第56回日本作業療法学会

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ポスター

管理運営

[PQ-3] ポスター:管理運営 3/援助機器 2

2022年9月17日(土) 14:30 〜 15:30 ポスター会場 (イベントホール)

[PQ-3-3] ポスター:管理運営 3当院における精神科リエゾンチーム対象者の傾向と課題についての検討

加賀美 開1細谷 倫子2千田 聡明1林 正喜1三島 和夫2 (1秋田大学医学部附属病院リハビリテーション部,2秋田大学大学院医学系研究科医学専攻病態制御医学系精神科学講座)

【序論】当院では2020年1月より精神科リエゾンチーム加算の算定を開始した.2020年5月からは作業療法士1名を専任従事者として配置している.対象者を「原則として他院精神科通院中に当院へ身体疾患のために入院を要した者」と設定しチームが最も高いパフォーマンスを発揮できる対象者の数を模索している.精神科リエゾンチームに対するニーズは多様であり,服薬調整,支持的な関わり,気分転換,身体疾患に対する配慮など多職種で構成されるリエゾンチームだからこそ対応できる点が多い.当院では週1回のカンファレンス,回診に加え個別での往診,個別作業療法も実施している.個別作業療法はチーム介入の一貫として行い,対象者のニーズに柔軟に対応している.当院での精神科リエゾンチームの実践からその傾向と課題を検討した.
【目的】当院での精神科リエゾンチームでの実践を後ろ向きに検討した.当院での実践の傾向と課題が精神科医療における個別作業療法の必要性,有効性を示す可能性があると考え報告する.
【方法】精神科リエゾンチーム加算算定開始から2年間の対象者のデータを抽出し,後ろ向きに検討した.基本情報として性別,年齢,在院日数,精神疾患,依頼科を抽出した.加えて介入開始時と終了時のGAF尺度,往診,作業療法の有無,回数を検討した.対象者には介入前に精神科リエゾンチームの目的を書面,口頭にて伝え同意を得ている.
【結果】対象は67名(男性29名,女性38名)だった.平均年齢は61.6±14.6歳で平均在院日数は38.1±41.8日(最長272日,最短4日)だった.依頼科は整形外科が最も多く8名,次いで耳鼻咽喉科,消化器外科が6名,心臓血管外科が5名だった.その他の幅広い科からの依頼もあった.対象精神疾患では統合失調症が最も多く24名,次いで双極性障害が8名,うつ病が7名,せん妄が6名,認知症が5名だった.少数だが適応障害,睡眠障害等も対象だった.GAF尺度は介入開始時が43.3±7,介入終了時が43.6±7.5だった.一人あたりの平均回診回数は3.9±4.5回であり最多は32回,最少は1回だった.個別での往診を実施したのは14名で平均実施回数は2.5±1.8回で最多は6回,最少は1回だった.往診の目的は主に医師による服薬調整のためだった.個別作業療法を実施したのは16名で平均実施回数は6.6±6.8回であり最多は29回,最少は1回だった.個別作業療法の目的は身体機能の維持,気分転換,認知機能の賦活など多岐に渡り実施時間も対象者に応じて異なっていた.また個別作業療法を実施した群としなかった群で在院日数を比較すると有意に実施した群の入院期間が長かった.
【考察】依頼科の傾向については手術を伴う科が多い傾向にあった.手術前後での服薬中止のために調整を余儀なくされたケースが多かったためと考えられる.対象となった精神疾患についても継続的な服薬を要するケースが多い傾向にあった.GAF尺度については大きな変化を認めなかったが精神科病棟での管理を要しない程度に精神状態が安定していたことが要因として考えられる.またチームの介入により精神状態を維持できた結果でもある.個別作業療法については対象者自身のニーズから実施することが多かったため実施数は増えなかったがチームからの働きかけにより実施数を増やすことも可能であると考える.実施群の入院期間の延長は在院期間が長引くほどに作業療法ニーズが高まることを示唆している.
【今後の課題】精神科リエゾンチームの対象者の多くは個別対応を要している.限られたチーム活動時間の中での効果的な関わり方については今一度検討が必要である.