[PR-8-1] ポスター:教育 8作業療法学生の就職に向けた不安と就職先選定での重要因子に関する調査報告
実習経験の有無による比較
【はじめに】 COVID-19の感染対策により,わが国の作業療法教育方法は大きな影響を受けた.とりわけ臨床実習では,学内実習が特例として認められ,直接臨床現場に入らずとも,実習単位が取得可能な状況となった.学生が臨床経験を十分に得られないことは,就職に向けた不安感等に影響すると思われる.今回,臨床経験の違いによる就職に向けた不安と就職先選定について検討するため,アンケート調査を行った.
【目的】 作業療法学生が抱いている就職に向けた不安と就職先選定で重要視していることを把握し,さらに臨床経験の違いによる差を検討する.
【方法】 研究対象者:本校(3年課程)2019年度作業療法学科3年生32名および,2021年度作業療法学科3年生37名,合計69名.2019年度生は従来通りの実習を行っているのに対し,2021年度生は2年次の評価実習がすべて学内実習,3年次の臨床実習は期間の違いはあるものの全体の約7割の学生に学内実習の対応があった.学内実習では対象者の映像資料を活用するなどして臨床像を補う工夫を行った.なお,対象者には本研究の目的・内容および個人情報の管理に関する説明をし, 調査票の提出をもって同意とした.
調査内容:松田らの職業選択不安尺度と石坂らの就職決定因子を参考に,独自で作成した就職不安調査票(全17項目)および,就職決定調査票(全23項目)を用いた.両調査票は各項目において,非常にあてはまる/非常に重要である場合を3点~全くあてはまらない/全く重要でない場合を0点とする4件法とした.
分析方法:不安調査票は「非常にあてはまる」「当てはまる」と「全く当てはまらない」「当てはまらない」の2群に分け2019年度生と2021年度生の度数の違いをχ2検定にて実施した.決定調査票に関しても同様に2群に分けχ2検定を実施した(有意水準5%,両側検定).
【結果】 有効回答数は91.3%であった.就職不安調査では「専門的知識・技術がたりていないのではないかと不安である」ではどちらの学生も不安感が高く,有意差は認められなかった.一方,「対象者と良好な関係が築けるか不安である」では2021年度生に不安感を抱く人が多く有意な差が認められた(p=0.0002).就職決定調査では「良好な人間関係」「新人研修の充実」ではどちらの学生も重要度が高く,有意差は認められなかった.一方,「他者の推薦」「実習の評判」では2021年度生に重要視する人が多く有意な差が認められた(p=0.0007, 0.01).
【考察】 臨床経験の有無に限らず専門的な知識や技術に関しては多くの学生が不安感を示しており,自身が目指す専門職への高い意識からくる不安であると察せられた.一方で,既定の期間を臨床現場で実習できた学生は,対象者との関わりにおいて,実習期間中に安心感や自信を得ていると思われた.実習が学内対応になった新卒入職者には,現場にて専門的知識や技術の確認と合わせて,適切な声掛けや観察点など基本的な関わり方から強調して確認していく必要性が考えられた.就職決定においては,人間関係や新人研修は心理的な働きやすさや専門職としての責任感に通ずるものであり,臨床経験の有無に限らず重要視していることが伺えた.一方で,臨床経験の乏しい学生は,自身の臨床経験が不十分であるがゆえ,少しでも現場経験をしている者の意見を重要視する思考が察せられた.
【目的】 作業療法学生が抱いている就職に向けた不安と就職先選定で重要視していることを把握し,さらに臨床経験の違いによる差を検討する.
【方法】 研究対象者:本校(3年課程)2019年度作業療法学科3年生32名および,2021年度作業療法学科3年生37名,合計69名.2019年度生は従来通りの実習を行っているのに対し,2021年度生は2年次の評価実習がすべて学内実習,3年次の臨床実習は期間の違いはあるものの全体の約7割の学生に学内実習の対応があった.学内実習では対象者の映像資料を活用するなどして臨床像を補う工夫を行った.なお,対象者には本研究の目的・内容および個人情報の管理に関する説明をし, 調査票の提出をもって同意とした.
調査内容:松田らの職業選択不安尺度と石坂らの就職決定因子を参考に,独自で作成した就職不安調査票(全17項目)および,就職決定調査票(全23項目)を用いた.両調査票は各項目において,非常にあてはまる/非常に重要である場合を3点~全くあてはまらない/全く重要でない場合を0点とする4件法とした.
分析方法:不安調査票は「非常にあてはまる」「当てはまる」と「全く当てはまらない」「当てはまらない」の2群に分け2019年度生と2021年度生の度数の違いをχ2検定にて実施した.決定調査票に関しても同様に2群に分けχ2検定を実施した(有意水準5%,両側検定).
【結果】 有効回答数は91.3%であった.就職不安調査では「専門的知識・技術がたりていないのではないかと不安である」ではどちらの学生も不安感が高く,有意差は認められなかった.一方,「対象者と良好な関係が築けるか不安である」では2021年度生に不安感を抱く人が多く有意な差が認められた(p=0.0002).就職決定調査では「良好な人間関係」「新人研修の充実」ではどちらの学生も重要度が高く,有意差は認められなかった.一方,「他者の推薦」「実習の評判」では2021年度生に重要視する人が多く有意な差が認められた(p=0.0007, 0.01).
【考察】 臨床経験の有無に限らず専門的な知識や技術に関しては多くの学生が不安感を示しており,自身が目指す専門職への高い意識からくる不安であると察せられた.一方で,既定の期間を臨床現場で実習できた学生は,対象者との関わりにおいて,実習期間中に安心感や自信を得ていると思われた.実習が学内対応になった新卒入職者には,現場にて専門的知識や技術の確認と合わせて,適切な声掛けや観察点など基本的な関わり方から強調して確認していく必要性が考えられた.就職決定においては,人間関係や新人研修は心理的な働きやすさや専門職としての責任感に通ずるものであり,臨床経験の有無に限らず重要視していることが伺えた.一方で,臨床経験の乏しい学生は,自身の臨床経験が不十分であるがゆえ,少しでも現場経験をしている者の意見を重要視する思考が察せられた.