第56回日本作業療法学会

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ポスター

教育

[PR-3] ポスター:教育 3

2022年9月16日(金) 15:00 〜 16:00 ポスター会場 (イベントホール)

[PR-3-4] ポスター:教育 3作業療法学生の非意識的な領野に潜在している認知症患者に対する認知

黒川 喬介1板倉 麻紀2久保田 智洋3神山 真美4岡本 絵里加5 (1帝京科学大学医療科学部作業療法学科,2関東リハビリテーション学校作業療法学科,3アール医療福祉専門学校作業療法学科,4上尾中央医療専門学t校作業療法学科,5東京家政大学健康科学部リハビリテーション学科)

【序論】今日では,感情体験や態度決定は非意識的で自動的であると考えられている.そして意識的なアクセスが困難な思考や感情といった,心的コントロールや意識的な意思の役割が少ない測定方法を用いれば回答者の態度の背景にある潜在的認知が測定できる.そのような潜在的認知の測定法として潜在連合テスト(Implicit Association Test;IAT)がある.認知症患者に対してすでにネガティブな認知が潜在的に生じおり,それが十分に変化することなく臨床実習に臨んだ場合,学生は対象者との関係を発展させないような構えや態度をとり続けることが予想され,その結果,協働的な治療関係を築いて効果的な実習を行うことを阻害する可能性がある.これらのことが検証されるならば,作業療法学生が示す認知症患者に対する社会的態度の背景にある認知の実態について示唆が得られ,臨床実習前に行うべき教育内容を検討するための一助となると考える.【目的】IATを用いて作業療法学生に保持されている認知症患者に対する潜在的偏見について検討する.【方法】調査期間は2021年4月から10月の期間にて集団調査を行った.対象は,作業療法学生の男女392名(男性183名,女性209名).潮村による日本語紙筆版IAT,実習その他による認知症患者との接触経験の有無についての質問を行った.倫理的配慮については国際医療福祉大学研究倫理審査委員会において承認を得た(承認番号20-Ig-78).【結果】認知症患者に対する潜在的認知が専門的な教育によってどのように変化するかを検討するため,老年期および認知症に関する講義を履修する前の学生群(以下,未履修群),履修後の学生群(以下,履修済み群),3週間以上の臨床実習において認知症患者と直接接した学生群(以下,臨床実習経験群)の3群とした.各群におけるIAT値の検討として,Shapiro-Wilk検定によって正規性の確認の後に1標本t検定を行った.その結果,すべての群でIAT値の平均値はともに正の値であり,検定値=0とする帰無仮説は棄却され有意差があった.男女差では対応のないt検定の結果,履修済み群で男性群が有意に高かった.接触経験の有無の差では,履修済み群内において,接触経験のない群がある群よりも有意に高かった.学内での講義や臨床実習といった専門的教育によって,作業療法学生の認知症患者に対する認知がどのように変化しているのかにおいて,3群間で比較を行った結果,履修済み群と臨床実習経験群が未履修群よりもIAT値は有意に高く,履修済み群と臨床実習経験群との間には有意差はなかった.【考察】作業療法学生は入学時よりすでに認知症患者に対してネガティブな認知が潜在的に生じており,高齢期や認知症についての講義を受講することによってさらにネガティブな認知が高まっていることが示唆された.また,専門的教育によって高められたネガティブな認知は臨床実習終了後まで保持されているものと示唆された.以上より,作業療法教育において,認知症患者に対する潜在的偏見の改善については,高齢期および認知症に関する講義において,学生の認知症患者に対するネガティブな認知を高める要因となる具体的な講義内容を明らかにする必要があると考えられる.