[PP-4-1] ポスター:基礎研究 4反復末梢性磁気刺激と神経筋電気刺激による脊髄反射の変調作用の比較
【はじめに】反復末梢性磁気刺激(rPMS)は中枢神経疾患後の感覚運動障害や痙縮に対する新たな神経リハビリテーション手段として注目されている.rPMSは刺激コイルからパルス磁場を生じることで電磁誘導により筋や神経を脱分極させる.rPMSは,神経筋電気刺激(NMES)と比較して,無痛性であること,深部刺激が可能であること,刺激電極が不要であること等の長所がある(Beaulieu LD & Schneider C, 2015).しかし,rPMSとNMESによる神経変調作用を直接的に比較した研究はほとんどない.
【目的】本研究の目的は,健常者におけるrPMSとNMESによる脊髄反射に対する神経変調の違いを明らかにすることとした.
【方法】健常若年者14名を対象とした.本研究では,下腿三頭筋に対するrPMSおよびNMESの介入を別日に実施した.両介入とも,刺激周波数は20 Hz,刺激時間は200秒間(ON 2秒/OFF 2秒の繰り返し),刺激強度は筋収縮が生じる強度とし,伏臥位にて刺激を実施した.パルス幅は,rPMSが0.35ミリ秒,NMESが0.30ミリ秒とした.各介入の前後には,下腿三頭筋から誘発筋電図を記録した.被験者は安静な伏臥位を保持し,膝窩より経皮的に脛骨神経を電気刺激して腓腹筋外側頭,腓腹筋内側頭,ヒラメ筋からM波およびH波を記録した.電気刺激は持続時間1.0ミリ秒,刺激頻度0.1 Hzとし,M波の最大振幅値(Mmax),H波の最大振幅値(Hmax),H波とM波の最大振幅値の比(Hmax/Mmax)をデータ解析した.統計解析は,各筋のMmax,Hmax,Hmax/Mmaxに対して,介入と時間からなる反復測定二元配置分散分析を行った.有意水準は危険率5%とした.本研究は,演者の所属機関の倫理委員会の承認を得た後,全被験者にインフォームド・コンセントを得て実施した.研究の実施に際しては,被験者の個人情報保護に留意した.
【結果】Mmaxは,腓腹筋外側頭において時間の主効果を認めたが,介入の主効果および交互作用は認めなかった.Hmaxは,腓腹筋外側頭において時間の主効果を認めたが,介入の主効果および交互作用は認めなかった.Hmax/Mmaxは,腓腹筋外側頭およびヒラメ筋において,時間の効果を認めたが,介入の主効果および交互作用は認めなかった.腓腹筋外側頭では,介入前後でMmaxは増大し,Hmaxは減少した.腓腹筋外側頭およびヒラメ筋では,介入前後でHmax/Mmaxは減少した.
【考察】健常者を対象とした下腿三頭筋に対するrPMSおよびNMES後には脊髄反射の興奮性は減弱しており,介入方法による脊髄反射に対する変調効果の大きさに違いはなかった.これまでの研究において,rPMS(Behrens M et al, 2011)やNMES(Grospretre S et al, 2018)が脊髄反射を減弱させることが報告されている.本研究においても,rPMSとNMESともに脊髄反射を減弱させたと考えられる.rPMSやNMESは,1a線維を反復して興奮させることで運動線維へのシナプス伝達効率を変化させた可能性がある.本研究では,rPMSおよびNMESは刺激周波数や刺激時間等の設定を同一にしたため,H反射に対する変調効果には違いが生じなかったと考えられる.今後も,rPMSおよびNMESによる神経変調の差異を検討することで,臨床場面における治療機器の選択の一助になると考えられる.なお,本演題発表に関連するCOIはない.
【目的】本研究の目的は,健常者におけるrPMSとNMESによる脊髄反射に対する神経変調の違いを明らかにすることとした.
【方法】健常若年者14名を対象とした.本研究では,下腿三頭筋に対するrPMSおよびNMESの介入を別日に実施した.両介入とも,刺激周波数は20 Hz,刺激時間は200秒間(ON 2秒/OFF 2秒の繰り返し),刺激強度は筋収縮が生じる強度とし,伏臥位にて刺激を実施した.パルス幅は,rPMSが0.35ミリ秒,NMESが0.30ミリ秒とした.各介入の前後には,下腿三頭筋から誘発筋電図を記録した.被験者は安静な伏臥位を保持し,膝窩より経皮的に脛骨神経を電気刺激して腓腹筋外側頭,腓腹筋内側頭,ヒラメ筋からM波およびH波を記録した.電気刺激は持続時間1.0ミリ秒,刺激頻度0.1 Hzとし,M波の最大振幅値(Mmax),H波の最大振幅値(Hmax),H波とM波の最大振幅値の比(Hmax/Mmax)をデータ解析した.統計解析は,各筋のMmax,Hmax,Hmax/Mmaxに対して,介入と時間からなる反復測定二元配置分散分析を行った.有意水準は危険率5%とした.本研究は,演者の所属機関の倫理委員会の承認を得た後,全被験者にインフォームド・コンセントを得て実施した.研究の実施に際しては,被験者の個人情報保護に留意した.
【結果】Mmaxは,腓腹筋外側頭において時間の主効果を認めたが,介入の主効果および交互作用は認めなかった.Hmaxは,腓腹筋外側頭において時間の主効果を認めたが,介入の主効果および交互作用は認めなかった.Hmax/Mmaxは,腓腹筋外側頭およびヒラメ筋において,時間の効果を認めたが,介入の主効果および交互作用は認めなかった.腓腹筋外側頭では,介入前後でMmaxは増大し,Hmaxは減少した.腓腹筋外側頭およびヒラメ筋では,介入前後でHmax/Mmaxは減少した.
【考察】健常者を対象とした下腿三頭筋に対するrPMSおよびNMES後には脊髄反射の興奮性は減弱しており,介入方法による脊髄反射に対する変調効果の大きさに違いはなかった.これまでの研究において,rPMS(Behrens M et al, 2011)やNMES(Grospretre S et al, 2018)が脊髄反射を減弱させることが報告されている.本研究においても,rPMSとNMESともに脊髄反射を減弱させたと考えられる.rPMSやNMESは,1a線維を反復して興奮させることで運動線維へのシナプス伝達効率を変化させた可能性がある.本研究では,rPMSおよびNMESは刺激周波数や刺激時間等の設定を同一にしたため,H反射に対する変調効果には違いが生じなかったと考えられる.今後も,rPMSおよびNMESによる神経変調の差異を検討することで,臨床場面における治療機器の選択の一助になると考えられる.なお,本演題発表に関連するCOIはない.