第56回日本作業療法学会

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教育

[PR-8] ポスター:教育 8

2022年9月17日(土) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (イベントホール)

[PR-8-5] ポスター:教育 8作業療法士学科実習生が臨床実習で学んだことについての一考察

和田 義哉1辻村 肇23 (1北海道千歳リハビリテーション大学,2びわこリハビリテーション専門職大学作業療法学科,3大阪電気通信大学医療健康科学部,4,5)

はじめに
 臨床実習は医療職獲得のための難関過程ともいえる.学外での臨床実習は,作業療法士になる意欲を減退させることもあるが,実習から得られるものも多いと考える.これまで臨床実習に関する調査研究は数多くなされているが,実習生自身が実習後に関する評価した報告は少なく,実習生が獲得した能力は何かを実習別に調べた研究も少ない.本研究では,各段階での臨床実習を終えた学生たちにアンケートを取り,実習で学んだことを自由に記述させ,実習で得たことについての分析を行う.
方法
 被験者はT専門学校作業療法士学科(3年制)1~3期生,合計106名であった.方法は各臨床実習(臨床実習Ⅰは2年次の1~2月の5週間,臨床実習Ⅱは3年次の5~7月の11週間,臨床実習Ⅲは3年次8~10月の11週間実施した.)の終了時に,実習アンケートを実施した.その中に「この実習で獲得した能力,成長したところは何ですか.」という質問項目を設定し,自由に記述させた.分析方法はテキストマイニングによる分析を行った.テキストマイニングとは,大量の文章データから有益な情報を取り出すことを総称したものである.このテキストマイニングを行う装置としてKH Coder3を使用した.なお,本研究に関してT専門学校の倫理委員会にて承認を受けている(承認番号 19-01).
結果 
 KH Coder3を使用して,実習での学びについて自由に記述させた中で頻出する単語を調べた結果,各臨床実習において共通して出された単語が,「患者」「コミュニケーション」「考える」であった.また,臨床実習別では,実習Ⅰでは「評価」が最も多く,「学ぶ」や「見る」も多かった.実習Ⅱでは「治療」や「自分」が多くみられ,実習Ⅲでは「治療」や「評価」が多くみられた.次に各臨床実習別に共起ネットワークでそれぞれに出された頻出語をまとめると,実習Ⅰでは「患者を観察する力」「評価する力」「積極的な行動をする」「作業療法士の資質」にまとめられる.実習Ⅱでは「患者を観察する力」「評価から治療の一連の流れ」「自分で考える力」「見て感じたことを質問する」にまとめられ.実習Ⅲでは「自ら行動する力」「評価するときのアプローチ」「患者の治療方法を考える」「コミュニケーション能力」にまとめられる.
考察
 実習生が3つの実習で共通して成長したこととして挙げられたキーワードは「患者」「コミュニケーション」「考える」であった.実習生は普段かかわることの少ない,高齢者が多い患者とのコミュニケーションに,最初は戸惑いながらも徐々に学習していったのではないかと考える.また,実習生は患者の気持ちや評価や治療の目的を考え,学内での演習等での実例では全然足りず,実習地において様々な新しい経験を積む中で,自分で考えて行動することが多くなったのではないかと考える.
 各実習における特徴について,臨床実習Ⅰでは評価を学ぶことに重点を置き,患者や利用者に合わせたコミュニケーションのとり方を学び,積極的な行動をする姿勢を見せようと努力していた.臨床実習Ⅱでは,評価や治療を自分で考えて調べていく能力が持てるようになり,動作分析等で質問を行い,知識を豊富にすることを実習生は重視した.臨床実習Ⅲでは,観察,評価から必要なアプローチを考え,治療を行うことで理解を深めることができ,またそれらを自ら率先的に行えるようになったと考える.