第56回日本作業療法学会

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ポスター

管理運営

[PQ-3] ポスター:管理運営 3/援助機器 2

2022年9月17日(土) 14:30 〜 15:30 ポスター会場 (イベントホール)

[PQ-3-1] ポスター:管理運営 3急性期における院内デイケアの取り組みとその効果について

並木 千裕1大出 幸子2阿部 幸太1小貫 早希1野口 麻礼1 (1聖路加国際病院リハビリテーション科,2聖路加国際大学 公衆衛生大学院)

はじめに 当院は急性期病院であり,高頻度にみられる症状として治療や日常生活に支障をきたす,せん妄が挙げられる.当院ではせん妄予防策のひとつに多職種と共同して院内デイケアを実施している.急性期病院でのデイケアによって,有意にせん妄症状の改善がみられたことが既知であるが,デイケアへの複数回参加が前提であり,平均在院日数が短い急性期病院において複数回の参加は実現困難な場合が多い.本研究の目的は急性期病院における単回の院内デイケア実施がせん妄寛解に寄与するかを検討することである.なお,本研究は対象者の保護には十分注意して行い,聖路加国際大学の研究倫理審査委員会の承認を得て実施した.
方法 対象者は当院入院患者で2017年~2020年の院内デイケアへ参加候補となった患者である.後ろ向きコフォート研究で,評価項目はDelirium Screening Tool (以下,DST)と不穏時・不眠時の頓用薬の使用量とした.デイケア介入群と何らかの理由でキャンセルとなったものを対照群とし,統計学的解析は,デイケアの効果への影響を及ぼすと考えられる患者背景と病状による重症度を極力そろえるためCharlson Comorbidity Index(以下,CCI),入院時のDSTを使用してプロペンシティスコアを算出し,プロペンシティスコアを調整因子として,各々のアウトカムについて分析した.DSTは二項ロジスティック回帰分析で,不穏時・不眠時の頓用薬の使用量については線形回帰分析を行い,p-value<0.05をもって有意差ありと判定した.また,介入群のデイケア参加時の記録から,「デイケアプログラムにおける集団活動での反応と効果」について質的内容分析を行った.
結果 分析結果として,適格基準を満たした282名のうち,院内デイケア介入群は139名,対照群は143名であった.介入群は,DST項目の「現実感覚の低下」を防ぐ可能性が示唆された.また,頓用薬の使用量については対照群に比べて介入群で減少がみられた.質的内容分析については【周囲の刺激によって反応が引き出され,援助によって活動が広がる】【集団の場を意識して自身を表現し,他者交流をはかる】【周囲を気にかけ,援助し,場づくりを担う】と大きくは3つの側面が示され,様々な患者のレベルに応じた反応と集団の場における相互作用が明らかとなった.
考察 単回でのデイケアは,せん妄寛解に関する評価項目のうち,「せん妄の現実感覚の低下」を防ぐ可能性が示唆された.また,不穏時・不眠時の頓用薬の使用量については対照群に比べて介入群で減少がみられていた.質的データからはデイケアでは様々なレベルの参加者がおり,活発な場は能動性の低い参加者の刺激となり,能動性や交流が生まれ,集団適応レベルの高い参加者は他者を援助し,場を盛り上げることで参加者は役割を担い,さらに場が活性化していくといった参加者同士が相互に作用していた.これらの結果から,当院のような在院日数の短い急性期病院において,単回であってもデイケアを実施することは急性期病院でのせん妄の予防・改善に寄与できると考える.