第56回日本作業療法学会

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教育

[PR-5] ポスター:教育 5/理論 2

2022年9月17日(土) 10:30 〜 11:30 ポスター会場 (イベントホール)

[PR-5-1] ポスター:教育 5理学・作業療法学科学生に対する立位姿勢の観察による足圧中心位置推定能力の向上に向けた教授の効果

井村 亘12大西 正裕1大東 真紀3本多 史明4石田 実知子5 (1玉野総合医療専門学校作業療法学科,2川崎医療福祉大学 医療技術学研究科 健康科学専攻 博士課程後期,3岡山大学大学院 保健学研究科 博士後期課程,4玉野総合医療専門学校理学療法学科,5川崎医療福祉大学保健看護学部 保健看護学科)

【はじめに】理学・作業療法学科学生(以下:PT・OT学生)にとって姿勢分析は重要な評価のひとつである.その姿勢分析において,立位姿勢の観察による足圧中心位置推定能力(以下:COP推定能力)は必須である.そのため,理学・作業療法士養成校では運動学等の講義にてPT・OT学生に対して,立位姿勢の観察による足圧中心位置の推定方法についての教授を行なっている.しかし,その教授内容がPT・OT学生のCOP推定能力の向上に貢献しているのかは明らかとなっていない.
【目的】本研究は,PT・OT学生の姿勢分析能力の向上に資する知見を得ることをねらいとして,PT・OT学生に対するCOP推定能力の向上に向けた教授の効果を明らかとすることを目的とした.
【方法】本研究デザインは,非ランダム化比較試験とした.対象者の包含基準は,PT・OT学生とした.また,情報バイアスを排除する目的から,除外基準は,観察による立位足圧中心位置を推定する方法の教授を受けた経験のある者とした.実験は2021年4月中旬に実施した.アウトカム指標は,COP推定能力とした.COP推定能力の測定には,「観察式立位足圧中心位置推定能力尺度」を用いた.実験手順はまず,研究者は,介入群,対照群の対象者に対して前提となる足圧中心の理解を促す目的から5分間程度,足圧中心についての説明を実施した.その直後にCOP推定能力を測定(1回目測定)した.なお,バイアス排除の目的から対象者に対して,測定結果のフィードバックは与えなかった.その後,対象者を介入群と対照群に割り付けた.介入群には,立位姿勢の観察による足圧中心位置を推定する方法を教授した.教授内容は,以下に述べる①~④とした.①胸骨の下方(第7~9胸椎)に上半身重心が存在し,大腿部1/2~2/3点の間に下半身重心が存在する.②身体重心位置は,上半身重心と下半身重心の中点に存在する.③身体重心の直下に足圧中心が存在する.①~③について図(スライド)を用いて教授した.その後に④2人一組で相手の立位姿勢を観察して,足圧中心位置を当てるゲームを実施した.①~④の教授時間は計10分間程度であった.対照群には,介入群に対して教授を実施している間,別室にて待機するように指示を与えた.その後,介入群,対照群ともに再度COP推定能力を測定(2回目測定)した.介入の効果判定には,二元配置分散分析を用いて,群(介入/対照)と時間(介入前/介入後)の二要因の交互作用を検討した.また,その効果量(partial η2)も算出した.分散分析により交互作用が得られた場合は,Holm法を用いた多重比較検定を行った.また,その効果量(d)も算出した.なお,本研究は研究者所属施設の倫理審査委員会の承認を得て実施した.申告すべき利益相反はない.
【結果】対象者はPT・OT学生1年生48名であった.その48名を介入群24名,対照群24名に割り付けた.COP推定能力の介入結果は,有意な交互作用が認められた(F=4.35,p=0.042).なお,効果量はη2=0.086であった.また,介入群は,COP推定能力の1回目と2回目の測定値で有意に差が認められ(t=-2.019,p=0.049),効果量はd=-0.401であった.対照群は,COP推定能力の1回目と2回目の測定値で有意な差は認められず(t=0.932,p=0.356),効果量はd=0.136であった.
【考察】本研究結果は,PT・OT学生のCOP推定能力の向上に向けて,立位姿勢において上半身重心と下半身重心を推定し,その中点を身体重心として捉え,その直下に足圧中心位置が存在するという教授の有効性を示している.