[SS-1-4] 男性高齢者の社会活動への参加を促す集団プログラムの開発;混合研究法
【はじめに】社会的孤立や孤独が死亡率に及ぼす影響は,喫煙とほぼ同じ程度であり,先進国では共通の社会問題になりつつある.特に日本は孤立度が高く,女性高齢者よりも男性高齢者の方が孤立傾向に陥りやすいことから,男性高齢者に特化したプログラムが必要である.筆者らのニーズ調査により,孤立していない男性高齢者に対し,孤立を予防するために人との交流を伴う活動を分析・選択・計画・体験・従事するプロセスを支援する必要性がある可能性を明らかにし,これを骨子としたプログラムを作成した.
【目的】 本研究の目的は,社会活動への参加を促すプログラムが与える社会参加への効果を予備的に検証することである.
【対象】対象者は自治体と地域包括支援センターと協力して募集した.65歳以上の男性高齢者とした.包含基準は会場まで来ることができる者とし,除外基準は病院・施設に入院・入所している者,意思疎通が困難な者とした.
【方法】研究のデザインは混合研究法の収斂型デザインを用いた非盲検化,群内前後比較試験とした.週1回100分,全12回のセッションで構成した.プログラムの前半は対象者自身の生活と社会活動の状況を分析してもらった.次に,対象者の地域における社会活動に関する資源を学び,体験したい社会活動を選択してもらった.プログラムの後半は実際に社会活動を体験することを通して自らを変化させる経験を積み,プログラム終了後も社会活動を変化・従事できるよう計画をたてた.折に触れて対象者同士で意見交換を行い動機づけの強化を図った.プログラムのアウトカム評価は,社会参加の指標として社会関連性指標と自記式作業遂行指標 (以下, SOPI))を,社会活動の満足度の指標として社会活動に関連する過ごし方満足度尺度を用いた.これらの効果指標はプログラムの初回と最終回に収集し,2群の差の検定を行った.プログラムのプロセス評価は第1,9,12回目のセッション時に記載してもらった自由記述についてSteps for Coding and Theorization(以下, SCAT)を用いて分析した.本研究は筆者所属大学の研究倫理審査の承認を受けている.
【結果】プログラムは2019年5月から開始し,7月に計画通り終了した.対象者は平均年齢73.1±4.9歳の男性高齢者20名となった.要介護度は19名が非該当,1名が要介護1だった.参加率は90.8%で1名あたり10.9回,途中辞退者は0人だった.社会関連性指標の合計点は有意に向上し( p = .011),大きな効果量( r = .57)を認めた.その下位項目では生活の主体性( p = .038, r = .46)と社会への関心( p = .046, r = .45)が有意に向上し,中程度の効果量を認めた.社会活動に関連する過ごし方満足度尺度とSOPIに有意差はなかった.SCATのストーリーラインは,「生き生きしている参加者の秘訣の学習や,活発な参加態度の模倣をするようになった.社会参加感度の向上により地域資源に関する情報に敏感になることで他の活動への参加に繋がり,参加による参加発展を介し多方面のコミュニティとの積極的な関わりを持つようになった.プログラム全体を通して,対象者は地域資源の情報取得し,社会活動のヒント取得し,社会活動の課題解決へ前進した」となった.
【考察】アウトカム評価により,本プログラムは生活の主体性と社会への関心を有意に高めたが,社会活動の満足度は高めなかった.プロセス評価により,本プログラムは対象者に社会活動への取り組みを強化する経験を提供したと考えられる.社会活動を経験することに留まらず,対象者個人の到達目標を設定し,日常生活への般化をより一層促すことが社会活動の満足度を高めることに繋がると思われる.
【目的】 本研究の目的は,社会活動への参加を促すプログラムが与える社会参加への効果を予備的に検証することである.
【対象】対象者は自治体と地域包括支援センターと協力して募集した.65歳以上の男性高齢者とした.包含基準は会場まで来ることができる者とし,除外基準は病院・施設に入院・入所している者,意思疎通が困難な者とした.
【方法】研究のデザインは混合研究法の収斂型デザインを用いた非盲検化,群内前後比較試験とした.週1回100分,全12回のセッションで構成した.プログラムの前半は対象者自身の生活と社会活動の状況を分析してもらった.次に,対象者の地域における社会活動に関する資源を学び,体験したい社会活動を選択してもらった.プログラムの後半は実際に社会活動を体験することを通して自らを変化させる経験を積み,プログラム終了後も社会活動を変化・従事できるよう計画をたてた.折に触れて対象者同士で意見交換を行い動機づけの強化を図った.プログラムのアウトカム評価は,社会参加の指標として社会関連性指標と自記式作業遂行指標 (以下, SOPI))を,社会活動の満足度の指標として社会活動に関連する過ごし方満足度尺度を用いた.これらの効果指標はプログラムの初回と最終回に収集し,2群の差の検定を行った.プログラムのプロセス評価は第1,9,12回目のセッション時に記載してもらった自由記述についてSteps for Coding and Theorization(以下, SCAT)を用いて分析した.本研究は筆者所属大学の研究倫理審査の承認を受けている.
【結果】プログラムは2019年5月から開始し,7月に計画通り終了した.対象者は平均年齢73.1±4.9歳の男性高齢者20名となった.要介護度は19名が非該当,1名が要介護1だった.参加率は90.8%で1名あたり10.9回,途中辞退者は0人だった.社会関連性指標の合計点は有意に向上し( p = .011),大きな効果量( r = .57)を認めた.その下位項目では生活の主体性( p = .038, r = .46)と社会への関心( p = .046, r = .45)が有意に向上し,中程度の効果量を認めた.社会活動に関連する過ごし方満足度尺度とSOPIに有意差はなかった.SCATのストーリーラインは,「生き生きしている参加者の秘訣の学習や,活発な参加態度の模倣をするようになった.社会参加感度の向上により地域資源に関する情報に敏感になることで他の活動への参加に繋がり,参加による参加発展を介し多方面のコミュニティとの積極的な関わりを持つようになった.プログラム全体を通して,対象者は地域資源の情報取得し,社会活動のヒント取得し,社会活動の課題解決へ前進した」となった.
【考察】アウトカム評価により,本プログラムは生活の主体性と社会への関心を有意に高めたが,社会活動の満足度は高めなかった.プロセス評価により,本プログラムは対象者に社会活動への取り組みを強化する経験を提供したと考えられる.社会活動を経験することに留まらず,対象者個人の到達目標を設定し,日常生活への般化をより一層促すことが社会活動の満足度を高めることに繋がると思われる.