[PR-1-1] ポスター:教育 1作業療法士学生の臨床実習におけるCOVID-19が与える影響について
リスク予測能力に着目した3年間の縦断研究
[序論]
昨今の社会情勢として,医学教育はCOVID-19の流行に伴い世界中で,影響を受けており,作業療法士学生に関しても,病院内等で実施される臨床実習が中止になるケースが増加してきている.作業療法士学生にとって臨床実習が実施出来ないことによる影響は様々なことが考えられるが,本研究では,臨床実習実施の有無がリハビリテーション職の医療事故として最も一般的である転倒におけるリスク予測能力に与える影響を明らかにすることを目的として研究を実施した.
[方法]
対象は,国際医療福祉大学福岡保健医療学部の作業療法士学生40名であり,対象者には口頭及び書面にて同意を得た上で研究を実施した.リスク予測能力に関する評価ツールとしてTime PresureKiken Yochi Training効果判定システム(以下:TP-KYT)を初学年時と最終学年時の計2回実施し,最終学年時に関しては,臨床実習を既に経験した群(臨床実習群)と臨床実習を経験したことがない群(未経験群)に分類をした後に実施した.分析方法は,初学年時と最終学年時のTP-KYTの合計点について,時間的要因(初学年時と最終学年時),群間要因(臨床実習群と未経験群)の2要因による2元配置分散分析を危険率5%で行った.また,時間的要因(初学年時と最終学年時)と群間要因(臨床実習群と未経験群)の4群それぞれを独立した群と捉え,各群においてBonferroniの多重比較検定を実施した.尚,本研究は,国際医療福祉大学倫理審査委員会の承認を得て実施したものである(承認番号:14-Ifh-08).
[結果]
2要因による2元配置分散分析の結果,TP-KYTの合計点において,時間的要因(初学年時と最終学年時)と群間要因(臨床実習群と未経験群)で交互作用が認められた.(p<.001)臨床実習群では,TP-KYTの下位項目と合計点全てにおいて,初学年時から最終学年時にかけて有意に点数の向上を認めたのに対して,未経験群では,Scene 2(patient transfer from the bed)とScene 5(patienttransfer from the kitchen),合計点でのみ有意に点数の向上を認める結果となった.また,2群間での最終学年時におけるTP-KYTの結果に関する分析では,Scene 3(patient transfer to the toilet)と合計点で臨床実習群において有意に点数が高い結果となった.(Scene 3:p=.041,合計点:p<.01)
[考察]
本結果から,作業療法士学生は臨床実習実施の有無に関わらず,初学年時から最終学年時にかけてリスク予測能力は一定の向上を認めたが,2群間の比較を行うと,臨床実習群でよりリスク予測能力の向上を認める結果となった.これは,臨床実習が実施出来ないことにより,実際の医療現場で実践する機会が失われることはもちろん,臨床能力の一つでもある患者の転倒に関するリスク管理を学習する機会が失われることで起こる弊害であると言える.リスク認知に関係する因子は,Cognitivefactors,Affective factors,Individual factors,Contextual factorsに分類される.学内における講義を中心とした教育は,これら因子の中のCognitive factorsを担保することが出来るが,その他因子に関しては,実際の医療現場で臨床実習を実施することでしか,担保することが出来ず,臨床実習群でよりリスク予測能力の向上を認める結果になったのではないかと考える.本研究の限界として,臨床実習群は全て身体障害を対象とした病院・施設にて臨床実習を実施しているものの,各実習先の特色は様々で教育内容にも違いあることが予想されるが,詳細な実習内容に関しては,調査が出来ていない.今後はこれらの限界点を考慮しつつ,さらなる検討を実施していく必要があると考える.
昨今の社会情勢として,医学教育はCOVID-19の流行に伴い世界中で,影響を受けており,作業療法士学生に関しても,病院内等で実施される臨床実習が中止になるケースが増加してきている.作業療法士学生にとって臨床実習が実施出来ないことによる影響は様々なことが考えられるが,本研究では,臨床実習実施の有無がリハビリテーション職の医療事故として最も一般的である転倒におけるリスク予測能力に与える影響を明らかにすることを目的として研究を実施した.
[方法]
対象は,国際医療福祉大学福岡保健医療学部の作業療法士学生40名であり,対象者には口頭及び書面にて同意を得た上で研究を実施した.リスク予測能力に関する評価ツールとしてTime PresureKiken Yochi Training効果判定システム(以下:TP-KYT)を初学年時と最終学年時の計2回実施し,最終学年時に関しては,臨床実習を既に経験した群(臨床実習群)と臨床実習を経験したことがない群(未経験群)に分類をした後に実施した.分析方法は,初学年時と最終学年時のTP-KYTの合計点について,時間的要因(初学年時と最終学年時),群間要因(臨床実習群と未経験群)の2要因による2元配置分散分析を危険率5%で行った.また,時間的要因(初学年時と最終学年時)と群間要因(臨床実習群と未経験群)の4群それぞれを独立した群と捉え,各群においてBonferroniの多重比較検定を実施した.尚,本研究は,国際医療福祉大学倫理審査委員会の承認を得て実施したものである(承認番号:14-Ifh-08).
[結果]
2要因による2元配置分散分析の結果,TP-KYTの合計点において,時間的要因(初学年時と最終学年時)と群間要因(臨床実習群と未経験群)で交互作用が認められた.(p<.001)臨床実習群では,TP-KYTの下位項目と合計点全てにおいて,初学年時から最終学年時にかけて有意に点数の向上を認めたのに対して,未経験群では,Scene 2(patient transfer from the bed)とScene 5(patienttransfer from the kitchen),合計点でのみ有意に点数の向上を認める結果となった.また,2群間での最終学年時におけるTP-KYTの結果に関する分析では,Scene 3(patient transfer to the toilet)と合計点で臨床実習群において有意に点数が高い結果となった.(Scene 3:p=.041,合計点:p<.01)
[考察]
本結果から,作業療法士学生は臨床実習実施の有無に関わらず,初学年時から最終学年時にかけてリスク予測能力は一定の向上を認めたが,2群間の比較を行うと,臨床実習群でよりリスク予測能力の向上を認める結果となった.これは,臨床実習が実施出来ないことにより,実際の医療現場で実践する機会が失われることはもちろん,臨床能力の一つでもある患者の転倒に関するリスク管理を学習する機会が失われることで起こる弊害であると言える.リスク認知に関係する因子は,Cognitivefactors,Affective factors,Individual factors,Contextual factorsに分類される.学内における講義を中心とした教育は,これら因子の中のCognitive factorsを担保することが出来るが,その他因子に関しては,実際の医療現場で臨床実習を実施することでしか,担保することが出来ず,臨床実習群でよりリスク予測能力の向上を認める結果になったのではないかと考える.本研究の限界として,臨床実習群は全て身体障害を対象とした病院・施設にて臨床実習を実施しているものの,各実習先の特色は様々で教育内容にも違いあることが予想されるが,詳細な実習内容に関しては,調査が出来ていない.今後はこれらの限界点を考慮しつつ,さらなる検討を実施していく必要があると考える.