[PR-6-5] ポスター:教育 6作業療法学科学生の認知症の人に対する態度尺度の変化
1年次と2年次の比較
【背景】認知症を呈する対象者がますます増加する日本社会において,作業療法士には認知症の治療技術の更なる向上が求められる.養成教育では学生の臨床技能3要素(知識・技術・態度)の向上を目指している.教育過程では学生の技能習熟における習得度を随時把握していく必要がある.認知症の作業療法における知識・技術面は定期試験結果で確認できるが,態度面を把握する方法がないため,「認知症の人に対する態度尺度」を利用することとした.作業療法学科全学生284名を対象にした調査結果を第55回作業療法学会で発表しており,今回は学年進行に伴う態度の変化を報告する.
【目的】本研究では2020年度作業療法学科入学生を対象として,「認知症の人に対する態度」に関する調査を行い,1年次(2020年度)と2年次(2021年度)の変化を明らかにすることを目的とする.
【方法】対象は2020年度作業療法学科入学生77名である.調査日は1年次が2020年12月23日,2年次が2022年1月26日である.「認知症の人に対する態度」の調査には,金ら(2011)によって開発された評価尺度を使用した.本尺度は,認知症の人に対する肯定的な態度に関する項目8項目,否定的な態度に関する項目7項目,計15項目で構成されている.回答選択肢は「全く思わない」「あまり思わない」「ややそう思う」「そう思う」の4件法とした.分析方法は,逆転項目である否定的な態度の項目の処理を行い,各項目の回答結果が肯定的であるほど点数が高くなるよう,1点から4点を付与し,全15項目の合計得点を求めた.統計学的検討は,Wilcoxonの符号付順位検定を用いて,1年次と2年次の各項目の得点と合計得点を比較した.統計処理にはIBM SPSS Statistics Ver.26.0 for Windowsを使用し,有意水準は5%とした.本研究の実施に際しては,対象学生へ研究内容を口頭で説明し,同意を得た.
【結果】認知症の人に対する態度尺度の合計点の平均値は1年次が47.1点,2年次が49.0点であった.合計点と5つの質問項目の得点の平均値は,1年次に比べて2年次の得点が有意に高い値を示した.2年次に高い値を示した質問内容は,「認知症の人も周りの人と仲よくする能力がある」「普段の生活でももっと認知症の人と関わる機会があってもよい」「認知症の人と喜びや楽しみを分かち合える」「認知症の人の行動は理解できない」「認知症の人はいつ何をするかわからない」である.
【考察】1年次に比べ2年次の合計点が高いのは,2年次の講義と臨床実習の学習成果であると考える.学生は2年次開講の神経学,精神医学で認知症の病態および治療法を学修している.また,2021年度の臨床実習Ⅱ(早期臨床体験)はコロナ禍であったが,大学関連施設の協力により介護福祉施設で2日間,大学関連病院で2日間の実習ができた.1年次の臨床実習Ⅰは新型コロナウイルス感染拡大により学内演習であったため,臨床実習Ⅱでは初めて臨床現場に出向き,対象者と直接対面して関わることができた.特に介護福祉施設の実習では,学生が認知症の方に寄り添い,作業活動をともにする機会があった.このような実習経験から,学生は認知症の方が持つ能力(できること)を理解し,できない部分への関わり方を考える機会を持てたことが,2年次に得点が高くなった質問項目の要因であると考える.また,作業療法において「自己の治療的活用」は重要な治療要素である.作業療法士の態度面の向上(肯定的態度の醸成)はその治療効果を高めることにも繋がると考える.今後も認知症作業療法の臨床技能向上を目指したカリキュラム作成に取り組んでいきたい.
【目的】本研究では2020年度作業療法学科入学生を対象として,「認知症の人に対する態度」に関する調査を行い,1年次(2020年度)と2年次(2021年度)の変化を明らかにすることを目的とする.
【方法】対象は2020年度作業療法学科入学生77名である.調査日は1年次が2020年12月23日,2年次が2022年1月26日である.「認知症の人に対する態度」の調査には,金ら(2011)によって開発された評価尺度を使用した.本尺度は,認知症の人に対する肯定的な態度に関する項目8項目,否定的な態度に関する項目7項目,計15項目で構成されている.回答選択肢は「全く思わない」「あまり思わない」「ややそう思う」「そう思う」の4件法とした.分析方法は,逆転項目である否定的な態度の項目の処理を行い,各項目の回答結果が肯定的であるほど点数が高くなるよう,1点から4点を付与し,全15項目の合計得点を求めた.統計学的検討は,Wilcoxonの符号付順位検定を用いて,1年次と2年次の各項目の得点と合計得点を比較した.統計処理にはIBM SPSS Statistics Ver.26.0 for Windowsを使用し,有意水準は5%とした.本研究の実施に際しては,対象学生へ研究内容を口頭で説明し,同意を得た.
【結果】認知症の人に対する態度尺度の合計点の平均値は1年次が47.1点,2年次が49.0点であった.合計点と5つの質問項目の得点の平均値は,1年次に比べて2年次の得点が有意に高い値を示した.2年次に高い値を示した質問内容は,「認知症の人も周りの人と仲よくする能力がある」「普段の生活でももっと認知症の人と関わる機会があってもよい」「認知症の人と喜びや楽しみを分かち合える」「認知症の人の行動は理解できない」「認知症の人はいつ何をするかわからない」である.
【考察】1年次に比べ2年次の合計点が高いのは,2年次の講義と臨床実習の学習成果であると考える.学生は2年次開講の神経学,精神医学で認知症の病態および治療法を学修している.また,2021年度の臨床実習Ⅱ(早期臨床体験)はコロナ禍であったが,大学関連施設の協力により介護福祉施設で2日間,大学関連病院で2日間の実習ができた.1年次の臨床実習Ⅰは新型コロナウイルス感染拡大により学内演習であったため,臨床実習Ⅱでは初めて臨床現場に出向き,対象者と直接対面して関わることができた.特に介護福祉施設の実習では,学生が認知症の方に寄り添い,作業活動をともにする機会があった.このような実習経験から,学生は認知症の方が持つ能力(できること)を理解し,できない部分への関わり方を考える機会を持てたことが,2年次に得点が高くなった質問項目の要因であると考える.また,作業療法において「自己の治療的活用」は重要な治療要素である.作業療法士の態度面の向上(肯定的態度の醸成)はその治療効果を高めることにも繋がると考える.今後も認知症作業療法の臨床技能向上を目指したカリキュラム作成に取り組んでいきたい.