第56回日本作業療法学会

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ポスター

教育

[PR-8] ポスター:教育 8

2022年9月17日(土) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (イベントホール)

[PR-8-3] ポスター:教育 8作業療法学生がコロナ禍の臨床実習で抱いた不安感の解明

野口 泰子1渡部 悠司1 (1岡山医療専門職大学健康科学部 作業療法学科)

【序論】臨床実習は新しい環境の適応に大きな不安感を抱く学生が多いとされる.さらに今般は新型コロナウイルス感染症により,臨床実習の時間短縮や中断,対象者への接触制限など,実習形態の変容が余儀なくされている.コロナ禍の臨床実習で学生が抱く不安感を把握した対応が必要となっている.
【目的】コロナ禍の臨床実習を経験した作業療法学生がどのようなことに不安感を抱いたのか,主体的経験を明らかにして,臨床実習対策における改善点の示唆を得る.
【方法】対象者はコロナ禍の臨床実習を経験し本研究の趣旨に同意した,A専門学校に所属する作業療法学科3年生11名(男性4名,女性7名)とした.対象者には研究概要を説明し同意書の署名を得た.本学園倫理委員会の審査を受け承認された(承認番号0046).
 調査方法は,臨床実習が終了した2か月後にコロナ禍の臨床実習で抱いた不安感について集団インタビューを実施した.対象者のコメントはICレコーダーで記録し逐語録を作成した.分析に用いたKJ法は,複雑多様なデータの概念を創造的に統合することで構造の本質を明らかにするため,本研究における集団インタビューのデータ分析に適切であると判断した.KJ法の実施にあたり筆頭筆者は,KJ法本部が主催する正規のトレーニングを修了した.分析結果の信頼性・妥当性を確保するため,質的研究に精通した研究者と本実習の運営に関わった作業療法学科教員にスーパーバイズを受け修正を繰り返した.
 インタビューデータは1つの事柄に1ラベルを作成した.次に全体感を勘案してラベルの質の近さを相対的に吟味しグループを編成し,グループの特性を端的に言い表す表札をつける.このグループ編成を10グループ以内になるまで繰り返し,最終グループの表札に端的に表現する概念をつける.グループ同士の因果関係や関連づけを検討し図解化し叙述化を行う.
【結果】参加の同意を得た11名の集団インタビューで得られたデータから62枚のラベルを作成した.最終ラベルは6枚となった.図解化に続きグループ全体の構造をストーリーとなるよう文章化した.本文においてラベルを「 」,グループの表札を< >,最終グループの表札の概念を〖 〗で示す.コロナ禍の実習で学生は,〖感染源となる脅威〗を常に感じていた.それは,<実習生の立場で感染源となる恐怖とプレッシャー>に加え,「周囲の眼に感染源を疑われるストレス」を感じ,行動面に細心の注意を払い〖感染対策と我慢〗をしていた.
 〖実習の経験項目〗において,「コロナじゃなかったら,と言われて実習項目の未経験が増加」し,「他学生と実習の経験値を比較する」ことで,自己の経験の蓄積に不安を感じていた.さらに<実習の経験不足は就職活動・国家試験勉強・就職後に不利益>を感じ〖実習後に悪影響〗を及ぼすと認識していた.
 <感染状況で実習形態が急に変更>となり,実習が中断,宿舎への引っ越し時期が変更になり,「家族に負担をかけたり,対象者にも申し訳ない想い」を抱くなど〖急な予定変更〗が周囲の人へ波及することに苦慮していた.
【考察】コロナ禍の臨床実習において学生は,自らが感染源となることに脅威を感じ,我慢や孤独感を持ち過ごしていた.この背景には,実習の対象者が重症化する要因を多く持ち合わせている点だけでなく,実習生といった立場の曖昧さが不安感を増長させたと考える.また,コロナ禍の臨床実習の不安は実習期間中だけでなく,国家試験勉強や就職活動にも波及していることが懸念された.