第56回日本作業療法学会

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管理運営

[PQ-2] ポスター:管理運営 2

2022年9月16日(金) 16:00 〜 17:00 ポスター会場 (イベントホール)

[PQ-2-3] ポスター:管理運営 2当院回復期リハビリテーション病棟退院後の健康関連QOLを改善させる因子

佐野 哲也12泉 良太1西郷 諒人2坪井 歩2宮内 良治2 (1聖隷クリストファー大学リハビリテーション学部作業療法学科,2医療法人弘遠会 すずかけヘルスケアホスピタルリハビリテーション技術部)

【背景と目的】
 回復期リハビリテーション病棟(回リハ病棟)退院後のADLとIADL(Mutai,2016),ADLと健康関連QOL(以下HRQOL)(Kyung,2014)には,正の相関関係が報告されている.また回リハ病棟の退院支援は,退院後の活動範囲拡大を意図した指導がADLの維持・改善に寄与すると報告されている(久掘ら,2019).本研究の目的は,回リハ病棟退院時から退院後3ヶ月までのHRQOL,ADL,IADL,活動範囲の経時的変化を明らかし,HRQOLを改善させる因子について検討し,対象者に合わせたより効果的な退院支援を検討することである.
【方法】
 対象は2019年12月からの1年間で当院回リハ病棟に在宅復帰を目標に入院し,研究の同意が得られた者とした.縦断的に退院時,退院後3ヶ月(退院後:郵送と電話連絡にて調査)で実施した.調査項目の尺度はHRQOL(EQ-5D-5L:-0.025-1.000),ADL(FIM:18-126点),IADL(FAI:0-45点),活動範囲(LSA:0-120点)を用いた.基本属性は,同居人数,在院日数,認知機能(退院時MMSE:0-30点),実績指数(回リハ病棟でのリハビリによる改善の程度を示す指標)を調査した.分析は,2つの時期の経時的変化をWilcoxonの符号付き順位検定,2つの時期でのHRQLの関連因子分析の為に重回帰分析を用いて従属変数をEQ-5D-5L,独立変数をFIM,FAI,LSA,同居人数,在院日数,退院時MMSE,実績指数の7項目とし,有意水準は5%とした.尚,本研究は当院倫理委員会の承認を受けて実施し,開示すべきCOI関係にある企業等はない.
【結果】
 分析対象は,同意が得られた患者105名のうち,本人回答が得られた76名(脳血管疾患39名,運動器疾患37名)とした.EQ-5D-5L(退院時,退院後:0.788±0.167,0.702±0.200),FIM(点)は(110.4±12.6,116.7±14.1), FAI(点)は(3.7±4.4,15.0±9.8), LSA(点)は(14.7±8.9,58.1±30.1)であった.基本属性では,同居人数は3.1±1.4名,在院日数は51.8±30.2日,退院時MMSEは25.8±3.6点,実績指数は63.6±36.3であった.退院時と退院後の経時的変化は, EQ-5D-5Lは有意に低下し, FIM,FAI,LSAは有意に改善した.EQ-5D-5Lに影響を及ぼす因子として,退院時ではFIM(調整済みR2乗:0.213),在院日数(0.262),退院後ではFIM(0.521),LSA(0.590),FAI(0.607)が採択された.
【考察】
 回リハ病棟退院時と退院後でHRQOL・ADL・IADL・活動範囲の経時的変化と,各時期でのHRQOLを改善させる因子を明らかにした.退院時と退院後では,HRQOLは低下し,ADL,IADL,活動範囲は改善した.退院時のHRQOLを改善させる因子はADLと在院日数,退院後ではADL,IADL,活動範囲であった.入院中では活動範囲とIADLは制限される環境であること,ADLを中心とした介入が影響し.退院後ではADLのみならず,IADL(役割など)や活動範囲に焦点を当てた支援や介入がHRQOL改善に寄与することが考えられる.本研究では,退院後3か月後でもADLは改善したがHRQOLは低下していたことから,退院後のHRQOL向上には,退院支援にADLに加えてIADLと活動範囲の向上に着目した検討の必要性が示唆された.