第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

教育

[PR-1] ポスター:教育 1

2022年9月16日(金) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (イベントホール)

[PR-1-4] ポスター:教育 1アイトラッカーを用いた危険予測における療法士と学生の視線行動の比較

周辺視に着目して

大町 昭彦1本多 亮平1有久 勝彦2 (1公益社団法人 福岡医療団 千鳥橋病院,2国際医療福祉大学福岡保健医療学部)

【序論】医療現場に必要な能力の一つとして危険を予知し未然に防ぐことが求められる.しかし,コロナ禍における臨床実習では,実際の患者を相手に危険を予測する場面が制限され,経験できる場面が少なくなっている.危険予測での先行研究では,熟練者の視線行動は初学者に比べ早く,危険を察知できるとされている.熟練者は注視せずとも危険に気づくことができるということはすなわち,周辺視領域での気づきが多く,視覚情報の処理過程に違いがあることが予測される.そこで,本研究では周辺視領域における気づきに着目し,経験値によって違いがあるのかを分析した.
【目的】本研究の目的は療法士と学生で,危険予測場面での情報処理過程にどのように違いがあるかを明らかにし,臨床実習における危険予測の教育の一助とすることである.
【方法】対象:理学療法士,作業療法士(以下,療法士)7名(平均経験月数168.3±62.3ヶ月),作業療法養成校学生4年次生(以下,学生)7名を対象とした.1)Time presssure-Kiken Yochi Trainingを用いて,5場面(端座位,移乗,トイレ,入浴,調理)のイラストに10秒間で危険だと感じた箇所を回答してもらい総得点を比較した.2)全ての場面で,アイトラッカー(Tobii製:Tobii Pro Glass2)を用いて注視した箇所と注視していない箇所(以下,周辺視領域)に分け,回答から周辺視領域で危険と気づいた箇所と気づかなかった箇所をカウントし出現度数を比較した.1)の分析にはMann-WhitneyのU検定を,2)の分析にはχ二乗分析を用いた.統計処理はSPSS(IBM SPSS Statistics 27.0)を使用し,危険率5%未満をもって有意とした.なお,本研究は共同研究者所属の倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号14-Ifh-08).
【結果】1)5項目の総得点は療法士242.1±20.2点,学生102.1±37.7点と差が見られた(p=0.001).2)周辺視領域の気づきについては,療法士(気づきあり:21回 気づきなし:63回),学生(気づきあり:11回 気づきなし:113回)で周辺視領域での危険に対しての気づきは療法士が有意に多かった(p=0.000).
【考察】経験豊富な療法士において,周辺視領域に対しての気づきが学生より多いことが明らかになった.このことから,経験や知識がある療法士は中心視で捉えている情報と合わせて周辺視領域の情報に気づきやすく,危険を予測し対処できていることが示唆された.学生教育場面では事前に基礎知識や予測される危険に関して提示しておくことで,気づきを増やせる可能性があるかもしれない.今回は5場面すべての場面での回答の比較しかできておらず,場面特異性や疾患により同様の結果がでるのか,今後症例数を増やし検討していく必要がある.