第56回日本作業療法学会

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管理運営

[PQ-1] ポスター:管理運営 1

2022年9月16日(金) 13:00 〜 14:00 ポスター会場 (イベントホール)

[PQ-1-1] ポスター:管理運営 1リハビリテーション専門職者におけるTime Pressure-Kiken Yochi Training (TP-KYT)の構成概念妥当性の検討

木下 亮平1大浦 智子2有久 勝彦3松下 航3宮口 英樹4 (1大阪人間科学大学,2奈良学園大学,3国際医療福祉大学,4広島大学大学院)

【序論】医療安全管理体制の構築に向けた取り組みは,病院・施設で各々実施している.その研修・教育プログラムには,危険予知トレーニング(以下,KYT)を取り入れていることが多い.KYTで使用される危険場面は,意図的に危険状況を設定した場面や危険場面を模擬的に再現した場面を,各医療専門職の専門性に合わせて作成する必要があり,統一した場面設定が難しい.我々は,リハビリテーション専門職者が臨床場面でよく経験する医療事故である,転倒・転落の危険場面を使用した,危険予知能力を測定できる,Time Pressure-Kiken Yochi Training 効果測定システム(以下,TPKYT)を開発してきた.しかしながら,TP-KYTは,内容的妥当性を確認しているが,構成概念妥当性の検証は未実施のままである.リハビリテーション専門職者を対象とした危険予知能力の概念をTPKYTで捉えることができれば,医療安全の強化を図る,評価・教育プログラムを考案する情報として応用することが期待できる.
【目的】リハビリテーション専門職者を対象とした,TP-KYTの構成概念妥当性(因子的妥当性)を検証する.
【方法】対象は,リハビリテーション専門職の資格を有する,作業療法士105名,理学療法士79名,言語聴覚士8名の計192名とした.対象者の属性は,平均年齢31.4±6.5歳,男性105名,女性87名,資格経験月数92.3±68.4カ月であった.TP-KYTは,転倒・転落の危険が潜むイラストを観察して,気づいた危険項目を列挙し,列挙した危険内容に基づき重みづけ得点を配点する.各場面得点は,場面①5項目85点,場面②5項目95点,場面③5項目80点,場面④5項目75点,場面⑤5項目90点で,5場面24項目で構成され,0~425点の得点範囲になる.点数が高いほど,危険予知能力が高いことを示すことができる.本研究では,各場面得点を使用して,TP-KYTの単純構造1因子5場面の仮説構成概念(因子的妥当性)を検討するために確証的因子分析を実施した.モデル適合度の指標にはGoodness of Fit Index(以下,GFI),Adjusted Goodness of Fit Index(以下,AGFI),Root Mean Square Error of Approximation(以下,RMSEA)を用いた.モデル適合度の基準は,GFI>0.95,AGFI>0.90,RMSEA<0.08とした.なお,統計ソフトは,IBM SPSS Statistics ver.27およびAMOS ver.27を用い,有意水準は5%とした.本研究は,倫理審査委員会の承認を受け実施した(14-Ifh-08).
【結果】1因子5場面の確証的因子分析の結果において,因子から各場面へのパスは,場面①③④⑤が0.30~0.69と有意な標準化係数を示したが(p<0.05),場面②のみ有意な標準化係数を得ることができなかった(p=0.40).モデル適合度は,GFI=0.984,AGFI=0.951,RMSEA=0.054であった.
【考察】TP-KYTの1因子5場面の適合度は,全て基準を超えていて高かった.しかしながら,場面②が有意なパスとならなかった.場面②は,左片麻痺の患者がベッド横で車いす座位をとっている設定であり,危険項目として,「足底が床面に接地していない」,「L字柵の角度が開いている」など5項目がある.推測の域は超えないものの,これらの項目の得点分布に偏りが生じた可能性があり,有意なパスとならなったと考える.今後は,高次因子モデルの検討や場面②を削除した1因子4場面の分析を実施することで,TP-KYTの妥当性の検証を進めたい.その上で,医療管理体制強化に向けたリハビリテーション専門職者の危険予知能力の評価法の確立と教育プログラムを構築していく.