第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

教育

[PR-3] ポスター:教育 3

2022年9月16日(金) 15:00 〜 16:00 ポスター会場 (イベントホール)

[PR-3-2] ポスター:教育 3COVID-19パンデミックを契機とした実習教育改革

OSCEを用いたProblem-based Learningによるリハビリテーション学習システムの確立

趙 吉春1岡部 拓大1平田 恵介1森下 佑里1清水 順市1 (1東京家政大学健康科学部)

【背景・目的】
 COVID-19の収束が未だ見込めない状況下において,学生に対して臨床実習に代替する学習の機会を学内で提供することが急務となっている.本学科では,学外での臨床実習を代替する方法として,模擬事例の検討や実技演習といった学内実習を行っている(対面とオンラインを併用).しかしながら,臨床実習で修得されるコンピテンシー,つまり「対象者情報の把握からリハビリテーション計画立案,各療法実施ができる」,「クリニカルクエスチョンを述べ,患者のリハビリテーションに応用できるエビデンスを探すことができる」などを学内実習のみで提供できるのか,ということが課題である.そこで本研究では,学生が批判的思考,臨床的推論,自律学習,チームワーク,セルフケアスキル,プロフェッショナリズム,及び倫理を開発できるようにする能力を身に付けるアクティブラーニングのひとつであるProblem-based Learning(以下PBL)を活用した学内実習を推進することで,既述のコンピテンシーを育成することを目的とした.
【方法】
 2021年度4年生の臨床実習Ⅱ(4月~6月:8週間)の学内実習において,学生が主体となってOSCEの実技指導動画教材を制作した.プロセスは,事前学習,症例設定,評価項目の設定,動画撮影及び編集,プレ配信及びフィードバック,報告会の順に実施し,終了後には学内の自己学習コンテンツとして学科クラウド上にて共有した.また,実習前後に臨床的考察と推論の自己評価(Self-Assessment of Clinical Reflection and Reasoning)を,実習後に学習時間や各プロセスにおける学び(知識・技術・表現力および伝達力)と学習意欲の変化についてのアンケートをGoogle Formsを用いて実施した.なお,本研究は所属施設倫理委員会の承認(SKE2020-22)を得て実施した.
【結果】
 計7本の動画制作や編集を実施した.アンケート結果において,症例設定や評価項目の設定では「知識不足にきづいた」という回答が多く,動画制作では「技術不足による困難を感じた」,プレ配信及びフィードバック,報告会では「表現力および伝達力に不足を感じた」といった回答が多かった.また,全体を通して,「本経験が今後の実習に活用できる」「学習意欲の向上に繋がった」という回答が得られた.Self-Assessment of Clinical Reflection and Reasoningのスコアは,学内実習前が96.3±12.3,学内実習後が100.9±12.5であった.
【考察】
 本研究では,PBLを活用した学内実習を推進することで,学内実習において臨床で修得されるコンピテンシーを育成することを目的とした.全体を通して,知識と技術の融合,論理的思考力,協調性,リーダーシップ,情報リテラシーの修得,学習意欲の向上を図ることができた.症例設定や評価項目の設定では,疾患に対しての基礎的な知識からリハビリテーション各論に至るまでの知識を修得し,どのような検査測定結果や介入方法になるかを想定するといった臨床推論の促しとなった.動画撮影・編集,プレ配信およびフィードバックでは,iPadやPCを活用して動画教材を内容や視覚的に理解しやすいように制作することによって,表現力の向上やICT技術の向上に繋がった.報告会では,成果物を発表し他者からの意見や質疑応答に対応することで,プレゼンテーション能力やコミュニケーション能力の向上を図ることができた.
 今回導入した学習システムは,学内実習において,臨床実習で修得されるコンピテンシーの育成に寄与できることを示した.