[OA-1-1] 急性期脳卒中患者に対して,ADOC-Hによる目標設定を併用した上肢機能訓練の効果
目的:入院中の急性期脳卒中患者に対し,Aid for Decision-making in Occupation Choice for Hand(ADOC-H)による目標設定とmonitoringおよび,problem-solvingを組み合わせた介入を導入することで,麻痺側上肢の日常生活における使用や運動機能への効果を検証した.また,認知機能低下や失語症を有する患者への効果も検証した.
方法:2021年2月から2022年2月に当院に入院し脳卒中と診断された患者の内,ADOC-Hを用いて介入を実施した28名を介入群,2018年10月から2019年10月にADOC-H未使用の脳卒中患者155名を対照群とした,Propensity score matchingによる比較試験を行った.また,介入群の中でMMSE 24点未満の認知機能低下を認める患者またはSIAS言語機能が2点未満の失語症を有する患者13名についても,同様に比較試験を行った.認知機能低下や失語症を有する患者も評価が行えるように,麻痺側上肢の生活場面での使用量評価にはparalytic arm participation measure(PPM)を使用し,食事とトイレ動作項目,及びその合計(total)の得点を用いた.上肢運動機能の評価にはSIASの膝・口テスト(K-M)と手指テスト(F-F)及びその合計(Upper limb motor function)を用いた.介入群には,従来の上肢機能訓練とADL訓練に加えて,Transfer Packageを参考にし,monitoring, problem-solving, behavioral contractingの一部を当施設でも実施可能な方法に改変し導入した.具体的には,behavioral contractingではADOC-Hによる上肢使用の目標設定を行い,決定された項目を紙面に印刷し,患者が常時確認できるよう設置した.Monitoringでは認知機能低下や失語症の患者にも適用するため口頭での実施を主とし,必要に応じて実際に使用する道具を操作することで想起を促す工夫を行った.麻痺側上肢の使用量及び上肢運動機能について,入院時と退院時のスコア,及びその変化量の2群間比較をMann–Whitney U testを用いて行った.報告に際し,本人または代諾者の書面での同意,当院倫理審査委員会の承認を得ている.
結果: Propensity score matchingにより21名が抽出された.介入群と対照群における変化量の比較では,PPM total(P=0.005,r=0.43),食事(P=0.035,r=0.32),トイレ動作(P=0.004,r=0.44) ,Upper limb motor function (P=0.001,r=0.52),K-M(P=0.014,r=0.38),F-F(P=0.002,r=0.48)であり,全項目において介入群で有意な改善を認めた.認知機能低下または失語症を有する対象はPropensity score matchingにより12名が抽出された.変化量の比較では,PPM total(P=0.011,r=0.51),食事(P=0.08,r=0.35),トイレ動作(P=0.005,r=0.57),Upper limb motor function (P<0.001,r=0.74),K-M(P=0.001,r=0.69),F-F(P=0.003,r=0.61)であり,PPM食事を除く項目で,介入群で有意な改善を認めた.
考察:ADOC-Hと改変したTransfer Packageによる介入は急性期脳卒中患者の日常生活における上肢の使用を改善させる可能性が示唆された.また,認知機能低下や失語症などの言語理解が困難な患者においても麻痺側上肢使用量の有意な増加を認めており,ADOC-Hを用いてイラストから具体的な目標を設定する事で患者が目標設定に主体的に関わる事ができたためと考える.また,麻痺側上肢の機能回復には生活場面での上肢の使用が重要とされており,麻痺側上肢の生活場面での使用量が増加した事で,上肢機能の回復に波及する可能性も考えられる.
方法:2021年2月から2022年2月に当院に入院し脳卒中と診断された患者の内,ADOC-Hを用いて介入を実施した28名を介入群,2018年10月から2019年10月にADOC-H未使用の脳卒中患者155名を対照群とした,Propensity score matchingによる比較試験を行った.また,介入群の中でMMSE 24点未満の認知機能低下を認める患者またはSIAS言語機能が2点未満の失語症を有する患者13名についても,同様に比較試験を行った.認知機能低下や失語症を有する患者も評価が行えるように,麻痺側上肢の生活場面での使用量評価にはparalytic arm participation measure(PPM)を使用し,食事とトイレ動作項目,及びその合計(total)の得点を用いた.上肢運動機能の評価にはSIASの膝・口テスト(K-M)と手指テスト(F-F)及びその合計(Upper limb motor function)を用いた.介入群には,従来の上肢機能訓練とADL訓練に加えて,Transfer Packageを参考にし,monitoring, problem-solving, behavioral contractingの一部を当施設でも実施可能な方法に改変し導入した.具体的には,behavioral contractingではADOC-Hによる上肢使用の目標設定を行い,決定された項目を紙面に印刷し,患者が常時確認できるよう設置した.Monitoringでは認知機能低下や失語症の患者にも適用するため口頭での実施を主とし,必要に応じて実際に使用する道具を操作することで想起を促す工夫を行った.麻痺側上肢の使用量及び上肢運動機能について,入院時と退院時のスコア,及びその変化量の2群間比較をMann–Whitney U testを用いて行った.報告に際し,本人または代諾者の書面での同意,当院倫理審査委員会の承認を得ている.
結果: Propensity score matchingにより21名が抽出された.介入群と対照群における変化量の比較では,PPM total(P=0.005,r=0.43),食事(P=0.035,r=0.32),トイレ動作(P=0.004,r=0.44) ,Upper limb motor function (P=0.001,r=0.52),K-M(P=0.014,r=0.38),F-F(P=0.002,r=0.48)であり,全項目において介入群で有意な改善を認めた.認知機能低下または失語症を有する対象はPropensity score matchingにより12名が抽出された.変化量の比較では,PPM total(P=0.011,r=0.51),食事(P=0.08,r=0.35),トイレ動作(P=0.005,r=0.57),Upper limb motor function (P<0.001,r=0.74),K-M(P=0.001,r=0.69),F-F(P=0.003,r=0.61)であり,PPM食事を除く項目で,介入群で有意な改善を認めた.
考察:ADOC-Hと改変したTransfer Packageによる介入は急性期脳卒中患者の日常生活における上肢の使用を改善させる可能性が示唆された.また,認知機能低下や失語症などの言語理解が困難な患者においても麻痺側上肢使用量の有意な増加を認めており,ADOC-Hを用いてイラストから具体的な目標を設定する事で患者が目標設定に主体的に関わる事ができたためと考える.また,麻痺側上肢の機能回復には生活場面での上肢の使用が重要とされており,麻痺側上肢の生活場面での使用量が増加した事で,上肢機能の回復に波及する可能性も考えられる.