[PP-5-1] ポスター:基礎研究 5いわてリハビリテーションセンターにて運転再開支援を行った患者への追跡調査
前回調査との比較と考察
【序論】岩手県では自動車運転が生活範囲の拡大に大きく寄与しており,いわてリハビリテーションセンター(以下,当センター)においても運転再開支援を望む患者は増加傾向にある.2019年に行った調査では,当センター退院後の患者の約4割がヒヤリハットを経験しており,支援体制の再検討の必要性が示唆された.この調査後に,調査結果の掲示や職員間での共有,運転再開支援の流れについての患者説明用資料の整備等を行い,今回再度調査を実施することとした.
【目的】当センター退院後の運転実態について2019年調査時のデータと比較,分析することで,当センターで運転再開支援に関わる職員の振り返りとし,介入時の有益な視点を提供すると共に,患者の安全運転教育に繋げる.
【方法】対象は令和2年4月~令和3年3月に当センターにてドライビングシミュレータ(以下,DS)での評価訓練を含む運転再開支援を受けた者の中で,医師から公安委員会による安全運転相談の指示を受けて情報提供が行われた者183名(男性134名,女性49名).入院中の運転評価は,作業療法士(以下,OT)が神経心理学的検査とDSでの評価訓練及び必要時に指定自動車教習所での実車評価を行い,医師と共に安全な運転再開が可能かを総合的に判断した.退院後の調査は,任意記名式のアンケート用紙を郵送し,協力依頼書で研究の主旨を説明し同意を頂いた方より回答を得た.回答方法は選択式と一部自由記述式とし,質問項目は(1)公安委員会への連絡・相談の有無と結果,(2)運転再開の有無,(3)運転目的,(4)運転頻度と時間,(5)運転再開後の事故,交通違反,運転していてヒヤリとした,あるいは事故にはならなかったが危なかったと感じた場面(以下,ヒヤリハット)の有無,(6)病前の運転との違い,(7)運転時に気を付けている事とし,今回は(1),(2),(5)について分析した.なお,本研究は当センターにおける倫理委員会にて承認を得ている.
【結果】131名から回答を得た(回収率71%,男性92名,女性39名).(1)131名中,公安委員会への連絡・相談を行った者は120名(91%,109名は許可有り.2名は診断書の再提出が求められた.9名は結果未回答)で,未実施者は11名だった.(2)運転再開者は120名(91%)だった.(1)(2)のそれぞれの割合は前回調査時と大きく変わらなかった.(5)運転再開者120名中,事故経験者は3名(2%,内容:ペダルの踏み間違い,駐車時や走行時の接触),交通違反経験者は3人(2%,内容:後部座席のシートベルト未着用,信号無視,一時不停止),ヒヤリハット経験者は38名(31%,内容:凍結路面でのスリップ,標識や人の見落とし,走行車線間違い,等)であった.
【考察】前回の調査と比較して,ヒヤリハット経験者率は約1割減少した(前回41%).ヒヤリハット経験者率が低下した要因として,前回の調査結果を職員間で共有したことで,OTは患者が退院後に経験する可能性のある危険場面を意識した介入が行いやすくなったのではないかと考えられた.また,運転再開支援の流れについての患者説明用資料を運用したことで,順序立てて可視化された説明がOT間で統一され,患者と運転再開支援の流れや運転に必要な能力の共有が出来たと考えられる.以上の二点が患者の安全教育に繋がり,ヒヤリハット経験者率の減少に寄与したのではないかと考えた.今回の結果を再度職員間で共有し,運転再開支援の質のさらなる向上や患者の安全運転教育に役立てていく.また,今後も追跡調査を継続し,OTの介入時の視点や患者の満足度についても調査を実施し,安全な運転再開支援の構築に努めていきたいと考える.
【目的】当センター退院後の運転実態について2019年調査時のデータと比較,分析することで,当センターで運転再開支援に関わる職員の振り返りとし,介入時の有益な視点を提供すると共に,患者の安全運転教育に繋げる.
【方法】対象は令和2年4月~令和3年3月に当センターにてドライビングシミュレータ(以下,DS)での評価訓練を含む運転再開支援を受けた者の中で,医師から公安委員会による安全運転相談の指示を受けて情報提供が行われた者183名(男性134名,女性49名).入院中の運転評価は,作業療法士(以下,OT)が神経心理学的検査とDSでの評価訓練及び必要時に指定自動車教習所での実車評価を行い,医師と共に安全な運転再開が可能かを総合的に判断した.退院後の調査は,任意記名式のアンケート用紙を郵送し,協力依頼書で研究の主旨を説明し同意を頂いた方より回答を得た.回答方法は選択式と一部自由記述式とし,質問項目は(1)公安委員会への連絡・相談の有無と結果,(2)運転再開の有無,(3)運転目的,(4)運転頻度と時間,(5)運転再開後の事故,交通違反,運転していてヒヤリとした,あるいは事故にはならなかったが危なかったと感じた場面(以下,ヒヤリハット)の有無,(6)病前の運転との違い,(7)運転時に気を付けている事とし,今回は(1),(2),(5)について分析した.なお,本研究は当センターにおける倫理委員会にて承認を得ている.
【結果】131名から回答を得た(回収率71%,男性92名,女性39名).(1)131名中,公安委員会への連絡・相談を行った者は120名(91%,109名は許可有り.2名は診断書の再提出が求められた.9名は結果未回答)で,未実施者は11名だった.(2)運転再開者は120名(91%)だった.(1)(2)のそれぞれの割合は前回調査時と大きく変わらなかった.(5)運転再開者120名中,事故経験者は3名(2%,内容:ペダルの踏み間違い,駐車時や走行時の接触),交通違反経験者は3人(2%,内容:後部座席のシートベルト未着用,信号無視,一時不停止),ヒヤリハット経験者は38名(31%,内容:凍結路面でのスリップ,標識や人の見落とし,走行車線間違い,等)であった.
【考察】前回の調査と比較して,ヒヤリハット経験者率は約1割減少した(前回41%).ヒヤリハット経験者率が低下した要因として,前回の調査結果を職員間で共有したことで,OTは患者が退院後に経験する可能性のある危険場面を意識した介入が行いやすくなったのではないかと考えられた.また,運転再開支援の流れについての患者説明用資料を運用したことで,順序立てて可視化された説明がOT間で統一され,患者と運転再開支援の流れや運転に必要な能力の共有が出来たと考えられる.以上の二点が患者の安全教育に繋がり,ヒヤリハット経験者率の減少に寄与したのではないかと考えた.今回の結果を再度職員間で共有し,運転再開支援の質のさらなる向上や患者の安全運転教育に役立てていく.また,今後も追跡調査を継続し,OTの介入時の視点や患者の満足度についても調査を実施し,安全な運転再開支援の構築に努めていきたいと考える.