第56回日本作業療法学会

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教育

[PR-4] ポスター:教育 4

2022年9月16日(金) 16:00 〜 17:00 ポスター会場 (イベントホール)

[PR-4-5] ポスター:教育 4作業療法独自の理論を学んだ学生の作業療法に対する認識

キャッチフレーズ課題からの一考察

谷渕 加奈子1山下 良二1馬場 広志1 (1専門学校穴吹リハビリテーションカレッジ作業療法学科)

【序論・目的】
 世界作業療法連盟「作業療法士教育の最低基準(2016)」の作業療法教育プログラムのなかで,人の作業参加に関する理論や研究成果に関する知識の習得が求められている1).そのため,卒後に理論を活用し作業に適切に焦点を当てられる作業療法士として活躍するためには,養成校教育での作業療法独自の理論に関する学習が不可欠である2).今回,作業療法独自の理論の学びを通して,学生が作業療法をどのように認識しているか,明らかにすることを目的とする.
【方法】
 3年制のA専門学校作業療法学科学生で,2年生後期科目である基礎作業学Ⅱ(現,作業療法理論)を履修した者を対象とした.授業において,作業科学や作業遂行と結びつきのカナダモデル,人間作業モデル,作業療法介入プロセスモデルなどの作業療法独自の理論を学んだあと,作業療法を他者に説明することを想定した「作業療法のキャッチフレーズ」課題(2021年11月26日実施)を提出した23名のうち,書面と口頭にて研究趣旨と任意参加であり個人情報保護及び不利益が生じない旨説明し,同意を得た学生21名(回収率91.3%)の課題を使用した.分析は提出したキャッチフレーズの理由に着目し,得られた内容をコード化し,各コードをまとめてカテゴリー化した.
【結果と考察】
 結果を以下に示す.[作業の特徴]においては,[生活は作業でできている][作業をすることで人生が作られる][作業の力]が挙がった.[クライエントについて]は,[クライエント中心][クライエントの思いや人生に寄り添う][クライエントと作業療法士の協働][クライエントらしいこれからの人生]が挙がった.[作業療法士の専門性]は,[作業療法士はクライエントらしさを支援][クライエントにあったプログラム][作業療法士の独自性]が挙がった.[作業療法学生の想い]では,[作業療法士への動機],[目指す作業療法士像]であった.上記より,作業療法独自の理論等を学んだことで,「作業の特徴」を捉え,「クライエント中心」に「クライエントと作業療法士が協働」して,「クライエントらしい人生を送ることを支援」していくことが,作業療法士の専門性であることを認識していることが推察された.専門職の養成教育プログラムのなかで,作業療法の基盤となる理論の教育は,卒後の専門職としての職業的アイデンティティを確立するために重要2)とあり,今回得られた結果から,作業療法独自の理論を学ぶことで,学生の職業的アイデンティティ形成の一助となっていることが窺われた.
【結論】
 鈴木らによると,卒前教育が卒後の職業的アイデンティティに影響しなかった理由について,卒前で学んだ作業療法独自の理論等が臨床実習や就職先で生かされないこと3),が挙げられている.臨床実習において,作業療法独自の理論を活用して指導している実習施設はまだ少数である.学校で学んだ作業療法独自の理論が臨床実習や就職先で生かされるよう,養成校から働きかけていく必要性を感じた.
【文献】
1)日本作業療法士協会:世界作業療法士連盟(WFOT)「作業療法士の教育最低基準」2016年度改訂版
2)小川真寛,藤本一博,京極真:作業療法理論の教科書 第1版,メジカルビュー,2020,p42
3)鈴木渉,籔脇健司:作業療法で用いられる理論と実践手法に関する教育が卒後の職業的アイデンティティに及ぼす影響,日本作業療法学会抄録集 52:p1284,2018.