[PP-5-4] ポスター:基礎研究 5制御焦点理論における促進焦点と防止焦点の関係性についての研究.
【はじめに】
作業療法において動機づけは作業療法の効果に影響を及ぼす重要な因子である.この動機づけを高めるために作業療法ではポジティブフィードバックがよく利用されている.ポジティブフィードバックが動機づけを高める理由として,褒められることによって生じる快の感情が動機づけを高めると考えられている.われわれの動機づけは,快の感情をもとめる「利得接近」と不快の感情を避ける「損失回避」の影響を受けるといわれている.そして,利得接近に重点を置く場合を促進焦点と呼び,損失回避に重点を置く場合を防止焦点と呼び,それらをまとめて制御焦点と呼ばれている.また,動機づけに影響を与えるポジティブフィードバックの効果も制御焦点の違いによって異なるといわれている.作業療法においては,対象者の制御焦点が促進焦点優位なのか防止焦点が優位なのかを理解することは,対象者の動機づけを高めるために重要である.しかしながら,人間には促進焦点と防止焦点が混在しており,その関係性を明らかにする必要がある.そこで今回は,個人における促進焦点と防止焦点の状況について調査した.
【方法】
対象は,研究の目的を理解し参加の承諾を示した大学生95名である.参加者には研究参加の自由と参加取りやめの自由を説明し書面による同意を得た.なお,本研究は弘前大学大学院保健学研究科倫理委員会の承認を得て実施された.
制御焦点は,促進予防焦点尺度邦訳版(PPFS-J)を用いて評価した.PPSJはLockwoodらによって開発されたPPSを尾崎らが翻訳した,利得接近志向と損失回避志向の強さを計測する尺度である.利得接近志向尺度8項目,損失回避志向尺度8項目で構成され,利得接近志向が強い場合には促進焦点が強く,損失回避志向が強い場合には防止焦点が強いと判定される.被検者は,このPPFS-Jの質問に答えるよう要求された.
【結果】
今回の利得接近志向の平均得点は37±6,損失回避志向の平均得点は38±8であった.利得接近志向得点の中央値で2群に分けたときの各群の損失回避志向得点は,利得接近志向の高い群が25±7,低い群が29±7であり,利得接近志向が高い群の損失回避志向得点は利得接近志向が低い群よりも高い結果となった(p<0.01).同様に損失回避志向得点の中央値で2群に分けたときの各群の利得接近志向得点は,損失回避志向の高い群が36±6,低い群が38±6であり,損失回避志向が高い群の利得接近志向得点は損失回避志向が低い群よりも高い傾向を示した(p<0.1).また,利得接近志向得点と損失回避志向得点の間には有意な負の相関が認められた(r=-0.3,p<0.05).
【考察】
人間の行動は快を求め不快を回避するという快感原則に従って選択される.制御焦点理論は体験によって快感を得られたときに快を認知するのか,不快感覚を回避することによって快を認知するのかという快の認識の仕方の違い示している.今回の研究は,促進焦点と防止焦点がどのような関係を有するのかということについて調査した.その結果,利得接近得点の高い人は損失回避得点が低く,利得接近得点の低い人は損失回避得点が高い傾向を示した.また,利得接近志向得点と損失回避志向得点との間に負の相関が認められたことから,個人の制御焦点として促進焦点と防止焦点の両方が存在しているが,一方が高ければ他方が低い傾向があることを示した.このことから,動機づけを高めるための働きかけを行う際に,対象者の制御焦点が促進焦点優位か防止焦点優位かを考慮する必要があることを示唆している.
作業療法において動機づけは作業療法の効果に影響を及ぼす重要な因子である.この動機づけを高めるために作業療法ではポジティブフィードバックがよく利用されている.ポジティブフィードバックが動機づけを高める理由として,褒められることによって生じる快の感情が動機づけを高めると考えられている.われわれの動機づけは,快の感情をもとめる「利得接近」と不快の感情を避ける「損失回避」の影響を受けるといわれている.そして,利得接近に重点を置く場合を促進焦点と呼び,損失回避に重点を置く場合を防止焦点と呼び,それらをまとめて制御焦点と呼ばれている.また,動機づけに影響を与えるポジティブフィードバックの効果も制御焦点の違いによって異なるといわれている.作業療法においては,対象者の制御焦点が促進焦点優位なのか防止焦点が優位なのかを理解することは,対象者の動機づけを高めるために重要である.しかしながら,人間には促進焦点と防止焦点が混在しており,その関係性を明らかにする必要がある.そこで今回は,個人における促進焦点と防止焦点の状況について調査した.
【方法】
対象は,研究の目的を理解し参加の承諾を示した大学生95名である.参加者には研究参加の自由と参加取りやめの自由を説明し書面による同意を得た.なお,本研究は弘前大学大学院保健学研究科倫理委員会の承認を得て実施された.
制御焦点は,促進予防焦点尺度邦訳版(PPFS-J)を用いて評価した.PPSJはLockwoodらによって開発されたPPSを尾崎らが翻訳した,利得接近志向と損失回避志向の強さを計測する尺度である.利得接近志向尺度8項目,損失回避志向尺度8項目で構成され,利得接近志向が強い場合には促進焦点が強く,損失回避志向が強い場合には防止焦点が強いと判定される.被検者は,このPPFS-Jの質問に答えるよう要求された.
【結果】
今回の利得接近志向の平均得点は37±6,損失回避志向の平均得点は38±8であった.利得接近志向得点の中央値で2群に分けたときの各群の損失回避志向得点は,利得接近志向の高い群が25±7,低い群が29±7であり,利得接近志向が高い群の損失回避志向得点は利得接近志向が低い群よりも高い結果となった(p<0.01).同様に損失回避志向得点の中央値で2群に分けたときの各群の利得接近志向得点は,損失回避志向の高い群が36±6,低い群が38±6であり,損失回避志向が高い群の利得接近志向得点は損失回避志向が低い群よりも高い傾向を示した(p<0.1).また,利得接近志向得点と損失回避志向得点の間には有意な負の相関が認められた(r=-0.3,p<0.05).
【考察】
人間の行動は快を求め不快を回避するという快感原則に従って選択される.制御焦点理論は体験によって快感を得られたときに快を認知するのか,不快感覚を回避することによって快を認知するのかという快の認識の仕方の違い示している.今回の研究は,促進焦点と防止焦点がどのような関係を有するのかということについて調査した.その結果,利得接近得点の高い人は損失回避得点が低く,利得接近得点の低い人は損失回避得点が高い傾向を示した.また,利得接近志向得点と損失回避志向得点との間に負の相関が認められたことから,個人の制御焦点として促進焦点と防止焦点の両方が存在しているが,一方が高ければ他方が低い傾向があることを示した.このことから,動機づけを高めるための働きかけを行う際に,対象者の制御焦点が促進焦点優位か防止焦点優位かを考慮する必要があることを示唆している.