第56回日本作業療法学会

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ポスター

教育

[PR-2] ポスター:教育 2

2022年9月16日(金) 14:00 〜 15:00 ポスター会場 (イベントホール)

[PR-2-5] ポスター:教育 2アクティブラーニングにおける「反転授業」の試み

小泉 雄一1 (1東京福祉専門学校 作業療法士科)

【序論】アクティブラーニングとは,能動的学習のことを差し,学習者が受け身ではなく,自ら能動的に学びに向かうよう設計された教授・学習法のことである.授業において学生が能動的に学ぶことは,作業療法士としての知識や技術等を主体的に身につけることができるだけでなく,臨床実習や作業療法士として働く上で必要な「臨床思考過程」に繋がるものと考える.
今回,アクティブラーニングの手法の中の「反転授業」に注目し,学生が能動的に学ぶことができるかを試みた.一方的に教えて,確認テストをするといった従来の授業形態ではなく,先に予習をさせたことを,教員が補足をして次のグループワークに繋げるという形の授業を行った.学生に対するアンケート調査の結果も含めて考察したことを報告する.
【方法】当校,作業療法士科第2学年の学生38名に対して,「精神障害治療学」(1コマ90分,前期15コマ)の授業の中で,次の単元で学習する内容を予習し,この予習レポート課題を小テストとした.授業の初めに,提出してもらった予習レポート課題の中で,最もよく書けていたレポートをスクリーンに映し出し,本人を指名して読み上げてもらうことで知識の共有を図った.予習レポートの共有後,教員が知識面の補足説明をし,その上で本題である治療法としての作業療法の例を教員から伝えた.そして,その疾患の事例を示し,グループワークにてその事例の作業療法ついて話し合う時間を設け,最後に話し合った内容を発表し,共有した.発表に対して,教員からコメントを伝え,次の単元の内容・課題内容を伝えて授業は終了.この授業を繰り返し行い,授業最終日にアンケートに回答してもらった.
【結果】アンケート回収率:97%(38名中37名)
①この科目は小テストとして,次の授業の予習をするという形のレポートでしたが,役に立ちましたか?とても役に立った19名(51%),まあまあ役に立った18名(49%)
②予習をしない他の科目に比べると,授業への入りやすさはどうでしたか?とても授業に入りやすかった17名(46%),まあまあ授業に入りやすかった18名(49%),変わらない2名(5%)
③予習の重要性は感じましたか?とても重要性を感じた20名(54%),まあまあ重要性を感じた17名(46%)
④予習をすることで,予習しない科目に比べると授業に対する取り組む意欲に変化はありましたか?
とても意欲的に授業に取り組めた9名(24%),まあまあ意欲的に授業に取り組めた18名(49%),変わらない10名(27%)
⑤この授業の経験から,他の科目でも予習してから授業に臨みたいと思いましたか?とてもそうしたいと思っている10名(27%),まあまあそうしたいと思っている24%(65%),あまりそうしたいとは思わない3名(8%)
【考察】Jonathan Bergmannらによると,反転授業は躓いている生徒を助ける,という.筆者が行った予習レポートでは,授業の最初に良いレポートの例を共有することで,どのように書くことが望ましいかを示すことで,どのように勉強すればよいかわからない学生に対しても反転授業によって能動的な学習を促すことができたと考える.今回のアンケート調査の結果,全体的には授業の様子からの印象や小テストの印象と一致する点が多く,予習レポートの意図,重要性についても伝わっていた印象を受けたが,全員が同じように取り組めたとは言い難い.フィードバックの仕方や事前課題の内容について検討が必要であると考える.また,7割以上が授業に意欲的に取り組めたこと,9割以上は他の授業でも予習をしてから臨みたいと思っていることが得られており,概ね能動的な学びに繋げることはできたと考える.