と中手指節(MP)関節,示・中指の遠位および近位指節間(DIPおよびPIP)関節,MP関節の屈曲/伸展角度と箸の先端間/後端間比を算出した.また,課題中の筋活動は被験筋を手内在筋の第1虫様筋,第2虫様筋,第3虫様筋,短母指屈筋,短母指外転筋,第1背側骨間筋,第2背側骨間筋,第3背側骨間筋,手外在筋の浅指屈筋,指伸筋,橈側手根屈筋,橈側手根伸筋の12筋とし表面筋電計にて計測した.電極貼付の際には,超音波診断装置で筋腹位置を同定し,虫様筋には直径3mm,その他の筋には直径8mmの電極を貼付した.得られた筋活動電位は平滑化処理の後,二乗平均平方根を算出し,最大随意収縮に対する相対値(%MVC)とした.物体把持中の0.5秒間の平均値を算出し,8回分の平均値を算出した.箸先端間/後端間比,関節角度,筋活動に対して,物体の幅もしくは重さを要因とする一元配置分散分析を行った.有意水準は5%未満とした.本研究は倫理審査委員会の承認を得て実施した.
【結果】箸先端間/後端間比は重さによる変化はなく,物体幅3cm,2cm,1cmの順に1.5,1.1,0.8と有意に小さくなった.物体幅が小さくなると箸先の開きが小さくなった.手指関節角度は母指IP,MP関節で平均1.2°,24.0°,示指DIP,PIP,MP関節で平均28.8°,43.8°,46.6°,中指DIP,PIP,MP関節で平均38.0°,53.6°,49.6°となり,物体幅,重さによる変化はなかった.物体幅の違いによる筋活動はほぼ全ての筋で有意な変化がなかった.物体の重さの違いによる筋活動(10g,30g,50gの順)は,第1虫様筋で24.4%,36.5%,50.5%,第2虫様筋で18.3%,27.8%,38.8%,第3虫様筋で19.4%,27.0%,36.7%,短母指屈筋で21.1%,30.2%,43.8%,短母指外転筋で6.8%,9.5%,15.7%,第1背側骨間筋で14.5%,19.6%,32.1%,第2背側骨間筋で13.7%,19.5%,31.8%,第3背側骨間筋で9.0%,12.8%,19.3%,指伸筋で13.6%,19.5%,26.0%,橈側手根屈筋で5.7%,7.4%,10.3%と有意に増加した.浅指屈筋,橈側手根伸筋の筋活動は有意な変化がなかった.
【考察】物体幅により箸先端間/後端間比は変化したが,手指関節角度と筋活動には変化はなかった.よって,箸での物体把持時に物体幅が筋活動に及ぼす影響は小さいと考えられる.手指関節角度は重さの影響を受けなかったが,物体の重さの増加により手内在筋と一部の手外在筋の筋活動が増加したことから,これらの筋が箸での物体把持時に手指関節肢位を保つために働いたと考えられる.以上より,箸での物体把持時には物体の大きさよりも重さにより筋活動が影響を受けるため,箸での物体把持に必要な筋活動の増加を促すためには物体の大きさより重さの段階づけを行うことが望ましいと考えられる.
【目的】箸で把持する物体の大きさや重さが手内在筋・外在筋に及ぼす影響を明らかにすること.
【方法】対象は右利き健常成人9名とし,利き手での箸を使用した物体把持課題を5条件(重さ30gで幅1cm,2cm,3cm,または幅2cmで重さ10g,50g),10試行ずつ行った.課題中の母指,示指,中指と箸の動きを三次元動作解析装置で計測し,母指の指節間(IP)と中手指節(MP)関節,示・中指の遠位および近位指節間(DIPおよびPIP)関節,MP関節の屈曲/伸展角度と箸の先端間/後端間比を算出した.また,課題中の筋活動は被験筋を手内在筋の第1虫様筋,第2虫様筋,第3虫様筋,短母指屈筋,短母指外転筋,第1背側骨間筋,第2背側骨間筋,第3背側骨間筋,手外在筋の浅指屈筋,指伸筋,橈側手根屈筋,橈側手根伸筋の12筋とし表面筋電計にて計測した.電極貼付の際には,超音波診断装置で筋腹位置を同定し,虫様筋には直径3mm,その他の筋には直径8mmの電極を貼付した.得られた筋活動電位は平滑化処理の後,二乗平均平方根を算出し,最大随意収縮に対する相対値(%MVC)とした.物体把持中の0.5秒間の平均値を算出し,8回分の平均値を算出した.箸先端間/後端間比,関節角度,筋活動に対して,物体の幅もしくは重さを要因とする一元配置分散分析を行った.有意水準は5%未満とした.本研究は倫理審査委員会の承認を得て実施した.
【結果】箸先端間/後端間比は重さによる変化はなく,物体幅3cm,2cm,1cmの順に1.5,1.1,0.8と有意に小さくなった.物体幅が小さくなると箸先の開きが小さくなった.手指関節角度は母指IP,MP関節で平均1.2°,24.0°,示指DIP,PIP,MP関節で平均28.8°,43.8°,46.6°,中指DIP,PIP,MP関節で平均38.0°,53.6°,49.6°となり,物体幅,重さによる変化はなかった.物体幅の違いによる筋活動はほぼ全ての筋で有意な変化がなかった.物体の重さの違いによる筋活動(10g,30g,50gの順)は,第1虫様筋で24.4%,36.5%,50.5%,第2虫様筋で18.3%,27.8%,38.8%,第3虫様筋で19.4%,27.0%,36.7%,短母指屈筋で21.1%,30.2%,43.8%,短母指外転筋で6.8%,9.5%,15.7%,第1背側骨間筋で14.5%,19.6%,32.1%,第2背側骨間筋で13.7%,19.5%,31.8%,第3背側骨間筋で9.0%,12.8%,19.3%,指伸筋で13.6%,19.5%,26.0%,橈側手根屈筋で5.7%,7.4%,10.3%と有意に増加した.浅指屈筋,橈側手根伸筋の筋活動は有意な変化がなかった.
【考察】物体幅により箸先端間/後端間比は変化したが,手指関節角度と筋活動には変化はなかった.よって,箸での物体把持時に物体幅が筋活動に及ぼす影響は小さいと考えられる.手指関節角度は重さの影響を受けなかったが,物体の重さの増加により手内在筋と一部の手外在筋の筋活動が増加したことから,これらの筋が箸での物体把持時に手指関節肢位を保つために働いたと考えられる.以上より,箸での物体把持時には物体の大きさよりも重さにより筋活動が影響を受けるため,箸での物体把持に必要な筋活動の増加を促すためには物体の大きさより重さの段階づけを行うことが望ましいと考えられる.