第56回日本作業療法学会

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ポスター

教育

[PR-4] ポスター:教育 4

Fri. Sep 16, 2022 4:00 PM - 5:00 PM ポスター会場 (イベントホール)

[PR-4-4] ポスター:教育 4問題解決型学習を経験した作業療法学生のレジリエンスの特性分析

生方 剛1野本 義則1 (1東京医療学院大学保健医療学部リハビリテーション学科作業療法学専攻)

【背景】
レジリエンスはストレス状況からの立ち直りや心の回復力といわれ,精神疾患発症予防の見地からも注目される概念である.レジリエンスに関する研究は様々な視点で行われており,その人が有するレジリエンスの特性や要因,レジリエンスを高める方法,レジリエンスの経時的変化等がある.平野(2010)は二次元レジリエンス尺度の作成にあたってレジリエンスは持って生まれた気質との関連が強い「資質的要因」と発達の中で身につきやすい「獲得的要因」に分けられるとした.近年の教育では問題解決型学習など学習者中心の教育活動の展開が報告されており,学習活動そのものがレジリエンスに寄与する報告もある.本研究は,学習活動の中で作業療法士を目指す学生のレジリエンス特性を解明し,新しい教育活動への知見を得ることを目的としている.
【対象と方法】
授業において問題解決型学習を導入している関東地方の専門学校(3年制昼間部)に在籍する1年生から3年生の作業療法学科学生のうち,社会人経験のない18歳から21歳を対象とした.調査時期は2016年8月から10月であり,ウェブ上にアンケートサイトを開設し,回答者がサイトにアクセスするネットリサーチを用いた.各学年のホームルームにて調査説明書を配布し,研究の趣旨と回答方法,同意に関する事項を口頭及び文書で説明した.そして,対象者は説明書に印刷されたQRコードからアンケートサイトにアクセスし回答した時点で同意とみなした.調査内容は個人の属性(年齢,性別)の他,二次元レジリエンス要因尺度(平野:2010)を用いて,資質的レジリエンス要因を構成する4因子(楽観性,統御力,社交性,行動力),12項目と獲得的レジリエンス要因を構成する3因子(問題解決志向,自己理解,他者心理の理解),9項目の合計21項目を調査した.収集された情報は男女,学年不問で二次元レジリエンス尺度の合計点(21項目105点)を昇順に並べ,中央値で高値群,低値群を区分した.この2群で二次元レジリエンス要因の資質的要因と獲得的要因,およびそれぞれの下位尺度を用いた.これらの変数はいずれも正規性,等分散を認めたため,2群間の検定にはt検定を選択した.統計学的検定にはEZRを用いて,有意水準は5%とした.調査には調査実施校の倫理委員会の承認(16-0014号)を得ており,回答の有無や内容で不利益になることはないことを説明した.
【結果】
レジリエンス高値群と低値群では,下位尺度21項目中19項目で有意差が認められた.それ以外の資質的レジリエンス要因のうち,楽観性を示す「たとえ自信がないことでも,結果的に何とかなると思う」と獲得的レジリエンス要因のうち,問題解決志向を示す「人と誤解が生じたときには積極的に話をしようとする」の2項目は有意差を認めなかった.
【考察】
楽観性は「将来に対して不安をもたず,肯定的な期待をもって行動できる力」,問題解決志向は「状況を改善するために,問題を積極的に解決しようとする意志をもち,解決方法を学ぼうとする力」を示すとされる.これらがレジリエンス合計点の高値群,低値群で有意差がないことは,楽観性と問題解決志向はどの学生でも一定の水準を有していることが読み取れる.これは,主体的な学びへ導く問題解決型学習による影響が推察される.楽観性も問題解決志向も自らの意思で学ぶこと,行動することで養われ,対象となった学生はこれらの力を教育活動の中で得られたことが示唆される.今回の調査で判明した楽観性と問題解決志向を足掛かりとし,学習内容,進度別での検討,レジリエンスを高めるための教育活動の在り方などの研究が求められる.