第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

基礎研究

[PP-1] ポスター:基礎研究 1

2022年9月16日(金) 14:00 〜 15:00 ポスター会場 (イベントホール)

[PP-1-4] ポスター:基礎研究 1回復期リハビリテーション病棟における入院時訪問指導が患者・療法士に与える影響

永井 信洋1牟田 博行1玉村 悠介1松浦 道子1錦見 俊雄2 (1社会医療法人若弘会わかくさ竜間リハビリテーション病院リハビリテーション部,2社会医療法人若弘会わかくさ竜間リハビリテーション病院診療部)

【はじめに】自宅復帰を目標とする入院患者に対し,退院後の生活環境を想定したリハビリテーションは重要とされている.診療報酬改定の経緯も踏まえ,当院の回復期リハビリテーション病棟(以下回リハ病棟)では2020年度より,円滑な自宅復帰を支援するため入院時訪問指導(以下入院時訪問)を実施している.入院時訪問を実施することで患者,療法士へ与える影響について,今回,当院回リハ病棟における退院患者のリハビリテーションアウトカムの検証,また入院時訪問を実施した回リハ病棟所属療法士を対象としたアンケート調査を実施したので,若干の考察を交え報告する.
【対象・方法】研究1(リハビリテーションアウトカム)2020年7月〜2021年6月に自宅退院した当院回リハ病棟患者66名(77歳±10歳,男性45.4%)を対象とし,入院時訪問を実施した訪問実施群36名,入院時訪問非実施であった訪問非実施群30名に分類し,両群の入院時FIM,退院時FIM,回リハ病棟在棟日数,FIM利得(退院時FIM-入院時FIM),FIM効率(FIM利得/回リハ病棟在棟日数)の比較および,FIM効率に影響を与え因子について多重比較検定を実施した.研究2(アンケート調査)2020年7月〜2021年12月に当院回リハ病棟に所属し,入院時訪問を経験した療法士19名(作業療法士8名,理学療法士11名)を対象にアンケート調査を実施し,回答をもって本研究への同意とした.アンケートは8項目とし,内容・方法は①リハビリテーションを進める上で入院時訪問は有効か,②実施に伴う業務の負担を感じるか,③実施前に患者の予後予測をしておくことは重要か,④訪問中の家族とのコミュニケーションは重要か,⑤実施後のリハビリテーションの内容へ影響はあったか,⑥実施後に患者の退院後の生活をより早く意識するようになったか,⑦実施後にリハビリテーションの目標は明確になるか,に関して4件法での選択回答方式と自由回答方式とした.また⑧入院時訪問を行う前に重要と思う評価項目に関しては多肢選択回答方式とした.
【結果】研究1(リハビリテーションアウトカム)訪問実施群と訪問非実施群の比較では年齢や入院時FIM項目に差はなかったが,退院時歩行FIM(6.0±1.7vs4.7±2.2)点,回リハ病棟在棟日数(74.4vs97.0)日,FIM効率(1.0±0.9vs0.5±0.3)において有意な差を認めた.FIM効率を従属変数とした重回帰分析においては入院時訪問の有無,入院時歩行FIMが独立して関係していた.(いずれもp<0.05)研究2(アンケート調査)アンケートの有効回答は率は94.7%であり,属性は作業療法士8名,理学療法士10名,臨床経験年数の平均は4.4年であった.入院時訪問の有効性についてはポジティブな印象をもつ療法士が多かった(83.3%).一方で半数の療法士は実施に伴う計画書作成や報告業務に対する負担を感じていた(50%).実施前の評価項目では患者の予後予測(83.3%),患者のニーズ(66.6%)を重要と考える療法士が多かった.また全ての療法士からは,④訪問中の家族とのコミュニケーション,⑤実施後のリハビリテーション内容への影響,⑥患者の退院後の生活への意識,⑦実施後にリハビリテーションの目標は明確になるかに関してポジティブな回答が得られた.
【考察】研究1では,入院時訪問の実施,入院時歩行FIMはFIM効率の向上に有効である可能性が示唆された.また研究2では,入院時訪問の経験がある療法士は業務負担を感じる一方で,患者の予後予測やニーズを重要と考え,退院後の生活イメージの視点をもち入院時訪問に臨んでいる事が伺えた.回リハ病棟での自宅復帰支援において作業療法士の役割と視点は重要であると共に,入院時訪問はこれらを促していくツールとして活用できる可能性があると考える.