第56回日本作業療法学会

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ポスター

教育

[PR-7] ポスター:教育 7

2022年9月17日(土) 14:30 〜 15:30 ポスター会場 (イベントホール)

[PR-7-4] ポスター:教育 7実習代替授業における自助具作成体験の成果

作業療法教育ガイドラインに基づいた取り組み

五十嵐 千代子1大津留 幸代2 (1日本リハビリテーション専門学校,2大泉訪問看護ステーション)

【はじめに】
 新型コロナウイルス感染症(以下;COVID-19)の影響により,総合臨床実習の4週間分が実習代替授業となった.その中でzoomでのインタビュー等通して患者さんに合わせた自助具を作製し,作製についてのアンケートを取った.
【背景】
 作業療法学科昼間部4年生(29名)の総合臨床実習(8週間×2施設)の4週間分が実習代替授業となった.「作業療法ガイドライン (2018 年度版)」によると作業療法の範囲に「福祉用具の使用等に関する訓練」とある.これは臨床実習で体験できる貴重な経験となる.また「作業療法教育ガイドライン(2019)」の臨床実習の介入プログラムの中に「対象者のモチベーションと課題を踏まえた作業を選択できる」「 課題を解決するため,作業とその環境が,対象者のパフォーマンスが最大限となるよう考えられる」 「既に発表されている研究や関連資料を参照し,根拠に基づいて立案できる」とある.これに基づき実習代替授業の中で自助具を作製することで問題解決につながる体験を試みた.また自助具作成について学生にアンケートを取った.そこから見えた実習代替の成果について述
べる.
【方法】
 訪問看護ステーションに勤務する作業療法士(以下;指導者)に講義と学生への課題を依頼した.対象者は〇〇により日常生活のなかで①歯磨き粉を絞り出せない②缶飲料のプルトップを開けられない,という訴えがあり学生への課題は問題解決のための自助具の作成となった.対象者の情報は講義を通して行い,その後指導者が対象者のご自宅に伺いzoomで対象者に学生からの質疑応答や様々な動作をしていただきそこから自助具の立案・作成を行った.作成する自助具は①②のどちらかを選択し,立案・作成には文献やインターネットなどの利用を促した. 作成後にアンケートを実施した.
【結果】
 「福祉用具の使用等に関する訓練」そのものは指導者に委託することになった.「対象者のモチベーションと課題を踏まえた作業を選択できる」「 課題を解決するため,作業とその環境が,対象者のパフォーマンスが最大限となるよう考えられる」は全員が達成した.
 アンケート集計より一番多い割合で結果を述べる.51%がイメージ通りの自助具が出来上がった.48%が企画立案に1~2時間要した.48%材料購入費用が500円以上1000円未満であった.55%が企画・作製にあたり参考にしたものはインターネットであった.ただし若干名は何も参考にせず「既に発表されている研究や関連資料を参照し,根拠に基づいて立案できる」は全員の達成とは言えなかった.作製の際に楽しかったこと,作製の際に難しかったこと,作製しての感想は自由記載としたが「楽しかった」「良い経験となった」という内容が多かった.また対象者が一つずつ試用しての感想を一人一人に書き,一番実用的なものも選び課題の解決へと至ることができ,学生の励みとなった.
【考察】
 実習代替授業の到達目標や展開を考えるにあたり「作業療法ガイドライン」と「作業療法教育ガイドライン」を多く参考にした.今回の自助具の作成は一緒に授業内容を考え,協力依頼の交渉を対象者やご家族に働きかけてくれた指導者の活躍が大きかった.ありがたいことにzoomで対象者とやり取りができ,作成したものを使用してみての感想を個別に頂き,日常の中でその自助具を使用して課題の解決を図ることができた,学生とのやり取りを通して対象者のモチベーションが向上した等,双方向の満足度が得られた.