第56回日本作業療法学会

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ポスター

教育

[PR-6] ポスター:教育 6

Sat. Sep 17, 2022 1:30 PM - 2:30 PM ポスター会場 (イベントホール)

[PR-6-1] ポスター:教育 6回復期リハビリテーション病棟における新人作業療法士の職務遂行能力向上に対する動機づけ要因に関する研究

田中 雅士12池田 公平3笹田 哲4 (1神奈川県立保健福祉大学大学院保健福祉学研究科博士前期課程,2公立学校共済組合 関東中央病院,3神奈川県立保健福祉大学,4神奈川県立保健福祉大学大学院保健福祉学研究科)

【はじめに】作業療法白書によると作業療法士(以下,OTR)の国家試験合格者は約5000人程度となり,10年前と比較すると一施設に多数のOTRの在籍が一般的となった.厚生労働省における理学療法士・作業療法士需給分科会では,理学療法士とOTRの供給数が2040年頃には現在の約1.5倍となると予測されている.日本作業療法士協会の生涯教育制度では,「OTRは常に最高水準の知識・技術を保つことが社会的に求められる.このため学術的研鑽を積極的,継続的に行い,専門性をより高める努力が極めて重要」であるとし,学会発表や研修会参加による自己研鑚など職務遂行能力向上の重要性を生涯教育手帳の中で示している.本研究の目的は,新人OTRの職務遂行能力向上への動機づけ向上の要因について計量テキスト分析を用いて検討することである.本研究において新人OTRの職務遂行能力向上への動機づけに関する要因を明らかにすることは,OTRの卒後教育の教育的配慮を行う一助になるであろうと考えられる.
【方法】対象:臨床経験3年未満で作業療法への職務遂行能力向上への動機づけの高いとする者とした(現職者基礎研修の10コマ修了,日本作業療法学会での発表経験,大学院に在籍か修士号を取得,SIG団体の研修に12回以上参加).データ収集:インタビューガイドを用いた半構造化面接での個別インタビュー.インタビューガイドは研究指導者の指導を受けながら作成し,一般情報とワーク・エンゲイジメント尺度のUWESをインタビュー導入時に収集した.またインタビューではzoomの録画機能を用いて内容を記録し研究協力者にはいつでも中断できること,中断による不利益が生じないことを説明した後,研究参加についての同意を得た.インタビューの実施はzoomを使用し,協力者の意見を否定しないようにして発言を促した.分析方法:インタビューデータから逐語録を作成した後にテキスト化をし,一般情報に関しては集計処理を実施した.多変量解析はテキスト化されたデータをKH coder(ver.3.0)を使用し,出現回数7回以上の特徴語を対象に単語と単語の結びつきを探るため,上位50単語を共起ネットワークにて抽出語の出現パターンの似通った語の組み合わせや,共起ネットワークで抽出された単語を元に発言内容の質的な分析を行った.また分析に際して必要のない単語は分析対象から除外した.なお,本研究は著者所属大学の倫理審査委員会の承認を得ている.
【結果】参加者は7名(男性2名,女性5名),平均年齢24.7歳,平均経験年数2.7年となり,全参加者の所属病院に回復期リハ病棟を有していた.UWESの平均は3.3(活力2.95,熱意3.71,没頭3.33)であった.総抽出語数は延べ19,542語となった.特徴語同士の共起関係では,職場環境は大事であり,勉強を進めるためには先輩へ聞きやすい,質問がしやすい環境の重要性といったものなどが読み取れた. また臨床上,担当患者の介入などで不明点や疑問が浮かんだ際に質問や勉強をすることが読み取れた.
【考察】ワーク・エンゲイジメントの活力が他の因子よりも低い値になっているため,活力を上げるための方法を探索していく必要性が示唆された.また新人OTRの職務遂行能力向上の動機づけの要因に関しては,職場環境が大きく影響を及ぼしている可能性があることが示された.しかし,先輩療法士に対して質問のしにくい職場環境であれば,職務遂行能力向上に対して阻害因子になることが予測される.今後は,新人OTR自身が職務遂行能力を向上させていけるようになるために先輩療法士の知識・技術の向上や話しかけやすい雰囲気の構築など,職場環境の人的環境の整備を行っていく必要がある.