第56回日本作業療法学会

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ポスター

基礎研究

[PP-5] ポスター:基礎研究 5

Sat. Sep 17, 2022 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (イベントホール)

[PP-5-3] ポスター:基礎研究 5職種における車椅子観察点の違い

回復期リハビリテーション病棟での下肢位置に着目したアンケート調査

浮田 徳樹1相原 彩香1 (1東北福祉大学健康科学部リハビリテーション学科)

【背景と目的】
車椅子は本来移動を主目的とした福祉用具であるが,日々の生活行為の中で移動を主目的としない【イス】として用いられ,使用場面が長時間に及ぶ場合もある.その際,フットサポートから足を床面や足台に移す指導や援助が散見されるが,多職種がチームを組んで介入を実施する回復期リハビリテーション病棟(以下,回リハ病棟)では,各医療職種がどの程度車椅子利用者の足の位置取りに着目しているのかは不明瞭である.本研究では,車椅子利用者の足の位置取りや足台利用に関する,異なる医療職種が持つ専門的視点の共通性や独自性またはそれらの関連性を,アンケート調査を通じ探索的に明らかにすることを目的とした.
【方法】
北日本エリアの1道6県の回リハ病棟を有する145施設に対し,看護師(Nrs),介護士等(CW),理学療法士(PT),作業療法士(OT),言語聴覚士(ST)を対象とし,全14問の設問にてオンライン調査を実施した.得られた回答データは,カイ二乗適合度検定またはカイ二乗独立性検定を用いて分析した.いずれの統計解析時も,有意差が認められた場合,残差または調整済み残差を用いて,回答の偏りや頻度を判定した.なお,本研究は筆頭者所属施設の倫理委員会承認を得て実施した.
【結果】
45施設(回収率31%)より計400回答を得た.職種内訳はNrs76回答・CW45回答・PT141回答・OT97回答・ST41回答だった.車椅子は【イス】として用いられる場面が,食事・レクリエーション・離床目的で多いこと,【イス】利用時の足台利用頻度は低いこと,足元への介入必要性を意識し実践傾向に偏る職種と,必要性を意識せず介入も未実施傾向に偏る職種に分岐することが明らかとなった.OTは【イス】利用場面において,高頻度で足元介入を実施し,車椅子から足を下ろす必要性を感じている方向へ回答が偏った.一方,NrsおよびCWは【イス】利用場面において,足元介入への機会は少なく,必要性は意識していない方向へ回答が偏った.PTは中立的回答であり,STは回答に偏りはなかった.車椅子の観察点は,Nrsは「座位耐久性」,CWは「タイヤ空気圧や車椅子の劣化具合」,PTは「骨盤や足の位置」,OTは「全体的な見た目や座位活動性」,STは「頭や体幹の位置」が上位の回答となった.
【考察】
回リハ病棟では,車椅子は【イス】としても利用される場面が多いが,【イス】利用場面における車椅子利用者の足元への介入は,職種によって実践や意識に差があることが示唆された.OTは先行研究において他職種よりもシーティングに関しての問題意識が高い可能性が示唆されており,本結果とも一致している.医政局通知におけるOTを積極的に活用することが望まれる事項には,車椅子を含む「福祉用具の使用等に関する訓練」が明記され,他記載項目である「作業耐久性の向上」や「退院後の住環境への適応訓練」との関連からも,OTは車椅子を含む福祉用具の包括的な評価・介入が求められる職種であり,アンケート回答内容にも偏りが出た可能性があると考える.一方,ICF記載シートを用いた先行研究では,NrsやCWは他職種に比較し,対象者の状態を満遍なく記載するため,全項目に渡り均等化する傾向が述べられている.対象者の近くで病棟内生活を包括的に捉える中で,観察点の優先項目は他方にあり,足元への介入意識は低くなっている可能性が考えられる.多職種連携によるチーム医療が展開される回リハ病棟では「分業」と「協業」の必要性が示唆されており,車椅子に関連する事項においても,職種毎の視点を共有し,対象者へ向けた介入を試みることが重要と考えられる.