第56回日本作業療法学会

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ポスター

教育

[PR-7] ポスター:教育 7

2022年9月17日(土) 14:30 〜 15:30 ポスター会場 (イベントホール)

[PR-7-5] ポスター:教育 72週間の身体領域臨床実習において作業療法学生が経験したスキル

館岡 周平1會田 玉美23野村 健太2木口 尚人4 (1植草学園大学保健医療学部リハビリテーション学科,2目白大学保健医療学部作業療法学科,3目白大学大学院リハビリテーション学研究科,4茨城県立医療大学保健医療学部作業療法学科)

【背景】作業療法士養成校では,2週間程度の身体領域臨床実習(以下,実習)の後に,総合的な長期の実習を行っており,段階的に期間を拡げながら臨床経験を学生に積ませている.2週間程度の実習での経験は,長期実習の習得段階に影響する可能性が高く,臨床実習指導者(以下,CE)や養成校は,学生の可能な経験を長期実習に向けて積み上げることが大切である.しかし,2週間程度の実習で,どの様な経験を積むことができるかは明らかになっていない.
【目的】作業療法士養成校で実施された2週間程度の実習において活用した,クリニカルクラークシップチェックリスト(以下,CCC)を基に,学生の経験の特徴を調査することである.
【方法】調査に用いた記録は,2019年2月に2週間の実習を履修した2年生が実習中にCEとともに記入したCCCである.そのうち,身体領域の病院で実習が行われた学生のCCCを調査に用いた.CCCは,CE12名の協力の下,独自に作成されたもので,作業療法士に求められる適性,情報収集,評価の解釈,リスク管理,環境因子,個人因子,活動と参加,心身機能・身体構造という8領域,123項目で構成されている.本研究でCCCを活用した学生は,カリキュラム上,身体機能作業療法治療学・演習,高次脳機能作業療法学,義肢装具学・演習,高齢期作業療法学・演習,日常生活適応学演習の科目が未履修である.各項目の,見学,模倣前期,模倣後期,実施の4段階の経験の有無の割合を,CochranのQ検定にて検討し,有意差があった場合は多重比較を行った.また,各領域で50%以上の学生が経験した項目数を4段階ごとに集計し,各領域の全項目数からの割合を算出した.なお,本研究では,50%以上の学生が経験した項目を,半数以上の多数の学生が経験した項目と便宜的に定義した.統計処理にはSPSS statistics 27.0(IBM社)を用いた.本研究は,倫理審査委員会の承認を得て実施した. 
【結果】回収率は100%(48名)で,そのうち,身体領域の病院以外での実習3名を除外した92%(44名)のCCCを研究に用いた.結果,見学の経験数が50%以上は72項目あり,そのうち,情報収集,活動と参加(ADL),基本的な介入技術といった領域に含まれる模倣前期33項目,模倣後期71項目,実施72項目が有意に減少していた(p<.05).また,模倣前期の段階を50%以上の学生が経験した項目数が50%以上ある領域は,作業療法士に求められる適性とリスク管理であった.項目ごとでは,基本的なADLの評価と,基本的な介入技術であるROMやMMTを,50%以上の学生は模倣前期まで経験していた.
【考察】作業療法士に求められる適性,リスク管理に含まれる項目,ADL,ROM,MMTといった基本的な介入技術の項目は,臨床において実施される機会も多く,On-the-Job Training(以下,OJT)での導入が容易であり,2週間で見学・模倣の経験が容易な項目と考えられる.学生が,学内で未履修であった科目に関連する項目は,模倣以降の経験まで積み上げることが難しかった可能性はあるが,一方で,学内で学修済みの項目においても,見学と模倣以降に有意差がある項目が複数存在していた.臨床は評価と治療が常に一体になって進むことから,作業療法の治療にかかわる領域の知識を習得していないと,実習経験が有効に積み重ねられない可能性が考えられる.したがって,作業療法の治療にかかわる領域を学内で学修したのちに2週間の実習に臨むか,あるいは情報収集や一部の検査を含む学修済みの領域の経験と作業療法部門の周辺業務に焦点を当てて,OJTに基づき実習経験を積み上げることが効果的な学修になると考えられる.