第56回日本作業療法学会

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ポスター

教育

[PR-6] ポスター:教育 6

Sat. Sep 17, 2022 1:30 PM - 2:30 PM ポスター会場 (イベントホール)

[PR-6-2] ポスター:教育 6現場のリーダーが希望する研修内容

チャットを用いた模擬的なグループインタビューより

古御門 幸奈1谷村 厚子2西村 卓也3 (1平成医療福祉グループ 医療法人社団大和会 大内病院リハビリテーション部,2東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 作業療法科学域,3平成医療福祉グループ 医療法人康生会 泉佐野優人会病院リハビリテーション部)

【はじめに】近年,わが国のリハビリテーション専門職は若い世代が急激に増加しており,課長や主任といった部門管理者だけでなく,いわゆるプレイングマネジャーである現場のリーダーの役割とその教育がますます重要となってきている.そのため当法人グループ教育研修委員会では現場のリーダーを対象とした研修を企画している.成人教育の特徴である問題解決に取り組むことを中心とした自己主導型の学習を促進するためには,現場のリーダーのニーズを調査し,課題に対応した主体的・実践的な研修を実施する必要がある.
【目的】本研究の目的は,現場のリーダーが希望する研修内容を明らかにすることである.
【方法】対象者は8名,病院,施設における現場のリーダーとしての役割を担っており,教育研修委員から推薦のあった者とした.実施方法は相互性を重視し,チャットを用いた模擬的なグループインタビューとした.チャットツールは匿名での利用が可能なLINEオープンチャットを用いた.調査期間は,2021年3月11日(木)~17日(水),参加者は勤務時間後~22時の好きなタイミングでチャットルームに入室し,他者の意見の閲覧および書き込みを行った.分析方法は,まず期間中随時チャットのテキストデータから希望する研修内容について,入室者全員が閲覧できるノート機能に抽出した.調査4日目にそれらの概要の閲覧を参加者に促し,追加の意見を募った.調査終了後,挙げられた内容に不足がないかを教育研修委員会およびチャットに参加していない現場のリーダー2名で検討した.本研究は所属施設倫理委員会の承認を得て実施した.
【結果】対象者の基本属性は,経験年数:平均9.0±4.3年,性別:男性5名,女性3名,職種:PT5名,OT2名,ST1名,担当部署:回復期病棟3名,医療療養病棟2名,介護老人福祉施設2名,訪問1名(回復期病棟と兼任),地域:関東6名,関西2名であった.同時間帯に数名がチャットルームに入室し,1人数回~数十回の書き込みを行った.希望する研修内容をまとめると,教育指導やリーダーの役割に関するもの,コミュニケーションスキル,業務管理,他部署との調整などリーダーとして必要な技術,制度・経営・研究などの知識,ワークライフバランス,キャリア形成など働くこと全般に関するもの等であった.特にグループインタビューの中でチーム内のスタッフに対する接遇指導についての具体的な悩み相談が展開され,「他の病院,施設のリーダーと話し合う機会が研修としてあったら仕事へのモチベーションが沸きそう」「日々職場で悩んでいることが他の病院や施設で行っている工夫で活路が開ける可能性がありそう」との意見が挙がった.また「リーダーとしての役割がグループで統一されていないことが問題」「求められるリーダー像が医療と介護によって異なる」などリーダーの役割についても多くの意見が交わされた.研修方法の希望では業務時間内の実施に対し多くの意見が寄せられた.
【考察】現場のリーダーが希望する研修内容にはリーダーとしての技術や知識に加え,日々の悩みや工夫を話し合う場が必要とされていることが明らかになった.さらに現場のリーダー達は強い責任感を持ってその役割を果たそうとする一方で膨大な業務に追われ,それらについて改めて考える余裕がないことが推察された.したがって,リーダー同士が交流することでリーダーとしての自分を客観的に捉え,問題解決能力の向上につながるような研修が必要と考えられる.