[PR-7-3] ポスター:教育 7目標設定における作業療法士のクリニカルリーズニングと傾向
回復期病棟を対象としたインタビュー調査
【はじめに】近年, 行動変容を促す手段として目標設定が重要視されている. 目標設定やその際の補助ツールの使用は, 不安感の軽減や健康関連QOL, 自己効力感, リスクの認識の向上など肯定的な成果を認めている(Ogawa, et al, 2016: Levack, et al, 2015: Joosten, et al, 2008: van Weert, et al, 2016). しかし, 実際に行うにはある程度の知識や経験を有することから, 療法士の技術不足や目標設定の経験不足など障壁があるとの報告も多い(Plant, et al, 2016). 実践家が対象者への働きかけを計画し方向づけ, 実行し, 結果を振り返る思考のプロセスをクリニカルリーズニングと呼ぶが, その発達には時間がかかり, 経験とリフレクションが必要であるため, 特に若手作業療法士が難渋することが多い.
【目的】本研究の目的は, 当院回復期リハビリテーション病棟の作業療法士を対象に, 半構造化面接を行い, 対象者との目標設定における作業療法士のクリニカルリーズニングと傾向を明らかにすることである.
【方法】本研究は個別インタビューによる質的研究である. 研究参加者は, 当院の回復期リハビリテーション病棟に所属する作業療法士である. 調査内容は基本属性として, 年齢, 性別, 経験年数について聴取した. インタビューガイドは, 先行研究(Maruyama, 2021)を参考に作成し, 研究者間でインタビュー内容について目的との妥当性を確認した. 研究代表者はインタビューガイドに沿って聴取を行うが, 対象者にできるだけ多くのことを語ってもらうため, 必要な場合は適宜質問を加えながら行った. インタビューは, 20分前後の半構造化インタビューを一度実施した. 分析に関して, 対象者の基本属性は記述統計量でまとめ, 対象者の発言内容は録音したものを文書化し, 計量テキスト分析をKH Coderで実施した. 本研究では, KH Coderを用いて共起ネットワーク分析, KWICコンコーダンス分析を行った. なお, 共起ネットワーク分析では, 集計単位を段落, 語の最小出現数を9とし経験年数を外部変数(1〜3年目を初学者, 4年目以降を経験者)として分析を行った. 倫理的配慮としてインタビュアーは, 研究の全体像, 面接に要する時間, 質問の内容など研究内容を研究参加者に十分に説明し, 参加の任意性と情報の守秘を保証した後に, 口頭と同意書により承諾を得た.
【結果】参加者は合計6名であった. 初学者は3名(男性0名, 女性3名)で平均年齢は25.0歳±0.7歳であり, 経験者は3名(男性1名, 女性2名)で平均年齢は30.6歳±2.4歳であった. 参加者の発言から共通して共起していた語は「人」「今」「患者」「OT」「自分」「他」「評価」「多い」「本人」「大事」「信頼関係」「良い」「トイレ」であった. 初学者からは特に「病棟」が抽出され, 経験者からは「必要」が抽出された. 自身の目標設定に対する満足度は初学者で低く, 経験者で高い結果となった(満足している:初学者0人, 経験者2人).
【考察】Schell B A B(2008)はクリニカルリーズニングの発達段階として, 初学者は文脈上の問題に敏感で倫理的なジレンマを抱き, 経験者は状況を全体的に認め焦点を当てた評価と介入が柔軟性を持たせると述べている. 本研究の結果は先行研究を支持しており, 初学者が表出した「病棟」は実際の文脈を活かす思考プロセスが反映され, 経験者が表出した「必要」は種々の思考プロセスを経て情報を統合した結果が反映されたと考える. つまり, より洗練された目標設定を行うためには実際の倫理的なジレンマも認めつつ, 科学的な根拠やナラティブ, 専門職の倫理観を重要視し, それらを解釈・統合するスキルも必要になってくると考える.
【目的】本研究の目的は, 当院回復期リハビリテーション病棟の作業療法士を対象に, 半構造化面接を行い, 対象者との目標設定における作業療法士のクリニカルリーズニングと傾向を明らかにすることである.
【方法】本研究は個別インタビューによる質的研究である. 研究参加者は, 当院の回復期リハビリテーション病棟に所属する作業療法士である. 調査内容は基本属性として, 年齢, 性別, 経験年数について聴取した. インタビューガイドは, 先行研究(Maruyama, 2021)を参考に作成し, 研究者間でインタビュー内容について目的との妥当性を確認した. 研究代表者はインタビューガイドに沿って聴取を行うが, 対象者にできるだけ多くのことを語ってもらうため, 必要な場合は適宜質問を加えながら行った. インタビューは, 20分前後の半構造化インタビューを一度実施した. 分析に関して, 対象者の基本属性は記述統計量でまとめ, 対象者の発言内容は録音したものを文書化し, 計量テキスト分析をKH Coderで実施した. 本研究では, KH Coderを用いて共起ネットワーク分析, KWICコンコーダンス分析を行った. なお, 共起ネットワーク分析では, 集計単位を段落, 語の最小出現数を9とし経験年数を外部変数(1〜3年目を初学者, 4年目以降を経験者)として分析を行った. 倫理的配慮としてインタビュアーは, 研究の全体像, 面接に要する時間, 質問の内容など研究内容を研究参加者に十分に説明し, 参加の任意性と情報の守秘を保証した後に, 口頭と同意書により承諾を得た.
【結果】参加者は合計6名であった. 初学者は3名(男性0名, 女性3名)で平均年齢は25.0歳±0.7歳であり, 経験者は3名(男性1名, 女性2名)で平均年齢は30.6歳±2.4歳であった. 参加者の発言から共通して共起していた語は「人」「今」「患者」「OT」「自分」「他」「評価」「多い」「本人」「大事」「信頼関係」「良い」「トイレ」であった. 初学者からは特に「病棟」が抽出され, 経験者からは「必要」が抽出された. 自身の目標設定に対する満足度は初学者で低く, 経験者で高い結果となった(満足している:初学者0人, 経験者2人).
【考察】Schell B A B(2008)はクリニカルリーズニングの発達段階として, 初学者は文脈上の問題に敏感で倫理的なジレンマを抱き, 経験者は状況を全体的に認め焦点を当てた評価と介入が柔軟性を持たせると述べている. 本研究の結果は先行研究を支持しており, 初学者が表出した「病棟」は実際の文脈を活かす思考プロセスが反映され, 経験者が表出した「必要」は種々の思考プロセスを経て情報を統合した結果が反映されたと考える. つまり, より洗練された目標設定を行うためには実際の倫理的なジレンマも認めつつ, 科学的な根拠やナラティブ, 専門職の倫理観を重要視し, それらを解釈・統合するスキルも必要になってくると考える.