第56回日本作業療法学会

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ポスター

教育

[PR-8] ポスター:教育 8

2022年9月17日(土) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (イベントホール)

[PR-8-2] ポスター:教育 8臨床実習における学生の課題認識

共起ネットワークによる自由記述の可視化の試み

熊谷 竜太1齋藤 佑樹1高橋 慧1 (1仙台青葉学院短期大学リハビリテーション学科作業療法学専攻)

【序論】
2020年4月より施行された新指定規則では,診療参加型の臨床実習形態が推奨されている.学生は単に教示を受ける立場ではなく,自らがチームの一員として主体的に行動する姿勢が求められる.学生が主体的に行動するためには,まず自身の課題を理解することが必要となるが,学生が自身の状況を的確に評価し,解決すべき課題を認識することは難しい.本研究は,臨床実習指導者や教員が,学生の解決すべき課題と,学生自身が認識している課題との齟齬を把握し,適宜必要な指導を行うことができる支援方法の開発に向けた探索的調査である.
【本研究の目的と意義】
本研究の目的は,学生の実習中の課題における自己認識の傾向を探索することである.学生がどのようなことを自身の課題として認識していたのかを検証することは,今後予定している支援方法開発のための一助となる.
【対象】
令和2年度と令和3年度に本学リハビリテーション学科作業療法学専攻に所属した3年生(以下,学生)38名(男性6名,女32名 調査時の年齢:20~21歳)を対象とした.今回の調査および報告に関し,事前に対象者全員に研究の趣旨および参加者の権利等について詳細な説明を行い,書面をもって同意を得た.なお,本研究は仙台青葉学院短期大学研究倫理審査委員会の承認(No.0210)を得ている.また,発表に際し開示すべきCOI関係にある企業等はない.
【方法】
まず,臨床実習を終了した学生の総合評定を基に,中央値を基準にHigh Score群とLow Score群の2群に分け,Google formを用いて「臨床実習を振り返り自身の課題だと感じたこと」についての自由記述を求めた.結果は,テキストマイニングのためのフリーソフトウェアのKH Coderを利用して,High Score群,Low Score群の共起ネットワークを作成し,それぞれの群でどのようなことを課題として認識したのか,語と語の関係性からその特徴を把握した.
【結果】
共起ネットワークを作成した結果,High Score群では「クライエント」という語を中心に,「説明」「コミュニケーション」など,対象者との相互交流に関連した頻出語との強い繋がりを示した.一方,Low Score群では「作業療法評価」を中心に「自分」「結果」「実施」など,自身の技術や思考に関する頻出語との強いつながりを示した
【考察】
今回の調査において,学生の課題に対する捉え方の特徴が示唆された.High Score群が対象者との相互交流に関心を持つ一方で,Low Score群では臨床実習を実施していく上での自身の技術や思考に関心が向いていた.本研究は,あくまで学生の自由記述から語の共起性を可視化したにすぎず,成績別に自己認識の傾向が異なることを示唆したに過ぎない.今後は,学生の自己認識と実際の実習状況,実習前の学内成績などの関連を検証しながら,「学生」「臨床実習指導者」「教員」の三者が一体となった効果的な支援方法の開発を進めていきたい.